下がる金融の垣根、野村ホールディングスが進める「資産コンサル業」への転換

運用資産に応じた新たな手数料体系も

「この2年間、営業部門ではお客様の中長期的な資産運用や、有価証券以外の資産を含めた総合的なアドバイスを行うべく、『資産コンサルティング業』への進化を進めてきた」─こう話すのは、野村ホールディングスグループCEO(最高経営責任者)の奥田健太郎氏。

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 野村HDが事業変化を加速させている。奥田氏は就任以降、「パブリックからプライベートへ」という戦略を掲げ、「お客様1人ひとりに合わせたプライベート・サービスの提供」に取り組んできた。

 2022年4月からは、預かり資産に応じて手数料率を変える新たな手数料体系「レベルフィー」を本格導入。顧客は株式など商品の売買のたびに手数料を支払うのではなく、運用の残高に応じて手数料を支払う形。

 また、運用に関しては伝統的な運用資産に加えて、オルタナティブ領域の商品を拡充。これは21年4月に新設した「インベストメント・マネジメント部門」で取り組んでいる。例えば、22年5月には野村不動産ホールディングスとの間で、不動産ファンドを共同運営する資産運用会社を設立することで基本合意。

 両社は以前は資本関係が深かったこともあり、こうした取り組みがしにくい面があったが、野村不動産HDの独立性が高まった結果、改めて共同で事業を行うことができるようになった。

 こうした資産の多様化は、事業の安定を図る上でも重要。22年3月期では第4四半期にウクライナ問題など地政学リスクが顕在化し、法人、個人ともに投資を手控えたことで野村HDを始め、証券各社の業績に悪影響が出た。市場の変動に左右されるのは業界の宿命とも言えるが、この影響を極小化するために、収益源の多様化に注力。

 近年は国内で地方銀行との連携も進む。SBI証券、大和証券なども同様の戦略を進めており、陣営が分かれつつある。

「差別化できるのはコンテンツと『人』。従来のやり方、発想に囚われず、自ら変化していく必要がある」と語る奥田氏。金融を始め、様々な事業間の垣根が下がる中、日本に眠る預貯金を投資に振り向けるため、従来と違う発想で臨むことになる。