【データに見る「ECの地殻変動」】<第9回>スマホ経由のECが伸びている本当の理由

経産省の電子商取引市場調査によれば2021年のスマホ経由の物販系BtoC‐EC市場規模は6兆9421億円。市場規模全体に占めるスマホ率は52.2%と過半数を突破している。

ちなみに2015年は1兆9862億円でスマホ率は27.4%。つまり直近6年間で約5兆円の増加だ。2015年から2021年の市場規模全体の増加額は約6兆円なので、伸びた分の大半はスマホ経由という計算になる。この数字を見るとスマホの存在感がEC市場でも極めて大きいことが理解できる。

総務省の通信利用動向調査によると2015年のスマホの個人保有率は53.1%だったが、2021年は74.3%と大きく増加した。

年代別に見ると20代は92.9%から93.5%と2015年時点から高止まりしている。一方、50代は56.9%から88.9%、60~64歳は36.6%から84.8%と高齢者層の増加が著しい。

ネット利用機器に関する統計を見るとスマホによるネット利用率がPCを圧倒していることが分かる。年代別でもそれほど大差はない。必然的にECもスマホからという個人は多いだろう。

このような状況もありECサイトのレスポンシブデザインはもはや必須である。PC、スマホ、タブレットなど等利用機器の違いを問わず画面を最適化するレスポンシブデザインは、ECに限らず企業サイトなどでも広く対応されている。今の時代レスポンシブ化されていない企業サイトは評価を落としかねない。

レスポンシブとはいえ、明らかにスマホやタブレットを意識したデザインに仕立てられている例も時折、目にする。事業者側によるスマホ対応の意識は相当高いようだ。

<スマホが衝動買い促進>

ところで前述の通りスマホ経由のEC市場規模は7兆円に迫っておりスマホ率も年々上昇しているが、これはスマホの保有率やスマホでのネット利用率の上昇によるものと見て間違いはないだろう。

だが、理由はそれだけだろうか?

スマホでECを行う行為はいわば行動変容。説明可能な「何かしらの消費行動の変化が起きているのでは」とここ数年、筆者は漠然と思っていたところに、Googleが2019年頃から提唱する「パルス型消費行動」というモデルにたどり着いた。

消費行動モデルにはEBMモデルなど学術研究からAIDMAまで幅広い。中身は異なるがそれらは購買に至るヒトの思考が順番に進み行く点が共通している。一方、パルス型消費行動とはあらゆる情報に接する中で思いがけずある、モノの情報を得ることで生じる突発的な購買行動を指す(詳しくは検索いただきたい)。

衝動買いに似ているがGoogleは、衝動買いは非日常的な趣味嗜好(しこう)品の購入に多いが、パルス型消費行動は日常的な商品でも多く見られると説明している。

要するにさまざまな情報に触れる過程で、想定外の買い物が日常茶飯事に起きているということだ。スマホの普及とSNS利用の進行がもたらした消費行動の変化といえるだろう。

楽天のスマホおよびタブレット経由の流通総額比率はすでに8割超。よってEC市場全体のスマホ率には伸び代があると見る。

スマホの普及とSNS利用は不可逆的と考えられるためさらに行動変容が進行するのではないだろうか。結果的にEC市場の活性化につながるのであればパルス型消費行動は大いに歓迎したい。