【データに見る「ECの地殻変動」】<第7回>食品はEC市場規模拡大の起爆剤

経産省によると2021年の国内EC市場規模は13兆2865億円。EC化率は8.78%。カテゴリー別で最も市場規模が大きいのは食品(飲料・酒類含)で2兆5199億円。にもかかわらず食品のEC化率は3.77%とカテゴリー別で最も低い。

その理由はEC化率算出の分母である食品の市場規模が巨大なためである。よって食品ECの伸び代は大きくEC市場規模全体の拡大に寄与するとの声を耳にする。EC化率の数値に基づく感覚的な予想だが筆者はひそかに期待を寄せている。

食品は生鮮品とそれ以外に大別できる。生鮮品以外は保存がきくものが多く、商品にもよるが事業者側からみて比較的ECで販売しやすそうに思える。

生鮮品については近隣のスーパーでの日々の買い物や、郊外の大型GMS店舗でのまとめ買いなどのリアルチャネルが今も主流だろうが、最近はネットスーパーの売り上げが伸びているようだ。事業者にとって収益性の課題はありそうだが、コロナ禍にあって消費者側の需要は不可逆的に増えると予測する。

<行動変容は困難?>

ところが筆者の調べではネットスーパーでも結局のところコメ、飲料水、酒類、冷凍食品が売れ筋らしい。これが真実なら保存性はもちろんのこと、重い物や持ち帰りが面倒な物が好まれる傾向にあるといえる。

ネットスーパーだけしか利用しない消費者は恐らく少なく、リアルチャネルと併用している消費者が大半だろう。つまり消費者にとって食品購入をECに依存する理由は今のところまだ限定的と見る。

食品を問わずリアルチャネルからECに購入方法を切り替える消費者の選択は、いわば行動変容である。行動変容は経済合理性、利便性、安全性などによって起こり得るが、一度染みついた行動はそう簡単に変化しない。

一汁三菜が基本といわれる根源は、「もともと日本は新鮮かつ安心安全な食材に恵まれているから」と筆者は考えており、ネットなき時代から食材は近所の市場やスーパーで買うものという感覚が日本人のDNAに刻まれている気がする。だとすれば食品をECで購入する行動変容は、他のカテゴリーよりもハードルが高く時間を要するかもしれない。

だが、行動変容は社会的変革や生活スタイルの変化も寄与する。共働き世帯や高齢者世帯の増加によりミールキットの需要はもっと高まるだろう。ヴィーガン、グルテンフリーといった食スタイルの変化も見られる。このような変化にECはうって付けだ。さらに経営努力やコロナのような外的要因が手伝えば、行動変容が進むのではないか。そう考えれば感覚的ではなく、実際に食品のEC化率に伸び代は存在すると見るのが自然に思う。

<他ジャンルへの波及も>

食品のEC化率が倍増すると仮定しよう。大胆な仮説だが、行動変容のハードルが高い食品でEC化が進むことで、もともとEC化の行動変容が、食品よりも進んでいるアパレルや化粧品、日用品などへ波及効果をもたらすのではないだろうか。

つまり「商品はECで買うもの」との全体的なムーブメントの起爆剤に食品がなるイメージである。食品購入のEC化の行動変容が起点となって、EC市場に地殻変動が起きることを期待したい。