世界最大規模のオンライン・マーケットプレイス「eBay(イーベイ)」への出店を通じ、日本セラーの越境ECを支援するイーベイ・ジャパンは8月5日、2022年第2四半期(4~6月)の期間に、日本セラーから出品されたアイテムの販売動向をランキング形式で発表した。カテゴリーランキングは昨年比62%増と大きく伸長するなど、円安の影響で高額商品の売上が拡大した。売れ筋ランキングでは、ポケモンカード関連が8期連続の1位と人気の高さを示した。
イーベイ・ジャパンは、「eBay」における日本からの越境EC取引に関するデータを「越境ECランキング 2022年第2四半期」として公開した。カテゴリーランキングの「取引額TOP10」では、女性向けのブランド品(レディース アパレル&バッグ、ブランド小物)が前期に続き1位となった。円安の影響により、エルメス、シャネルなどの高級ブランドの取引が活発となっている。2位には、こちらも円安の影響による高額商品の取引が伸長した「時計・パーツ&アクセサリー」がランクインした。
前期の2位から3位にランキングを落とした「アニメ・キャラクターグッズ」は、ロシアのウクライナ侵攻に起因する原油価格の高騰より輸送費が増加したことで、低価格商品の販売数が減少した。一方で、高額なグッズやフィギュアの取引は増加しており、平均単価は伸長した。圏外から10位にランクインした「アクションフィギュア」もその影響が見られたとしている。
カテゴリ別「取引額TOP10」のうち、前年同期比で大きく成長した「成長率TOP3」では、「時計・パーツ&アクセサリー」が前年比62%増と大きく飛躍し、1位となった。年初から続く円安の影響による「ROLEX」や「OMEGA」など高級商品の好調に加え、「CASIO G-SHOCK」「SEIKO」など中価格帯の新品商品などの売上も伸びていることが要因となった。
【成長率TOP3】
2位には、取引額1位の女性向けのブランド品がランクイン。高級ブランドの好調により、成長率も2割増と高い水準で成長を続けている。3位は、昨年から高い成長を見せ、依然好調が続く「自動車パーツ」だった。近年の日本車ブームと、米国の自身で車を修理・装飾するDIY文化が上手くマッチして高い需要を生み出していると考えられるとしている。
売れ筋商品ランキングの1位は、5月からスタートしたポケモンカードとYouTuber「はじめしゃちょー」、アパレルショップのグラニフによるコラボレーション企画「P-Lab.」による限定ポケモンカード「いたずら好きのピチュー」だった。Tシャツやスニーカーなどコラボアイテムを購入した人のみにプレゼントされる限定カードで、日本でしか手に入らないというレア度が海外ファンから注目された。
【売れ筋商品ランキング】
2位にランクインした遊戯王カード「ブラック・マジシャン・ガール」は、昨年8月に発売された「Nintendo Switch」向けのゲーム「遊戯王ラッシュデュエル 最強バトルロイヤル!!」初回盤に同梱された購入者特典。5位にも同じく「遊戯王カード」の限定コラボカードだった。これらの日本国内のみで流通する限定アイテムは海外で非常に人気が高く、「eBay」にはこうしたレアアイテムを求めて多くのファンやコレクターが集まっている。
3位、4位には、ポータブルゲーム機の「ニンテンドー3DS LL」と「PlayStation Vita」がランクイン。中古ゲーム機も「eBay」では人気が高い商品となっている。
売れ筋ランキングでは、TOP5以外にも個性のある商品が登場したとし、その一部として、BTSのフォトカード、燕三条キッチン研究所のホットサンドメーカー、バンダイの「ガシャポンマシン+」をピックアップした。
【その他の注目商品】
世界的な人気を誇る韓国の男性グループ「BTS」のフォトカードは、6月にリリースしたアンソロジーアルバム「Proof」の公式ショップ購入特典。BTS関連の商品は「eBay」でも人気が高く、7月に活動休止を発表したこともあり今後さらに価値が高まりそうだとしている。
