ハウステンボスの売却を検討へ 【HIS】の財務健全化が課題に

「それだけ台所事情が厳しいのではないか」─。ある旅行会社幹部はこう指摘する。エイチ・アイ・エス(HIS)が長崎県佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス(HTB)」を売却する方向で調整に入った。

回復する需要獲得への備え 【ANA】などの羽田国内線が正常化

 HISは「HTBの企業価値及び株式価値を向上させるべく、株式の譲渡を含め様々な検討を行っている」とコメント。

 コロナ禍の逆風が海外旅行を主軸とするHISを直撃している。コロナ禍前の2019年10月期の同社の海外旅行取扱高は4019億円と、旅行事業全体の6割近くを占めていたが、21年10月期には49億円へと激減した。

 さらに、HIS特有の事情として、電力小売り事業の苦境も追い打ちをかけた格好だ。福岡市にあった子会社のHTBエナジーが燃料価格上昇による電力の調達費の高騰で債務超過に陥った。HISは今年5月に同社を売却している。加えて、21年には「Go To トラベル」給付金の不正受給も発覚している。

 19 年10月期に約8085億円だったHISの連結売上高も21年10月期には1185億円まで減少。同期の最終損益も過去最大の約500億円の赤字となった。それに伴って同社の資金繰りも悪化。コロナ前の19年10月期に約17%だった自己資本比率も22年4月末には6%と財務改善は待ったなしだ。

 その中で持ち上がったHTBの売却。売却先には外資系ファンドなどが取り沙汰されている。HISは昨年6月、東京・西新宿から移転して僅か1年で移転先の「神谷町トラストタワー」の4階と5階を売却するなど、自助努力での資金確保に努めてきた。当時から会長の澤田秀雄氏はHTBを売却した場合には、「700億~800億円になる」と言及していた。

 HTBは1992年に開業したが、膨大な初期投資が経営を圧迫して2003年に会社更生法の適用を申請して経営破綻。10年にHISが買収して以降、澤田氏が現地に足を運び、「100万本のバラ」など旬のイベントを打ち出して来場者を集めた。その結果、一時はHIS全体の営業利益の約半分を占めるほどにまで成長。昨年末、澤田氏はHTBの上場にも言及していた。

 HTBには地元企業が出資しているほか、長崎県が推進する統合型リゾート施設(IR)の候補地にもなっている。自社の財務強化と同時に、地元の理解を得ることが欠かせない。