伊藤忠商事が「女性活躍」宣言 女性社員の出生率が倍増

「とかく男社会と思われがちな商社だが、女性が入社し、ライフイベントを迎えても、仕事との両立を諦めることなく、働き続けることができる当社の持続可能性を示すものではないか、と考えている」と語るのは、伊藤忠商事副社長の小林文彦氏。

 伊藤忠商事(石井敬太社長)が女性社員の合計特殊出生率を公表し、話題になっている。同社の調査によると、2010年に0・94だった出生率が上昇。22年3月に1・97になり、国の平均出生率1・33、東京1・13を大きく上回る結果となった。

 同社は2010年度から社員の働き方改革を強化。深夜残業を止めて朝方勤務を奨励していることは有名だが、この他、社内託児所の設置やコロナ禍での在宅勤務の全社員への適用など、女性が仕事と育児の両立を図りやすい制度を構築。こうした制度を整えたことが、結果として女性社員の出生率向上につながったとしている。

 ただ、同社が「今後の当社の女性活躍推進においても重要指標」だとして公表に踏み切った出生率だが、周囲では「子供を産みたくても産めない女性のプレッシャーになりかねない」という声も出ている。

 こうした意見に対して、元厚生労働事務次官で社外取締役の村木厚子氏は「子供をもつか、もたないかとか、何人もつかというのは極めて個人的な問題で、会社が介入してはいけない」とした上で「会社が目標出生率を定めるようなことはあってはならないが、一方で、実際に何人の子供を持てているのかというデータを押さえておくのはとても大事なこと」と語る。

 伊藤忠は2021年10月から、取締役会の任意諮問委員会として「女性活躍推進委員会」を設置。委員長に就いているのが村木氏で、近年は女性役員の登用も加速。同社初となる女性海外事務所長や国内事業会社社長も誕生している。

 もっとも、女性社員の比率や女性管理職の割合を公表する企業は多いが、女性社員の出生率を公表する企業はほとんどない。かつて、石川県と東京の本社に勤務する女性社員の出生率の違いを公表していたコマツも「現在は公表していない」(同社)。

 いずれにせよ、子供を産み、育てやすい環境をいかに整えるか。そして、仕事と子育ての両立をどう図るかは、日本にとって大きな課題。今回の出生率公表で、伊藤忠が産業界に一石を投じたことは間違いない。

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