野村総合研究所(NRI)は12月6日、今年4月から9月にかけて、量子コンピューティング技術を活用して、同社が運用する東京第一データセンターの設備運転計画をり最適化するための実証実験を実施したと発表した。

同実証実験は量子コンピュータの応用研究を進めている東北大学の大関研究室と共同で進められている。

実証実験では、ビジネス上の課題を数式化する数理計画的なアプローチによって、データセンターの熱源設備において電力消費量に影響を与えるデータを分析し、数理モデルを構築した。次に、作成した数理モデルを用いて、アニーリング方式の量子コンピュータであるD-Wave Advantage3で、電力消費量が最小となる熱源設備の運転計画を算出した。

データセンターで稼働する機器は年々増加していることから、この演算においては今後データセンターで必要となる冷却熱量が現在よりも30%増加した場合を前提条件としている。

演算結果に基づく運転計画に従って熱源設備を運用した場合、外気温が20度前後となる春秋の季節に限ると、電力消費量が最大で約10%削減できることを机上にて試算したという。加えて、実証実験を通じて、専門性の高い量子コンピューティング技術をビジネス上の具体的な課題に対して適用する際の要点を整理した。

  • 算出した熱源設備内における冷凍機の運転計画イメージ

同実証実験で最適化に用いた数理モデルは、NRIのデータセンターに特化したものではなく、一般的な建築物の熱源設備に対しても汎用的に適用できるという。そのため、NRIは脱炭素化や電力価格高騰を背景としたさまざまな熱源設備運転計画の最適化の取り組みについて、支援が可能としている。