【求められる公認会計士の役割】日本公認会計士協会・手塚正彦会長の「ハード・ローよりソフト・ローで企業の成長を」

てづか・まさひこ

1961年神奈川県生まれ。85年東京大学経済学部卒業。86年監査法人中央会計事務所に入所。90年公認会計士登録。2002年中央青山監査法人代表社員を経て、06年理事長代行。07年監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)パートナー。16年から日本公認会計士協会常務理事(監査・保証、IT担当)を、19年から現職。

決まり事は最低限でいい

 ─ 企業の不祥事が頻発し、コーポレートガバナンス(企業統治)の在り方が問われています。ガバナンスに対する手塚さんの考えを聞かせてください。

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 手塚 「コーポレートガバナンス・コード」もそうですが、ガイドラインとして参照すべき原則・指針の下には細則もたくさん出てきます。その細則を多くすると「書いていなければやっていい」「書いていないことはやらなくていい」と捉えられてしまう傾向にあります。私は、決まり事は最低限でいいと考えています。それぞれが常識に照らして誤ったことはしないことが一番いいはずです。それは創意工夫にもつながります。

 ただ、何かあるとその反動が激しく起こります。原則や指針を過度に恐れてしまうと、何事も決めてもらった方がいいと考えてしまうのです。その決まり事に従っていれば免責されるという考え方です。我々の業界で言えば、監査の基準や規制が細かくなりすぎると、決まり事を逐一守るだけの形式的な監査になってしまいかねません。

 ─ これは社会運営の在り方にも通じる話ですね。

 手塚 そうですね。昨今、日本を代表する製造業で品質不正の問題が起こりました。品質に関しては、規格がきっちり決まっていて、それを満たすためのプロセスのルール化を細かく決めていたはずです。しかし、現場ではそのことが抜け道を探すことにもなってしまった。

 それが結果的に恒常化し、最初はそんなに悪いことをしているという意識がなかったのが、段々エスカレートしていくと。ですから、ある程度、決まり事は決めなければいけないけれども、創意工夫を促しながら、お互いにけん制し合うような仕組みが必要だと思います。

 ─ けん制とは透明性?

 手塚 そうです。相手の悪いところを諫めることを目的にするのではなく、お互いしっかり仕事しているかどうかを確認し合う。本来、我々の仕事もそういう仕事です。企業の方がしっかりと財務諸表を作り、それを確認するのが会計士の監査です。ただ、中には意図的に不正を働く方がいます。意図的な不正には発見するのが難しいものもありますが、なぜ監査で早期に発見できなかったのかと言われてしまうわけです。

 そのときに、社会が看過できないほどの落ち度が会計士にあれば、行政処分などは避けられませんし、改善すべき所は改善します。ただ、何かあると必ず規制するルールを変える傾向がありますが、ルールを変えると全体に影響を及ぼすことになるので、慎重に考えていただきたいです。

以下、本誌にて