住友生命社長の新発想「生命保険を日常で楽しみながら使える商品に」

「生命保険日常で楽しみながら使えるものにしていきたい」──住友生命保険社長の高田幸徳氏はこう話す。同社が展開する健康増進型保険「バイタリティ」は発売から3年を経過したが、足元でも売れ続けている。それはコロナ禍で人々が健康の重要性を再認識したこととも関係していそうだ。生命保険をポジティブに日常で楽しみながら使える商品・サービスにしていきたいという高田氏が話す、これからの生命保険のあり方とは。

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コロナ禍で経営の「原点」に立ち戻る

 ─ コロナ禍は日本経済に大きな影響を与えました。生命保険会社として、コロナをどう認識し、対応してきましたか。

 高田 コロナ禍で生命保険の必要性や存在意義について強く考えさせられました。私は今年4月に社長に就任しましたが、当社の原点、パーパス(存在意義)とは何かということを、もう一度立ち戻って考えました。

 それはどんな環境にあってもお客様の不安に寄り添うことです。当社の経営理念『経営の要旨』の第1条に「社会公共の福祉に貢献することを期する」という一節がありますが、ここに立ち返ることが大切です。

 ─ 生命保険、特に営業職員チャネルは対面での営業を強みとしていますが、販売実績にはどう影響が出ましたか。

 高田 前年の上半期は緊急事態宣言が発出され、訪問活動を自粛するなど、新契約は落ち込みましたが、以降は徐々に回復し、主力である営業職員チャネルの今年上半期の新契約件数は前年対比で2倍近くの実績になっています。さらにビフォーコロナの一昨年対比でも、新契約は増加しています。

 ─ 業務のデジタル化は進んでいるわけですか。

 高田 はい。コロナ禍で、お客様接点のデジタル化がより加速しています。最初の提案からご加入までデジタルツールを活用し、非接触で完結できる体制を整えています。他方、ご加入にあたり、対面でのサポートをご希望されるお客様も多数いらっしゃるので、一人ひとりのニーズに合わせた対応をしていきたいと考えています。

 ─ 顧客の側も保険の必要性を認識したと言えますか。

 高田 そう思います。特に当社には、私が社長就任以前から推進役をしていた健康増進型保険「Vitality(バイタリティ)」がありますが、非常に人気を博しています。発売から3年を経過して足元の累計販売契約件数は約85万件となっています。

 バイタリティは、「運動や健康診断などの取組みをポイント化し評価する」という仕組みを通じて、リスクそのものを減らす健康プログラムです。アプリやウェアラブルデバイスなどを活用するので、発売当初はデジタルに馴染みのない方々に使っていただけるか不安な面もありましたが、今では多くの方に共感いただいており、この上半期の新契約件数は発売以来最高記録となりました。

 一般的に、保険商品の販売は2~3年で落ち着いてくるのですが、バイタリティは、ニーズを捉え、進化していく商品であり、お客様がお客様を呼ぶというバイタリティならではの特徴が功を奏しているのだと思います。

 ─ 加入者は若い層が多いのですか。

 高田 もちろん若年層向けにプロモートもしていますが、結果的に幅広い層にご加入いただいています。運動習慣がある方は免疫力が高く、病気を罹っても重症化リスクは低いというデータも出ており、多くの方がコロナ禍で健康増進の必要性を再認識されているのだと思い

ます。

 また、バイタリティには自宅でできる運動プログラムもあり、コロナ禍においては、こうした仕組みも多くの方に受け入れられたのだと思います。

 ─ 他社には真似ができない商品になっていると。

 高田 バイタリティは南アフリカのディスカバリー社が約20年前に開発し、現在は世界30カ国で展開していますが、取り扱うことができるのは1国1社のみで、日本では当社が独占販売しています。また、蓄積されたデータの活用など、非常にデジタライゼーションされた商品となっており、単純に真似しようと思っても難しいと思います。

 ─ 南アフリカの会社がなぜ、このような商品の開発を?

 高田 南アフリカは、今ではアフリカの中で最も金融、ITが発達した国ですが、かつては平均寿命が50歳程度でした。

 そこでディスカバリー社は金融、保険の力で国民の寿命を延ばそうという理念でバイタリティを開発しました。近年では、南アフリカの平均寿命は65歳と15年ほど延び、バイタリティ加入者においては、それよりもさらに長くなっています。

 日本は世界有数の長寿国ですが、健康寿命と平均寿命のギャップが男性で9年、女性で12年あります。

 こうした課題に対し、バイタリティをより多くのお客様に提供することを通じて健康寿命の延伸と健康長寿社会の実現に寄与していきたいと考えています。発売当初から、10年で500万件という目標を掲げて取り組んでいます。

 先行している他国での事例を見ると、販売件数が一定のラインを超えるとそこから認知が拡大し、加入者が加速度的に増えています。そのラインとして、まずは早期の100万件突破を目指していますが、今年度中には達成できるのではないかと見ています。

 ─ コロナ禍で健康への関心は非常に高まっていますね。

 高田 ただ、健康増進に自ら取り組む人は3割程度だと言われ、何かやらなければいけないと思っても始めるのはなかなか難しい。ですからちょっとしたインセンティブが必要です。

 バイタリティには、アクティブチャレンジと呼ばれる週間目標の達成に応じてコーヒーなどと交換可能なドリンクチケットがもらえるなど、小さなご褒美があり、それによって健康増進活動の習慣化を促しています。私や多くの職員も、ウェアラブルデバイスを身に付けて歩数や心拍数を計測し、スマホで管理し、ポイントを獲得しています。

 健康増進は、継続的に積み重ねることが大切ですが、バイタリティはデジタルも活用し、楽しみながら日々の健康増進活動を後押しする仕組みを提供しています。

(続きは『財界』2021年12月8日号で)