【世界シェア首位】THK社長が語る「当社の製品は『縁の下の力持ち』。培った技術を生かして 『モノづくりサービス業』に」

「当社の製品は表には出ませんが、『縁の下の力持ち』として働く重要な部品です」と話す、THK社長の寺町彰博氏。世界シェア5割の「LMガイド」は機械の高精度化、高速化、長寿命化を実現する重要部品。そのTHKが2021年、創業50周年を迎えた。近年、寺町氏が強調しているのが「モノづくりサービス業」への転換。顧客の課題を解決するために、どのような企業の姿を目指しているのか。

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コロナ危機で変わった働き方

 ─ コロナ危機から2年近くが経ちますが、寺町さんはこの危機について、どのような認識を持っていますか。

 寺町 時代の変化のスピードを加速させたのではないでしょうか。例えばウェブを活用したリモートでの仕事は大きく進捗しましたし、中国のように電子マネーを国が管理するといった手法、さらには自動車のEV(電気自動車)化など、従来なら5年かけて進むような変革が一気に進んでいます。

 ─ THKはモノづくりの会社ですが、リモートワークの割合はどのくらいですか?

 寺町 当社は本社・営業部門では90%(10月1日現在)がリモートになっています。その中で技術関係の設計者なども、自宅でCAD( Computer aided design=コンピュータ支援設計)を使って仕事を行っています。

 ただ、製品の信頼性を高める耐久試験、分析、試作などのため、どうしてもハードを使わなくてはならない社員については90%にこだわっていません。このように出社しなければならない場合でも、できるだけ通勤時の感染リスクを減らすために、時差出勤、近隣ホテルへの宿泊、自転車・自動車通勤など、状況に応じて様々な工夫をしています。

 ─ コロナ終息後の働き方をどう見通していますか。

 寺町 リアル、リモートワークはどちらも良さがありますから、組み合わせになるのではないでしょうか。

 当社ではPCとインターネット環境さえあれば、自宅でもどこでも仕事ができます。インターネット電話を使っているため、どこにいても外線電話を受けたり、それを社内へ転送することが可能ですし、会議もいろいろな場所から参加できます。

 従来、我々がお客様と技術的な打ち合わせをする時には、訪問するか、来ていただくかでした。ところがリモートであれば、移動の時間がありませんから、お互いに空いている時間が決まりさえすれば、すぐに打ち合わせができます。

 また、営業の人間も遠隔から参加できますし、技術の人間も、例えば自分の専門外の話題が出てきたら、専門の人間にスイッチすることも可能です。

 ─ 多様な働き方を進めていくということですね。

 寺町 ええ。私は「ウィズコロナ」という言葉が好きではありません。共存ということはあり得ないからです。今、先進国はワクチン接種を進めて感染をある程度抑えることで経済活動ができるようになってはいるものの、決して共存しているわけではありません。

 ですから私は「アフターコロナ」と言っています。

 ─ コロナが業績に与えた影響は?

 寺町 当社の製品は医療機器にも多く使われていることもあり、社会的に不可欠な「エッセンシャルビジネス」として各極で仕事ができていました。昨年の夏場くらいまでの立ち上がりは順調でしたが、その後、やはり各国でお客様の工場が停止し、当社が操業を再開しても、お客様が稼働できない状態が続いて、大変な時期もありました。しかし、その後急速に回復して、今は大変忙しくさせていただいており、2021年12月期は大幅な増収増益の見込みとなっています。

「THK」という社名に込めた思い

 ─ 改めまして、THKは今年創業50周年を迎えましたね。お父さんの博さんが創業して、寺町さんは学生時代から会社を手伝っていましたね。一言では表せないとは思いますが、どう総括しますか。

 寺町 あっという間の50年だったと思います。当社が1989年に株式を公開してから32年が経っていますが、その年数が、それ以前の倍くらいになっています。

 ─ 創業の1971年は米国が金とドルの交換を停止した「ニクソン・ショック」が起きた年で、非常に世の中が荒れた時期でしたね。

 寺町 そうですね。創業時は私はまだ学生の立場でアルバイトに行くくらいでしたが、当時は本当に小さな会社で、社員の人達も家族みたいな感じでしたから、楽しかったですね。

 ─ 学生時代から会社を手伝ったことは、後々役に立ちましたか。

 寺町 ええ。父がTHKを立ち上げる時、私の兄弟はまだ小さく、相談相手は私しかいませんでしたので、例えば、THKというブランド名もいろいろと話をしながら決めたんです。

 我々の役割とは何かを考えて名付けました。当社の製品は表には出ませんが「縁の下の力持ち」として仕事をする重要な部品ですから「タフ」でなければいけません。なおかつ当時は日本が「安かろう悪かろう」から「よかろう安かろう」に転換していく時期でしたから、世界で最高品質、「ハイクオリティ」のものを提供していこうと考えました。

 さらにものまねではなく、自分達が開発したものをお客様に提案していくと同時に、今だとソリューションという言葉になるのかもしれませんが、技術でお客様の「ノウハウ」づくりのお手伝いをしなければなりません。そしてこれらの「Toughness」、「HighQuality」、「Know-how」という、我々に必要な3つの要素の頭文字を取って「THK」というブランド名にしたのです。

