改めましてこんにちは! 科学コミュニケーターの片岡です。

前編に引き続き、未来館の展示フロアに突如あらわれた変形菌をご紹介します。後編では、出現した変形菌が胞子をつくる「子実体」という形態に変化したため、実際に胞子があるのか顕微鏡を使って観察してみました。

前編はこちら https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20221004post-475.html

子実体の中をのぞいてみた!

まず、落ち葉の上にのった変形菌を一部、いただいてきました。

落ち葉を持ち上げると、ぽろっと簡単に分かれました。

紙の箱に、落ち葉の上にのった子実体の一部を回収した様子

箱の中に散らばる、茶色い粉のようなもの、これも胞子なのでしょうか。

今の段階では、ただ土がくっついてきて散らばったようにしか見えませんね……

この茶色い粉を顕微鏡で観察するため、プレパラートをつくります。

顕微鏡でなにかをみるとき、対象を顕微鏡で観察できる状態に準備する必要があります。今回使う顕微鏡では、光を透かして対象をみるため、薄いガラスの板(スライドグラスとカバーガラス)で対象を挟んだ、プレパラートというものをつくります。

  1. ガラス棒を使って、少しだけ茶色い粉をとります
  2. 子実体の一部をつつくと、その先端にうっすら茶色い粉が付着したことが分かります
  3. スライドガラス(長方形のガラス板)にあらかじめ、スポイトで水を1滴たらしておき、その水滴にガラス棒の先端をのせます
  4. ガラス棒の先端に付着していた茶色い粉が水滴の中にす~っと移動し、スライドガラスの上に置くことができました
  5. その茶色い粉が浮いた水滴の上から、カバーガラス(さらに薄いガラスの板)をかぶせて、フタをします
  6. プレパラートの完成です!
ガラス棒で子実体をやさしくつつき、付着した胞子を水滴をたらしたスライドガラス
スライドガラスとカバーガラスで茶色い粉を挟んで、プレパラートの完成

では、早速観察してみましょう!

こちらが、今回使う顕微鏡です!

顕微鏡の登場

プレパラートを顕微鏡にセット!

作成したプレパラートを顕微鏡にセット

まずは、一番低い倍率40倍で観察してみました。

すると……

40倍で観察、茶色い砂のように見える

むむむ。

本当にただのの砂のようにしか見えませんね。

もう少し倍率を上げてみましょう。次は100倍!

100倍で観察、小さな丸いものが見えてきました

小さな丸いものが集まっている様子が見えます!

キレイな丸。砂とは違う様子です。

さらに倍率上げてみましょう!400倍!

400倍で観察、同じ大きさのキレイな丸がたくさん見えてきました

丸いものが大きく見えました。どれも同じ大きさの丸で、無機的な砂とは異なる様子です。

これが胞子のようです。

少し茶色みがかっているようですね。これがたくさん集まって、濃い茶色の土っぽく見えていたのかもしれません。生きていくのに適した条件(気温や湿度)になると、これらの胞子から次の新しい生命が生まれてきます。

ちなみに、2022年10月上旬現在のビジョナリーラボにいる変形菌はこのようなお姿に。

胞子を飛ばして風化している変形菌の子実体

枯れ葉や枯れ木に紛れて、もはやどこにいるのかわかりませんね……

子実体をつくった変形菌は、あとは胞子を飛ばすことがお仕事です。姿はどんどん小さく、そしてボロボロになっていきますが、次の世代を残しています。

小さな生物の世界のススメ

展示「セカイは微生物に満ちている」に突如あらわれた生物、変形菌。しかし、かれらは突然生まれたわけではなく、私たちの目では見ることが難しいくらい小さい姿ではじめから存在していました。そんな小さな生物は、変形菌だけでなく他にもたくさん数えられないくらい私たちのまわりにいます。姿が見えない生物に対して、少し怖さを感じることもあるかもしれません。ですが、どんな見た目だろう、どうやって移動するのかな、変形菌みたいに大きくなって肉眼でも見えるようになるのかな、などなど興味をもって向き合うと、自分の周りが不思議であふれているようで、わくわくしませんか?

ぜひ、身近な小さな生物の多様性に目を向けてみてください!



Author
執筆: 片岡 万柚子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
大学で初めて土を基盤とした生態系のすごさを知り、どっぷり土壌動物の世界にハマりました。研究室では、土の中の生き物たちがどんな関わり合いをもって暮らしているのかを調べていました。「こんな身近に全く知らない世界が広がっていたのか!」という当時の感動を、多くの人々にも伝えたいと思い、未来館へ。みなさんと新発見のワクワクを共有したいと思っています!