そのさとやまオフィス鯖江の完成発表会に招待された。東京から新幹線ひかり号で米原まで行き、そこから特急しらさぎに乗り継ぐ。3時間以上の道のり、乗り継ぎによっては4時間以上かかる道程だ。ただ、さとやまオフィス鯖江は駅から徒歩数分のところにあり、市内からならアプローチしやすい。

このさとやまオフィス鯖江を開設したのはメンバーズエッジという企業。ソーシャルメディアといったネットビジネスを手がけるメンバーズのグループ会社だ。メンバーズ自体は1995年創設だが、メンバーズエッジは2017年に設立された生まれたての企業。その企業が福井県鯖江に事業所を開設したというかたちだ。

  • 左:さとやまオフィス鯖江に掲げられたメンバーズエッジのロゴ。右:メンバーズエッジは社員39名のうち、34名がエンジニアという企業だ

事業所とはいっても大規模なものではない。廃業した旅館の一画を利用し、数人程度が働ける環境を作った。建物のなかには旅館だった頃の面影が残っており、ある意味、働き場所としては新鮮な雰囲気が感じられる。

会場に設置されたビデオ会議システム

では、なぜメンバーズエッジは鯖江市に事業所を設けたのか。いくつか理由はあるが、やはり働き方改革の一環としての側面が色濃いと思った。

前述したように、IT企業は都市圏に集中している。だが、ICTの発達は物理的な距離を縮め、リモートワークのような業態発展に寄与している。福井県鯖江市は、メンバーズエッジの本社がある東京都中央区晴海からかなり遠いが、ICTの活用で本社とのコミュニケーションに問題はない。

都市圏以外の働き場所を

一方で、都市圏以外の地域に働き場所を求めるビジネスパーソンも増えている。だが、地方は都市圏ほど仕事がなく、収入が低くなる傾向にある。そうした傾向をなくすというのが今回の鯖江オフィス開設の大きな理由だろう。

実際に、さとやまオフィス鯖江に勤めるのは現在のところ一人だが、東京生まれ東京育ちのウェブエンジニアだ。都内の大手企業で働いた際、毎日の満員電車による疲弊、マンネリ化した仕事内容に辟易し、鯖江での仕事を選んだという。しかも、収入は都内で働いていたときと変わらないらしい。そして、地方の物価は都市圏より低いことを考えれば、十分に納得できる。何よりも満員電車とは無縁だ。もっとも、オフィス鯖江の至近に住居をかまえており、出勤は徒歩わずか30秒ほどということだから、電車どころか自転車も不要だろう。現在、一人だが、彼のウワサを聞いて移住したいという人も増えるかもしれない。メンバーズエッジでは早期に20名体制を目指すとしている。