世界的にも有名な金属加工の街である新潟県「燕三条」ブランドの金物はeBayで人気が急上昇しており、ホットサンドメーカーは売れ筋となっているとした。こうした日本の職人芸を感じられる商品は海外で人気だが、訪日客の購入が見込めない中、越境ECを通じた海外への販路拡大を図る事例も増えており、地方発の「メイドインジャパン」製品の動向も目が離せないとの見解を示した。
バンダイの「ガシャポンマシン+」は、実物を1/2サイズで再現したクオリティの高いおもちゃ。日本が海外に誇る文化ともいえる「ガシャポン」の人気もあり、売れ行きを伸ばしている。
記録的な円安は、日本にとっては物価の高騰などマイナスな要素が多いが、円安をチャンスにするビジネスとして、越境ECがこの第2四半期では注目を集めた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外渡航が難しくなり、越境ECを利用して日本から商品を購入する海外バイヤーが増えたことに加え、円安で高額商品が買い求めやすくなったことで購入欲が向上し、実際にeBayでも腕時計やブランドバッグ、カメラなどが売り上げを伸ばしている。
こうした状況を受け、eBayに新規参入するセラーも個人・法人を問わず増加。参入カテゴリーの傾向としては、トレーディングカードやアニメグッズ、ゲームなどが入門として人気となっているとし、日本を代表するカルチャーで海外需要も高いうえ、比較的商材の入手や情報収集をしやすいことを理由に挙げた。また、高額商品の売上が伸びており、より大きなビジネス拡大につなげることができることから、カメラや時計も人気のカテゴリーとなっている。
【2022年第2四半期以降にeBayに参入した新規セラーに人気のカテゴリーと売れ筋商品】
イーベイ・ジャパンにおいても、新規セラーの参入障壁を低くし、ビジネス拡大をバックアップするため個人・法人を問わず販売サポート体制を強化している。すべての「eBay」セラーが無料で使用できる、日本語の販売サポートサイト「セラーポータル」のアップデートを行い、コンテンツやツールがさらに充実したほか、初心者向けの販売拡大ウェビナーやキャンペーンなども定期的に実施している。
また、政府も「Japanブランド」を海外に訴求する好機として越境ECを捉えており、参入を検討する企業へ経費の補助を行う事業も展開している。イーベイ・ジャパンが支援パートナーに選定された、中小企業庁による「JAPANブランド育成支援等事業」では、補助の対象となる中小企業者は最大500万円の補助金を受給できる。さらに海外販売のプロであるイーベイ・ジャパン公認コンサルタントの専門的なサポートを受けながら、「eBay」を利用しての越境ECに取り組むことができる施策となっている。円安は今後も中長期にわたって継続するとみられており、越境EC参入を検討される企業や個人がより始めやすく、効果的にビジネスが拡大できるようイーベイ・ジャパンでも引き続き支援を拡大する予定としている。
【2022年第2四半期越境ECトレンド振り返り】
●ファッションカテゴリー
イーベイ・ジャパン カテゴリーマネージメント部 カテゴリーマネージャー 北村直樹氏
ファッションカテゴリーは2021年第4四半期からの好調を維持しており、今期はさらに円安という追い風を受け高価格帯商材の売上が拡大しました。その中でも特に腕時計の飛躍は大きく全カテゴリーの伸び率で1位となりました。
日本からの腕時計の取引は高額商品だけでなく、CASIO G-SHOCKやSEIKOなど中価格帯の新品商品などの売上も好調となっています。
また、ハンドバッグカテゴリーでも円安の影響によりHERMES、CHANEL等の高価格帯商材の販売が好調で、高い伸び率を維持しています。その他スニーカーの売上が拡大しており、その効果でメンズファッションのカテゴリーも全体4位の伸び率となりました。
●トレーディングカード、アニメ・キャラクターグッズカテゴリー