 ─ 創業時は東邦精工という社名でしたね。

 寺町 ええ。それを世界で通用する会社にしようと84年に、社名とブランド名を一致させるためにTHKに商号を変更したわけです。

 ─ その意味で創業時の思いが、今のTHKの成長を支えているということですね。

 寺町 そう思います。今でも当社の社員には入社時に、この「THK」の3つの要素を徹底的に教え込んでいます。

世界シェア首位の「LMガイド」

 ─ THKが開発した「LMガイド」(Linear Motion Guide、世界で初めて直線運動部の転がり化を実用化。機械の高精度化、高速化、長寿命化などを実現する部品)は国内で7割、世界で5割のシェアを持っていますが、これは強みになっていますね。

 寺町 はい。世界初の製品ですから、発売から10年間は同じような部品を作っている会社は1社もありませんでした。当初、LMガイドはなかなか認めてもらえませんでしたが、例えば機械メーカーのアマダさんの非常に高速に動くパンチングプレスのような機械が世の中から求められる中で、軽くて高速かつ正確に動く我々のLMガイドがヒットしました。それからデジタルの時代を迎え、半導体や電子デバイスを作るために、様々な装置が開発される中で、新興メーカーが機械を設計しなければならない局面が出てきました。

 機械メーカーには、伝統的な技術がありますが、新興メーカーには、その技術の蓄積はありませんから、既存の部品を集めて作るのが早いし、簡単かつ高精度な機械装置ができるということで、電子・半導体業界でも認めてもらえるようになりました。

 当社の初年度に当たる71年は3億6800万円の売り上げでしたが、10年間で113億円にまで伸び、その主な売り上げがLMガイドでした。やはり、それだけ成長すると、あの製品は有望らしいということで次々と競争相手が参入してきました。ですから、我々も一生懸命努力を続けています。

 ─ 世界シェア5割を維持しているのは努力の賜物だと。

 寺町 そうです。当社では売り上げ、利益も重要ですが、シェアを最も重視しています。シェアがナンバーワンであれば、我々が1位の座にあぐらをかいていない限り、お客様のニーズは情報として一番入ってくるはずです。そのニーズを真摯に受け止めていけば、長期的に先行していることと相まって、新たな商品開発で更に先を行けることになります。シェアはそのような視点で最も重要です。

 ですから私は常に、業界トップでなければ、いくら利益が高くても長期的に考えたら駄目だということを言い続けているんです。

「ビジネススタイル」を変革

 ─ 寺町さんは、THKはメーカーだけど、基本的にはサービス業だということを強調していますね。この狙いは?

 寺町 当社は「モノづくりサービス業」だと言っています。例えば、IT産業では、システムを構築する時には構想、プログラミングという各工程の中でお金を頂戴していきます。

 そして、コンピュータを納入し、それを保守・管理することや、その中で動くプログラムをメンテナンス、変更するという形で、導入からアフターサービスまで、それぞれの工程をビジネスにしています。

 我々も、お客様から構想をお聞きして、図面を書いたり、人材を送ったりして、ノウハウを提供しています。しかし、今までのモノづくりでは、それらの要素を全てハードに載せて、売り切りのような形になってしまっていました。

 しかし、機械を使われるエンドユーザーにいかに貢献できるかを考えると、実際には単にモノづくりだけではなく、ビフォーサービスからアフターサービスまで一連の工程を、我々がビジネスとしてやっていかなければならないと考えたのです。

 例えばアフターサービスでは、製品にセンサーを設置して故障の予兆を検知するIoTサービス「OMNIedge」を導入することにより、製品が故障して止まる前に手を打つことで、お客様の損害を抑えることができます。

 また、ビフォーの部分でも、今はスピードの時代ですから、お客様とのコミュニケーションプラットフォーム「Omni THK」を利用していただくことで、お客様が使いやすい形で我々の情報の共有化を促進していくことも可能となります。

 ─ その意味で、働き方もそうですし、人材の多様性も進んでいくことにもなりますか。

 寺町 私は社内で、例えば工場では、現場の作業者、オペレーターは自動化やロボットに置き換わると公言しています。しかし、技能工といわれる刃物を使って削る作業をする職人のような技能はもっと磨いていかなければならないと思っています。これまで職人から機械化へという流れがありましたが、これからは逆に職人が重要な時代になるのではないかと。

 そして職人だけでも駄目で、機械やラインをどう構成するかといった生産技術力を持ったエンジニアも必要です。この2種類が現場で必要な人達だと。ですから、現場の人達には、これらの技能、技術のいずれかを磨き上げていって欲しいと言っています。

 ─ こうなってくると、身につけた技術によって、人材は自ずと多様化してきますね。

 寺町 そうです。実力主義に近いといいますか、現場にどれだけ貢献できているかがより一層問われますし、その働きに見合った報酬体系も必要になってくるでしょう。大事なのは、お客様にどれだけお役に立てる付加価値を提供できるかです。

 ─ さらに知恵が問われる時代だということですね。

 寺町 ええ。当社の今の方針は、第1に世界でさらにビジネスを広げていく「グローバル展開」、第2に、新しい時代を迎えて、我々の製品の用途が広がっていますから「新規分野への展開」です。

 そして第3に掲げる「ビジネススタイルの変革」は、一つは先程お話したような「モノづくりサービス業」としてのビジネスで、お客様との接点を広げていくことです。もう一つは、社内で当然に「人」がやるべきことと、コンピュータやロボットがやるべきことを明確化し、自分達の今までのスタイルを変えていくことです。

 これらによって、会社を時代に合った形にどんどんチェンジをしていこうとしています。その中で「人」も変わっていかなくてはならないのです。