日銀「さくらレポート」で個人消費は上方修正だが・・・みずほ証券・上野泰也氏の懸念

日銀は7月11日、最新の地域経済報告(さくらレポート)を発表した。地方にある日銀の支店から寄せられる経済情報を本店で取りまとめているもので、公表は四半期ごと。金融市場の注目が集まりやすいのは「各地域の景気の総括判断」で、前回と比べた修正方向を示す矢印の向きをチェックする。今回は、「関東甲信越」「東海」が横ばいになったものの、残る7地域でベクトルは上向きになった。たとえば「九州・沖縄」は、4月は「持ち直しのペースが鈍化している」だったが、7月は「緩やかに持ち直している」になった。

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 筆者の目を引いたのは、需要項目ごとの各地域の判断で、個人消費が全ての地域で上方修正されたことである。企業などから寄せられた声には、サービス消費で「行動制限解除や観光振興策の効果で幅広い年齢層の旅行意欲が回復」(神戸支店・宿泊業)、財消費で「全国的に行動制限が解除され、外出意欲が高まるもとで、来店客数は増加傾向にあり、衣料品や靴などの売上が回復している」(新潟支店・小売業)といったものがあった。

 これより前、朝日新聞が6月19日に公表した社長100人アンケートでは、今後3カ月で個人消費がどうなるかをたずねたところ、「緩やかに回復する」が64%で最も多くなった。

 ほかに多かったのは「一進一退が続く」の27%。悪化を見込んだのは3%だけだった。

 だが、そうした個人消費に関する見方は楽観論にやや傾斜し過ぎではないかというのが、筆者の見方である。

 政府は3月21日の期限で「まん延防止等重点措置」を全面解除した。これによりサービス分野を中心に、個人消費はある程度回復することになった。新型コロナウイルスとのつき合い方で「ウィズコロナ」の方針を採っている日本では、新型コロナ感染拡大の「第7波」が襲来しても、行動規制を再導入して経済を圧迫することに政府は慎重である。

 とはいえ、猛暑でも屋外でマスクをし続けている街の人々の様子を見れば、流行の中心であるオミクロン株の派生型がたとえ重症化リスクが低いものだとしても、新型コロナへの警戒心を人々が抱き続けていることは明らかだろう。高齢者などで消費行動が慎重化する可能性がある。

 また、それ以上に危惧されるのは、このところの物価高による人々の消費行動への悪影響である。飲食料品や外食を中心に「値上げラッシュ」が途切れずに続き、せっかく高めになった春闘賃上げ率の消費刺激効果を打ち消している。さらに、今後の暮らし向きの悪化を警戒して消費マインドは悪化。6月の消費者態度指数は3カ月ぶりに低下した。

 将来への根強い不安感などから力強さがもともと欠けている日本の個人消費に、物価高によるボディーブローのような打撃が加わり続けている。個人消費の行方を安易に楽観視すべきではないだろう。