イーベイ・ジャパン カテゴリーマネージメント部 カテゴリーマネージャー 市田良介氏
原油高増加に伴い、海外への運送料が上がったことで平均単価が低いコレクティブル商材の販売数はやや減少した半面、円安に伴いゲーム本体や高額なアンティーク商材、アートなど高額商材の平均単価が伸長しました。
アンティーク商材では100万円を超える鑑定書付きの日本刀が数本販売されており、フィギュアにおいても昨年より平均単価が上がり、高額なアイテムが多数販売され、堅調に推移しています。
トレーディングカードは、昨年の品薄状態から増産されたことでやや落ち着きを見せていますが、引き続き新発売ボックスは注目されており、ボックスに封入された人気キャラクターやプロモカードは引き続き伸長しています。また、7月には新たに人気アニメ「ONE PIECE」のトレカも発売され、すでに大きな盛り上げをみせています。
例年の年末商戦ではギフト需要が高まり、コレクティブルカテゴリーは大きく売上が上がる商材ですので、アニメグッズ、トレカ、フィギュア、ミニカー、プラモデルなどに期待しています。
また、コロナ禍の影響もあり、着実に販売者数も伸び続けています。ホビー系やアンティーク商材は日本を代表する文化のため、情報収集や商材入手をしやすい点があり今後も期待しています。イーベイ・ジャパンでもコレクティブル商材に特化して、売れ筋商品の紹介や高額で販売された商品、注目商品を毎月公開するなどの情報発信を行っています。
●その他のカテゴリー
イーベイ・ジャパン カテゴリーマネージメント部 カテゴリーマネージャー 古谷まゆみ氏
・オートパーツ(車関連)
日本から販売される自動車パーツは引き続き車体を日本車仕様にカスタマイズするためのJDMパーツが好調で、特に1990年代のHondaの「Civic」や「NSX」、Mazdaの「MX-5 Miata(ロードスター)」や「RX-7」、Nissanの「GT-R」や「Silvia」など日本を代表するクラシックスポーツカーのパーツが人気です。特に今期はモールディングやエンブレムなど以前から人気のパーツと並び、ホイールやタイヤ等の高単価商材の販売も目立ちました。
近年の爆発的なJDMブームと米国の自身で車を修理・装飾するDIY文化が上手くマッチして高い需要を生み出していると考えられます。
・カメラ
フィルムカメラ、レンズが引き続き上位に位置しており、特にフィルムカメラは前年同期比3.8%増の伸びを見せ好調です。
円安の影響を受けたことで「Leica」など比較的高単価なブランドの中古商材が売れやすくなっていたこと、及び円安を機に身近に入手出来る商品の1つとして中古カメラ商材の販売を始めた販売者が増加したことが好調要因となっています。人気商品を1つ取り上げると、一眼レフカメラを代表する「Canon AE-1」の販売数が急増しており、高度な機能に対して200ドル未満で購入出来るコストパフォーマンスの良さがECサイトとの親和性が高かったと考えられます。
その他ContaxやMamiya、Nikon等の日本の著名メーカーの商品が引き続き人気となっています。
●今後の予測
イーベイ・ジャパン カテゴリーマネージメント部 部長 中里力氏
越境ECでは国内より一足早く、9月頃から11月にかけて年末商戦需要が少しずつ高まりを見せます。
不安定な世界情勢が続く中でも、特にギフト需要として年末に人気が上昇するおもちゃ・コレクティブル商材や、円安効果によって好調な高価格帯商品の取引額上昇に期待しています。
また、最近は世界的にも有名な金属加工の街「燕三条」の金物、特にホットサンドメーカーの人気が急上昇。インバウンド観光の段階的な復活に向けて期待が高まる中、こういった世界的に知名度が高い「メイドインジャパン」製品の動向にも注目していきたいと思います。年末商戦に向けてeBayでの販売をご検討いただいている方には、今後実施予定の販売支援を目的としたウェビナーやキャンペーンのご案内にもご注目いただきたいです。