【総額44億円調達のSUPER STUDIOに戦略を聞く】大型プロモーションで大手企業の導入加速

【ECソリューションマップ2022「ECサイト構築サービス編」】

EC基幹システム「ecforce」を提供するSUPER STUDIOは6月22日、総額約44億円の資金調達を実施したと発表した。2021年9月には、総額18億円を調達しており、累計調達額は約62億円になる。調達資金を生かしたテレビCMやタクシー広告などのプロモーションにより、この1年間で「ecforce」の導入ショップ数は約74%増加したという。新たな調達資金を生かし、「次世代EC構想」の実現を目指す、同社の花岡宏明取締役COOと吉田光マネージャーに「ecforce」の強みや成長戦略を聞いた。

――どのような導入企業が増えているのか?

吉田:昨年、テレビCMやタクシーサイネージなどの広告を打たせていただいたことで、大手企業さまからのお問い合わせが増えた。

花岡:以前は大手企業さまからの問い合わせが1件もない月があった。最近では問い合わせ全体の10%が大手企業さまになっている。広告で直接認識してもらえたことと、資金調達などにより勢いのある会社として注目してもらえたことが大きい。

――大手企業をどのように支援しているのか?

吉田:ファンケルグループのネオエフさまなどもそうだが、戦略面からサポートさせていただく機会が増えている。一緒にブランドのマーケティングやCRMの戦略についてアドバイスし、その戦略に基づいて当社のシステムも導入してもらうというイメージだ。

大手企業さまほど、戦略を一緒に考えてほしいという要望が多い。当社は自社でD2Cブランドを展開していたり、クライアントと共同で事業展開していたりするので、そのノウハウを生かしてサポートさせていただいている。

花岡:大手企業さまはマス広告を展開し、リアル店舗で売り上げを作り、投資回収するというビジネスモデルでやってきた。ECといっても、アマゾンや楽天市場などモールに出店することが多かった。かつては自社ECサイトを展開していても、ネット集客の手法があまり多くなかった。

新興D2Cブランドは、最初からECで売り上げを上げている。大手企業からすると、店頭で見かけない新興ブランドが年間何十億円もの流通を出しているのか、理解できない部分もある。知らないブランドが束になって、マーケットの10%ぐらいのシェアを握っているケースもある。

大手企業さまの中にも新興ブランドの台頭に危機感を持ち、デジタルネーティブなD2Cの領域に挑戦する動きが活発化している。当社はそのパートナーとして、支援できるサービスとノウハウを持っている。

▲取締役COO 花岡宏明氏

吉田:システム面だけではなく、倉庫や資材、OEM、広告、制作会社など、さまざまなご相談に対応できる。ワンストップで課題を解決できる点を評価いただいていると思う。

――大手企業を支援する上で大変な面は?

吉田:大手企業さまは基幹システムで全ブランドの卸も含めた会計を処理している。その基幹システムといかにデータ連携できるかということを、整理しながら支援させていただいている。セキュリティー面も高い水準を求められるので、しっかりと対応し、導入が進んでいる。

花岡:この1年くらいで「ecforce」側のAPIも増えており、大手企業さまの環境に合わせてスムーズに連携できる体制になっている。

――この1年間で強化した機能やサービスは?

吉田:自社ECサイトだけではなく、ECモールなどのチャネルも統合的に支援できる体制が整ってきた。大手企業さまのECモール店も運営できる。

自社ECサイトとモールを別のチームで運営するケースは多いが、当社ではまとめて支援することを提案している。デジタルの構造上、自社ECサイトで配信した広告で、モール店の売り上げが上がるといったこともある。最適解を目指すならまとめて支援する方が効果的だ。

――D2Cでも新規獲得コストが上がっていると思うが、その対策は?

花岡:デジタルマーケティング市場では、出稿する人が増えており、広告の単価は確かに高騰している。広告の規制も強くなっている。

一方でグレーな広告が出せなくなったことで、本質的なマーケティングを展開しているブランドの方が成長しやすくなっている。テクニックも常にアップデートされているので、しっかりと最先端の手法を駆使しているブランドは、新規顧客を伸ばしている。マーケティングがシンプルではなくなっていく中で、成功している企業のノウハウを熟知しているので、そのノウハウを生かした支援ができている。

――導入が増えている商品カテゴリーは?

