こんにちは! 科学コミュニケーターの片岡です。

「#Miraikanで考える生物多様性」企画第6弾は、片岡のオススメ展示とそこで見つかった生き物についてご紹介します! 推しムシだったり、オススメ展示だったり、片岡の好きなものばかり紹介していますね。どうぞ、最後までお付き合いください。

(ちなみに、推しムシブログはこちらです。https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20220603post-466.html)

未来館には、「ビジョナリーラボ」という展示があります。この展示は、おおよそ1年ごとに新しいテーマの展示に入れ替わります。その第3回目の展示「セカイは微生物に満ちている」が2022年4月からオープンしています!

目に見えないほど小さな生物は私たちの生活空間だけでなく、私たちの身体の表面や腸などの内部にも豊富に多様に存在しています。日常の中で、このような微生物に意識を向けることは少ないかもしれません。ですが、私たちはこれまでも、そしてこれからも微生物に良くも悪くも影響を与えたり、与えられたりしながら、一緒に暮らしています。そんな微生物と共生する世界を考えることができる展示です。

この展示では、私たちが微生物を意識しながら生活する未来の暮らしを想像することができます。展示内には、台所、リビング、書斎、さらに庭があり、それぞれの場所で微生物と共生するしくみが紹介されています。

そして、庭! なんといっても庭! なんと生きた草木が植えられているんです!

この草木にくっついて運ばれてきた色々な種類の小さな生物たちが、ときおり私たちの前に姿をあらわします。

ビジョナリーラボ 第3期「セカイは微生物に満ちている」

突然あらわれた「なにか」

それは突然現れたのです。

2022年5月某日のお昼ごろ、展示フロアで見つけました。展示の庭ゾーンにて、レモンイエロー色をした、ドロッとした半分液体のようなものが土の上、約30cm四方の大きさに広がっていたのです!

黄色い「なにか」

さらに、3時間ほどあとに、再び様子を見に行くと……

なんと、かたちが変わっていました!

活発に動く生物のようです。近くで見ると卵焼きやカリフラワーのようで、触るととっても柔らかく、ゼリーのようです。

動いた形跡のある黄色い生物と表面の画像

さらに、変化はとまりません。

次の日にはこんな色、かたちになっていました!

なんだか、紙粘土をこねていた途中で固まってしまったよう。見た目は全く違いますが、それがいる場所から同じ生き物であると考えられます。

近くで見てみると、表面は乾燥していて、色は鮮やかなレモンイエローから白色に近いほどあせた黄色。その黄色の下には、黒色に近い濃い茶色があるようで、ところどころ表面に茶色いカサカサしたものが見られました。

翌日、色が白っぽくなった元黄色い生き物。これまでのゼリーのような質感とは異なり、乾燥しているように見えます

昨日は、潤いたっぷりだったのに、こんなに乾いて……

このあとはいくら時間をおいても、前の日のように動くことはありませんでした。

死んでしまったのでしょうか?

きみの名は……「変形菌」

実は、これは「変形菌(へんけいきん)」という生物です。「粘菌(ねんきん)」とも呼ばれています。

ねばねばとした粘り気のある生き物だったので、「粘菌」という名前はしっくりくると思います。では「変形菌」とも呼ばれているのはどういうことでしょうか。

この生物は生まれてから次の世代を残すまでの間に、何回も身体の形状が変わるんです。順番に見てみましょう。

  1. 胞子からアメーバ状の細胞が生まれます。胞子の大きさは5~15μm。mは1mmの1000分の1の大きさなので、この胞子やアメーバ状細胞は肉眼では見えないほど小さいです!
  2. ①の細胞は、単細胞で1つの核をもっています。分裂してどんどん仲間を増やします
  3. バクテリアなどをエサにして成長した細胞は、別の細胞と融合(=接合)します
  4. これまで1つの細胞に1つの核しか持っていなかった細胞は、接合すると1つの細胞に対して核だけを分裂させてどんどん核を増やしていきます
  5. そして成長したものが「変形体」と呼ばれます
  6. 変形体はバクテリアや菌類を食べてさらに成長します。はじめ肉眼では見えないほど小さな大きさですが、どんどん成長して大きいもので1mほどになることがあります!
  7. 十分栄養を得た変形体は、また次の世代を残すために胞子をつくります。この胞子をつくった状態を「子実体(しじつたい)」と呼びます。かたちや色が種類によって様々です
変形菌の生活環(作成 by 片岡)

そして、子実体から胞子が散布されて、再び①からサイクルを繰り返します。

このように、胞子から生まれて、胞子をつくるまでの間に、身体の形が変わる生物ということで「変形菌」と呼ばれています。ちなみに、変形菌は「菌」と名前にありますが、菌類の仲間ではありません。

変形菌はアメーバの仲間といわれています。生き物を分類する方法はいくつかありますが、「5界説」という生き物を大きく5つのグループにわける法則に従うと、変形菌は「原生生物」というグループに分けられる生き物になります。……ややこしいですね(笑)。

ということで、はじめに展示場にあらわれたのは変形菌の変形体の状態。そして、翌日には胞子をつくる子実体になっていたのです。

死んでしまったわけではなかったみたいです。よかった~(ほっ)。

とっても不思議な変形菌。せっかく子実体が残っているので、次は変形菌の子実体を顕微鏡で観察してみました!

後編に続きます!

https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20221005post-476.html



Author
執筆: 片岡 万柚子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
大学で初めて土を基盤とした生態系のすごさを知り、どっぷり土壌動物の世界にハマりました。研究室では、土の中の生き物たちがどんな関わり合いをもって暮らしているのかを調べていました。「こんな身近に全く知らない世界が広がっていたのか!」という当時の感動を、多くの人々にも伝えたいと思い、未来館へ。みなさんと新発見のワクワクを共有したいと思っています!