パーソナル化し、多様性が増す22年のクラウドストレージ市場

2022年のクラウド業界の動向に目を向けるにあたり、2021年に行った市場予測を振り返ってみました。予測した中で、クラウド市場の多様化から、監視カメラのクラウド化まで、そのほとんどが、真実味を帯びてきていると思います。特に、多くの企業が、社員のリモートワークをサポートするために、デジタルトランスフォーメーションを加速させました。それに伴って、分散した従業員がデータにアクセスしやすくなるよう、クラウドストレージを採用するようになったという事実があります。

2021年は、ランサムウェア攻撃の増加や、監視カメラ業界の発展など、クラウド市場に新たな要因が加わり、クラウドストレージへの新しい需要が拡大しました。2022年がどのような年になるかを確実に知る方法はありませんが、私が言えることは、「今年もクラウド市場に劇的な変化が起こる年になる」ということです。それでは、2022年のクラウド業界について、私が考える三つの予測をご紹介しましょう。

ランサムウェアとの戦いは基本に戻る

2021年、企業のデータに侵入し、ロックをかけて身代金を要求する「ランサムウェア」よる攻撃は、過去最高を記録しました。2021年上半期で151%の増加となりました。その結果、ランサムウェア攻撃によってシステムが休止してしまう期間に発生するコストが、爆発的に増加しました。壊滅的なデータ損失など、別の課題も顕在化しています。

これまで、多くの企業が、ランサムウェアの侵入防止や検知に、時間と費用をかけすぎてきました。しかし、サイバー犯罪者は常に新しい侵入方法を探しています。システムの脆弱性は必ずしも技術的なものではなく、人間がミスをしないかどうかにかかっています。サイバー犯罪は、すぐに負け戦になってしまうということに、企業のシステム運用者も気付き始めています。

データのバックアップをしっかりととっておくことで、ハッカーがすべてのデータコピーをロックしたり暗号化したりするのを防ぐことができます。これは結果的に、迅速な復旧につながり、コストのかかるシステム休止期間を回避することができます。2022年には、ランサムウェアの攻撃が続く中、このような機能を利用する企業が増えてくると予測しています。

 

スマートシティの開発が監視システムのクラウド化を加速

昨年、私は、低コストで柔軟性の高いクラウドストレージの選択肢が増えることから、「監視カメラ」の分野が、次にクラウド化が進む大きな産業になるだろうと予測しました。2022年には、成長中の「スマートシティ」が、インフラを整備していく中で、このような動きが続いていくと思われます。

実際に、最近のデータによると、2025年までに世界の34都市で人口が1000万人を超えることが予想されています。都市がスマート化のためのインフラを整備し、人口の増加に対応していく中で、監視カメラは道路交通の監視という重要な役割を担っています。これにより、より安全な地域社会を実現し、自治体のサービスを向上させられますし、より多くのデータを作成することもできます。

このような未来を実現するためには、スマートシティアプリケーションは、重要なデータを保存するために、コスト効率の高い持続可能な方法を活用する必要があります。しかし、データへの適切なアクセスが可能でなければ、これらのカメラはほとんど価値を見出せません。そのため、今後は、監視機関がハイブリッドクラウドを活用するケースが増えてくるでしょう。

パーソナル化、柔軟性、多様性の向上

AmazonやMicrosoft、Googleなどのハイパースケーラーが、顧客に対して「敵対的な」コストを課していることは、もはや周知の事実です。彼らは、クラウドサービスの利用に当たり、下りデータ転送料やAPI リクエストなどのデータ転送料、ベンダーロックイン、厳しいキャパシティ制限などをかけています。このような予測不可能で高額な料金は、IT予算をあっという間に枯渇させ、企業はクラウドでのデータアクセス性の向上を図ることができません。

世間では、複数のクラウドサービスを組み合わせて運用する「マルチクラウド」が話題になっています。クラウドサービスは今後、複数のベンダーがさまざまな分野で、快適なサービスを提供する方向に進み続けるでしょう。クラウドストレージは、特にデータが長期間保存される場合は、多くのお客さまが、自社のデータをハイパースケーラーから自社運用に移したいと思っています。 ハイパースケーラーの料金モデルは非常に複雑になっており、お客さまは、自分のデータにアクセスしてもペナルティを受けないような、よりシンプルで予測可能なモデルを強く求めているのです

新たなストレージプロバイダーが、ニッチでパーソナライズされたサービスを提供するようにもなるでしょう。より安価で柔軟なオプションも展開することで、クラウド業界は、自社運用と委託型の「ハイブリッドクラウド」の未来に向けて拡大・多様化していくことでしょう。

その結果、市場ストレージは、ハイブリッドまたはマルチクラウド型へと移行します。企業は独自のニーズに応じて、最適なソリューションを組み合わせて使用することができるようになります。この 「ストレージ・アズ・ア・サービス(サービスとしてのストレージ)」のモデルは、2022年も引き続き拡大していくでしょう。

非常に高速なオンプレミス型(自社運用型)のストレージを開発している企業は、一部のアプリケーションでスピーディーに運用する必要性が高まっているため、継続的な成長が期待できます。しかし、非常に高速なソリッドステートストレージにデータを長期間保存しておくことはできません。そのため、これらのストレージベンダーはクラウドストレージプロバイダーと提携し、高速なローカルストレージからより安価なクラウドストレージへの容易な移行を可能にしています。このようなハイブリッドストレージには大きな意味があります。

前にも述べたように、2020年に起きた混乱は、多くの企業にクラウドへの大規模な移行を促しました。そして、企業がリモートワークやハイブリッドワークを推進し、セキュリティリスクが増大しました。その中で、データストレージのニーズが業界全体で進化していくことが予想されます。この勢いは続くと考えています。

10年前、世界中のデータはすべてオンプレミス(自社運用型)でした。今から10年後には、世界中のデータのほとんどがクラウド上に存在するようになるでしょう。移行は進行中です。新しい年に向けて、2022年にクラウドが何をもたらすのか、私は楽しみにしています。

【著者紹介】

David Friend(デビッドフレンド)

Wasabi Technologies LLC

共同創設者/CEO

エンタープライズクラウドストレージサービスプロバイダーであるWasabi Technologiesの共同創設者兼CEO。 エール大学を卒業後、プリンストン大学大学院工学研究科にてDavid Sarnoff Fellowを務めた。コンピューターグラフィックス企業のComputer Pictures Corporationや、大量の顧客データを処理するための多次元データベース分野のパイオニア企業のPilot Software、fax-to-emailサービスの世界最大のプロバイダーであるFaxnet、VoIPカンファレンスサービス企業のSonexis、現在世界をリードするクラウドバックアップ会社の1つであるCarboniteなどを含むテクノロジースタートアップを多数設立した。