吉田:かつては化粧品や健康食品など単品通販と呼ばれる売り方のブランドで導入されることが多かった。最近ではアパレルや食品などのブランドを持つ企業さまに導入されるケースが増えている。アパレル企業さまがよく採用しているような、モール型のショップをノーコードで作れる機能も提供している。

▲アカウントエグゼキューショングループ グループマネージャー 吉田光氏

――SKUの多いアパレルなどのマーケティング支援もできるのか?

花岡:SKUが多いと、どの商品を広告で訴求すればいいか分からないという課題がある。そんなときに、われわれは「ヒーロー商品」と呼んでいるが、一つプロモーションしやすい商品を作ってもらい、その商品のランディングページ(LP)を作る。「ヒーロー商品」をデジタルマーケティングで露出を高め、新規顧客を獲得する。SKUがたくさんあるので、獲得した顧客に対してCRM施策を展開することで、新たな商品の購入も促しやすい。

SKUが多い企業の方がLTVを高めやすいという利点がある。単品通販の企業では、顧客獲得に1万円までしか出せない場合でも、SKUの多い企業が高いLTVを実現できるのであれば、顧客獲得に1万2000円をかけられる。そうすると獲得単価の差でSKUが多い企業の方が有利になるケースもある。マーケティングのうまい企業は、すでにこのような戦略を取っている。

――周辺ソリューションの導入も進んでいる。

吉田:いずれのソリューションも導入が進んでいる。チャット型接客ツール「talkmation」は、コールセンターなどのカスタマーサポート(CS)における人件費を抑えることに貢献している。多いところだとCSコストの80%をカットできたケースがある。

シナリオに基づいてチャットで自動返信することが可能なので、コールセンターがつながりにくい時間帯や、対応時間外である夜間でも質問に応答でき、ユーザビリティーが上がっている。

入力フォーム最適化システム「smart dialog」も引き続き好評だ。LPにチャット型対話式フォームを実装でき、コンバージョンレート(CVR)を高めることができる。

パーソナライズシステム「1d color」もニーズが高まっている。

花岡:「1d color」は、パーソナライズブランドだけではなく、モール型のショップにもニーズがある。SKUがたくさんあるECサイトでは、ユーザーがどれを買ったらいいか迷ってしまうことがある。ユーザーにニーズをヒアリングして、お薦めの商品を提案するレコメンド的な使い方も「1d color」ならできる。

「1d color」と「ecforce」を連携することで、こんな施策も可能だ。既存ユーザーにアンケートを取り、その回答結果を顧客データにひも付け、その後のマーケティング施策に活用することができる。顧客を深く知り、CRM施策を展開することでLTVが向上する。

――他社のソリューションからの乗り換えで苦労する点は?

花岡:カートが提供する独自のペイメントを導入していると、乗り換えの際にクレジットカード情報を引き継ぐことができないケースがある。特に定期購入型のビジネスモデルの場合、事業破綻するくらいのインパクトがある。事業が大きくなればなるほど、そのリスクは大きくなるので、そこに気付いて早めに当社に乗り換えていただいたお客さまもいる。

吉田:ソリューションによっては、ショップ内のデータを落とすためのCSVの機能がないものある。ドメインもカート側で設定するため、ドメイン自体を引き継げないこともある。手軽さが後々、大変なことになることもあるので、カート選びは慎重にした方がいいと思う。

▲取締役COO 花岡宏明氏(左)、アカウントエグゼキューショングループ グループマネージャー 吉田光氏(右)

――今後、さらに強化するポイントは?

花岡:デジタル広告でどんどん売り上げを伸ばすことができた時代から、戦略が複雑化してくる時代になってきている。「ecforce」は他のツール群とともに、今の時代のEC運用に最適化された状態を維持する。

その軸になるのがデータ活用だ。ECやリアル店舗、モール、さらにSNSなどチャネルが多様化し、データはますますバラバラになっていく。それらのデータを一元管理し、簡単に使える仕組みにする。

プラットフォームにデータを握られていた世界から、D2Cという形でメーカーがデータを持つ時代になる。せっかくその時代が来ているのに、データの使い方も分からない、使う仕組みもないというのが現状だった。「ecforce」でシンプルにデータを活用し、ブランドの価値を高めていけるようなプラットフォームを提供したい。

データを集めたり、データを生かして施策を展開したりできるツール群も拡張する。マーケティングオートメーション(MA)領域のソリューションも開発している。

▲「次世代EC構想」の実現を目指す

ツールとノウハウをセットで提供し、年商10億円を2人の従業員で運営できる世界観を実現する。自社のD2Cブランドでは、すでに実現できている。それが実現できることの証明になるだろう。