塩野義製薬の新型コロナ治療薬、米政府への供給協議も

抗ウイルス効果や感染力の強いウイルスの速やかな消失等を確認─。

 塩野義製薬が開発を進めている新型コロナウイルス感染症治療薬「S-217622」の臨床試験結果が公表された。「1日1回5日間」服用(経口投与)する薬だが、3回投与(4日目)でプラセボ群と比較して約90%の患者のウイルス力価(感染力の高いウイルス)が減少。また、ウイルス力価が陰性になるまでの時間の中央値は、プラセボより1~2日短縮した。

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 今回の治験では、ウイルス力価を下げること、症状の改善を目指していたが、ウイルス力価は下がったものの、症状の改善は有意な差が認められなかった。

 12の症状改善を設定していたが、この12症状はデルタ株が流行していたときに設定したもの。今回の治験はオミクロン流行時に行うことになり、オミクロンに特徴的な呼吸器症状と発熱の5症状は改善を確認できたが、他の症状では有意性が見られなかった。

 変異株によって症状の特徴が異なる新型コロナウイルス。変異株の多さが、新薬開発の難易度を上げている。

 また、一部で「S-217622」の非臨床試験で胎児の骨格形成異常があったと報道されたが、動物実験で人への投与より高い濃度で投与した際に起きたもの。2月25日に提出した承認申請資料にもこのことは記されており、厚労省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)にも報告されている。すでに上市され、広く使われている薬でも、持病や妊娠中などで服用を制限されることはある。

「S-217622」はフェーズ3に入っても、治験を中止するような重篤な副作用は出ておらず、塩野義は「承認審査の可否に影響を与えるものではないと考えている」。

 塩野義は米政府と「S-217622」の供給協議も進めている。

 米政府はすでにメルクやファイザーと治療薬の供給契約を結んでいるが、既存薬は1回3錠、1日2回服用する必要があり、服用のハードルが高い。これに対し、1日1回の服用で済む塩野義の治療薬への期待は高い。各国政府は治療の選択肢を拡大しようと、多様な薬を活用できる環境整備を進めている。

 一方、民間企業の塩野義にとっても、感染症領域を持続可能な事業にするためには供給先の確保が重要な課題といえる。