【生鮮品EC<第2回>】「ミールキットの最新トレンド」消費者の時間の奪い合いに 時短、食品ロス、ピックアップが軸に

生鮮品ECでは、ミールキット市場が活況だ。コロナ禍前から、共働き世帯を中心に家事をはじめとする調理時間を短くしようと、食品宅配、食品スーパー、生協、EC事業者が展開。今年に入り、外資系企業や大手外食卸の参入も増えた。フードロスの観点から消費者は注目を集めている。賞味期限を延ばすことを目的に、冷凍のミールキットの販売も増えている。

ミールキットEC市場で先行するのが「Oisix」だ。時短に加え、フードロス削減に貢献できる要素を前面に、今年7月から神奈川県海老名市に「Kit製造工場」を本格稼働させた。

外資系や異業種から「ミールキット」市場への新規参入も目立つ。4月には、ドイツ発のミールキットブランド「HelloFresh」が国内でサービスを開始。業務用青果物流の最大手、デリカフーズホールディングスグループの楽彩も4月、ピックアップ型のECサービスを開始した。駅ナカのコンビニでピックアップできるほか、フィットネスクラブ、キャンプ場などでも受け取れる。

食品EC業界でもクイックコマースや出前などが台頭しており、企業間で消費者の時間を奪い合う形となっている。ミールキットは、ここ数年でバズワード化しており、販売だけでは支持されない。差別化された素材やサービス品質、受け取り方法、サブスクリプションの柔軟性など、より継続的に利用してもらうための戦略で明暗で分かれてきそうだ。

<【Oisix】食品ロス削減、時短を追求 栗原はるみ氏が監修キット発売>

オイシックス・ラ・大地の食品EC「Oisix」が販売するミールキット「Kit Oisix」の会員数が23万人、シリーズ累計で出荷数が1億食に達している。より付加価値を高めるために時短を追及したり、アップサイクルした商品を開発したりするなどフードロスの訴求を打ち出している。

火加減や味加減、下ごしらえなど複雑な調理工程がなく10分以内にメインメニューの調理が完了する時短を極めた「超ラクKit Oisix」シリーズを8月に投入。猛暑の中でキッチンで調理する際の負担を減らし、家庭内での料理をする人を増やすことを目的とした。

フードロス削減では日本酒造りで生まれる酒米粉を使った白玉入りの「切るだけ簡単!北海道小豆とさつま芋の白玉」や、廃棄されるニンジンの皮をアップサイクルしたドレッシングを使用した「おかひじきと豚のアジアンサラダ仕立て」の販売を始めた。

▲料理家の栗原はるみ氏が監修するミールキットを開始

9月15日には、料理家の栗原はるみ氏が監修するミールキットが定期的に届く新サービス「栗原はるみの毎日を楽しむ小さなごちそうコース」を開始。レシピには、栗原はるみ氏のコラムを掲載し、自らレシピを記録するバインダーを監修し、レシピがバラバラにならずに保存できるようにした。

<【楽彩】ピックアップ店が100カ所に 全国ECを8月に開始>

業務用青果物流通の最大手、デリカフーズホールディングス傘下の楽彩は、今年4月に始めたピックアップ型のミールキットのEC「楽彩」が拡大している。ミールキットの受け取り店舗が100店になったほか、8月から全国向けのECを開始。今後は受け取り店舗を1000店、会員数10万人、売上高50億円を目指す。

ミールキットが受け取れる店舗は9月1日現在で、駅のコンビニ「NewDays」が87店舗、スポーツクラブの「ティップネス」が6店舗、食品スーパー「ライフ」が4店舗、全国でキャンプ場を展開する「RECAMP」が20カ所などに拡大した。

▲8月から全国向けのECを開始

8月30日に「NewDays」との業務提携により22店舗増え、受け取り場所が合計100店舗となった。

8月1日には専用アプリを開始したほか、宅配便で自宅まで届ける全国配送を開始。さらに、秋のキャンプ需要に合わせて「キャンプ場検索・予約サイトなっぷ」の掲載施設などで20カ所の提携店舗を増やすほか、関東・関西に展開する11施設で、「楽彩」のキャンプ飯3セットから好きなものを選択できる「キャンプ飯キット付きプラン」を導入した。

・北千住マルイに冷蔵ロッカー

楽彩では、ポップアップストアを活用して認知を高めている。北千住マルイの中に5月と8月、ポップアップストア出店して認知を高めている。

▲5月と8月に出店したポップアップストア外観

9月中旬には東京・北千住のマルイに「楽彩冷蔵ロッカー」を設置してロッカーでの受け取りも始める。10月中旬からは3回目となる期間限定のポップアップストアも設置する。提携企業を拡大するほか、卵や牛乳などピックアップできる商品を広げていく。登録会員数の拡大キャンペーンも予定している。

▲北千住マルイに設置を予定する「楽彩冷蔵ロッカー」

<【PAKUMOGU】発売から7カ月で15万食に 初年度売上は50億円を計画>

ワタミは、ミールキットの販売を強化している。今年2月に販売を開始した「PAKUMOGU(パクモグ)」は約7カ月で累計販売数15万食を達成。ミールキット全体で初年度は、売り上げ50億円、1日3万食の販売を目指す。

「パクモグ」のコンセプトは子どもの完食。対象は3歳から10歳の子どもがいる家庭だ。モニターの子どもの8割以上が認めるメニューを届ける。時短や調理の負担を軽減しながら、食べてもらえるメニューにこだわる。

▲「PAKUMOGU(パクモグ)」は15万食販売

8月1日には、全メニュー、主菜と副菜の2品が15分以内で完成できる大人向けのミールキット「あっ!とごはん」も開始した。

▲15分で完成するミールキット「あっ!とごはん」

ミールキットはECサイトから注文が可能で、全国に展開する525拠点の営業所から、約8000人の「まごころスタッフ」が届けている。

【一問一答】ワタミ 宅食ダイレクト キット事業本部 森園啓司本部長「ミールキットは宅食事業の第2の柱」

――ミールキットの販売が順調のようだ。

宅食事業における第2の柱として社内的に力を注いでいる。「パクモグ」の利用者は30代までが9割を占めており、ウェブ経由の新規入会が中心だ。ウェブで注文して、まごころスタッフが届けるという流れだ。週1回分から注文できるため、お客さまが柔軟に利用できる点が強みだ。

利用者からまごころスタッフを通じてダイレクトで意見を聞くことができるため、サービスや品質の改善にもつなげており、ECとの差別化を図ることができている。

――「あっ!とごはん」を投入した理由は?

「パクモグ」を販売してから、子どもを対象に認知が広がった。一方で、「あっ!とごはん」は、子ども以外の大人でも利用できるように味付けし、15分という時短を追求した。

当社としては先行する他社のミールキットサービスには足元にも届いていないため、よりミールキットの魅力を多くの人に知ってもらうことに力を注ぎたい。使いたいときに使うことができる注文の柔軟性を追求しつつ、継続的な利用につなげていきたい。