【記者座談会 2022年EC業界予測<4>越境EC編】中国以外も拡大、課題は物流

2022年のEC業界はどう動くのか――EC業界の”現場”を取材で駆け回る「日本ネット経済新聞」の記者が集まり、「2022年のEC業界予測」を語り合った。テーマは①OMO ②物流 ③コンプライアンス ④越境EC ⑤商品調達 ⑥ライブコマース ⑦メタバースーーの7項目。記者が取材で見てきた変化を振り返りつつ、今年のEC業界の行方を占う。記者の写真とともに、それぞれが掲げるEC市場を攻略するための「2022年のキーワード」も掲載している。

【④越境EC編】

永井:中国向けの越境ECは2021年も伸長しているが、成長はやや鈍化している。大きな要因として、中国政府による大手IT企業の規制激化などが考えられる。ただ、中国に詳しい有識者に話を聞くと、規制強化はこれまでにも行われてきたため、そこまで大きな問題ではないという。規制対象はあくまで大手IT企業であるため、アリババ、テンセントなど、中国での売り上げトップ数十社に入り込んでいないのであれば、中国当局の眼中にはないらしく、「過剰に恐れることは現実的ではない」という見解も少なくなかった。中国ECはプラットフォームごとに流行の変化が激しいが、2022年も引き続き伸び続けると思う。プラットフォームをきちんと選定していくことが重要だ。

      永井愛理 記者

【2022年のキーワード「市場拡大」】

コロナで国内外のEC市場が拡大。2022年も引き続き、海外EC進出や新規市場開拓は加速。

高野:花王グループは2021年、中国の「独身の日」セールで前年を上回る好調な実績を上げていた。トイレタリーブランドの「ロリエ」や化粧品ブランド「freeplus(フリープラス)」など、日用品や化粧品が売り上げ拡大の中心となったようだ。広報担当者に聞いたところ、現地での緻密なターゲット設定と、早い段階からのアプローチが奏功し、効率的に顧客を獲得できたということだった。日本と同じやり方ではなく、その土地に合った商品開発やプロモーションは各社とも今後、かなり問われていくのではではないかと思う。

手塚:中国の動画共有サイトの「Bilibili」とか、中国版のティックトック「抖音(ドウイン)」など、いわゆる動画のサイトがライブコマースをかなり伸ばしていると聞いた。スケールはまだアリババなどに及ばないが、成長性は動画サイトの方が高い。中国で次に来るプラットフォームもチェックしておいた方がいいだろう。

中国以外のエリアでも越境ECが拡大

司会:中国以外での越境ECの盛り上がりはどうか。

大多:台湾やベトナム、シンガポールなどは、加熱する中国市場とは異なり、越境ECのフロンティアだという話を以前から聞いている。東南アジア・台湾で最大規模のECプラットフォーム「Shopee」を運営するShopeeは、日本にもショッピージャパンという日本法人を設けており、越境ECを推進していこうという動きを加速している。

東南アジア向け越境ECの魅力としては、消費の感覚が日本と近いことが挙げられる。日本人と同じような感覚で、商品を購入してくれるようだ。化粧品、日用品、ホビー系など、日本の持つ商品は需要が大きい。

手塚:コロナ禍に越境ECで売れるエリアが広がっているようだ。特に欧米圏が伸びたと聞いている。売れるエリアが拡大したことで、売れるアイテムの幅も広がっている。

高額商品も売れるようになってきている。グローバルECモール「eBay」も独自の決済を導入して、100万円以上の高額なアイテムを販売できるようにした。「ポケットモンスター」のカードが、4000万円以上で売れたという話も聞いている。

星野:米国にはない日本の商品が売れているようだ。例えば、痔の薬は米国にはないそうだ。日本で売れているものを大量に仕入れて、米国の通販で販売したところ、米国にいる日本人や、痔に困っている米国人に売れたという話を聞いた。

黒田:米国では日本の菓子も人気だ。ICHIGO(イチゴ)という企業が、越境ECで日本の銘菓を詰め合わせたサブスクリプション型ギフトボックスを販売しており、好調なようだ。2022年7月期の売上高は40億円を見込むという。外国人のマーケッターが社内におり、外国人が日本のどのような菓子を好むのかが分かるという。

さらに、販促には海外のインフルエンサーを使っている。ただ、インフルエンサーマーケティングは広告費がかかりやすいため、今後は、これまでとは違った広告やプロモーションを仕掛けていくことも考えているようだ。

      黒田海椰 記者

【2022年のキーワード「商品調達難の解決策」】

コロナの影響で半導体やコーヒー豆などが調達難に。2022年は有効的な解決策を発見できた企業が優位になる。

配送費高騰がネックに

大多:ホビーECの大網も越境ECで成果を上げている。商材はフィギュア、ゲーム、漫画などだ。日本でも流行している人気漫画「鬼滅の刃」「呪術廻戦」などの関連商品は、海外でも需要がある。

しかし、越境ECにかかる物流コストは近年、かなり上がったと聞いている。コロナ禍の影響で船などによる輸送が停滞したため、自社で船便などを工面せざるを得ない状況になったという。ほとんどが予約商品なので、物流コストが上昇したからといって、販売価格に上乗せできない。コストの増大で苦戦したと聞いた。今後は自社でハンドリングできる配送手段の拡充を進めるようだ。

手塚:配送が一番ネックになっているという話は聞いている。航空便も旅客機の本数が圧倒的に減っているため、商品を運べるキャパシティーも大幅に減っているという。その課題は解消されていない。日本郵便のEMS(国際スピード郵便)などは、徐々に再開していっている。

しかし、貨物専用の便の一部をEMSが使ったりするようになってきているようなので、キャパシティー自体は変わらない。越境ECを手掛ける事業者の中には行政に働き掛けているところもあるという。日本の魅力ある商品・サービスの海外需要を開拓する「クールジャパン」を提唱するのであれば、インフラを整えないといけないと思うが、今のところ動きは鈍いようだ。