AIが人間を判断する時代に【人気エコノミストの提言】

2021年10月19日、ヤフーは同社のニュース配信サービス「ヤフーニュース」における、個人ユーザーが自由に感想などを書き込めるコメント欄で、誹謗中傷や差別に当たる違反投稿をAIが判定し、その数などの基準によってコメント欄を非表示にする新機能を導入したと発表した。

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 ついに人間のやることをAIが判断する時代が到来したと感じるニュースだ。

 数年前はよく経営者の方とAIに置き換わる仕事ランキングで冗談を言っていた。オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授とカール・フレイ博士の論文が、世界的なセンセーションを巻き起こした。

 経営者は時折そうした代替されやすいランキングに入っている。経営者の方に、「経営会議で座っているだけで何も決めないなら、AIのほうがきちんと仕事するし、判断も間違わない」と説明すると、だいたいの方はニヤニヤされ、「矢嶋さんは経営したことないから大変さがわからないんだ」と切り返された。

 そこまで言われれば私も言い返して、「経営者よりもランキングは下位で代替されにくい職業は世の中には沢山あります。経営なんて簡単なほうなんですよ」とカウンターパンチを打っていたものだ。今ではそんな冗談も通じないくらいAIはわれわれの生活のいたるところに入ってきている。

 インパクトのある技術は常にリスクとも隣り合わせだ。ノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルはダイナマイトで巨万の富を得た。ダイナマイトは鉱山の発掘など経済発展に大きな役割を果たしている。

 その一方で、使い方によっては戦争での大量殺戮兵器にもなる。どんなにすばらしい発明が生まれ、新しい技術が誕生しても、それを「どう使うのか」を判断するのは、やはり人間でしかない。数年後、進化のスピードが速いAIを本当に人間はコントロールできているのか。

 ヤフーのニュースではないが、すでにAIは人間の手に負えない時代が到来しているのかもしれない。車いすの天才物理学者として知られるイギリスの故・スティーブン・ホーキング博士が、AIについて「人類を滅ぼすことになるかもしれない」と警告したことはよく知られている。

 AIを内蔵したロボットが料理で包丁を使い、家事を手伝ってくれることは便利だが、その包丁を人に向けることは絶対にあってはならな

い。誰かが人に向けろというプログラムを作ったら、AIロボットはすぐ殺人機械になってしまう。

 哀しい一つの事実は、AIにとって最大のノイズは人間である、ということだ。その「ノイズ」である人間が、どうAIに倫理を叩き込むのか、そこがこれから問われることになる。ただし、その人間社会ではいまだ戦争、紛争は終息せず、それぞれのサイドがそれぞれの正義をかざす時代が続いている。