ソニーは4月より、代表執行役 副社長 兼 CFOの吉田憲一郎氏が社長に就任する人事を発表した。同社は、3年ごとに中期経営計画を策定しているが今年はその最終年。3年前に設定した目標を大きく上回り、営業利益が20年ぶりに過去最高を達する見込みであることから、平井氏としても次へバトンタッチする気になったようだ。

これまで、ソニーは「再建」のためにパソコン「VAIO」事業の売却や、テレビ事業の分社化など、組織体制にメスを入れてきた。肝心のエレクトロニクス事業においては、デジカメやテレビを高付加価値モデルへシフトして収益性が高まった。

半導体部門では、スマートフォン向けのイメージセンサーが絶好調。ゲームもPS4本体のプロモーションが成功して計画以上によく売れたうえ、サブスクリプションサービスが収益面で大きな役割を果たしている。音楽事業もストリーミング配信の売上げが伸び、映画事業では「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」が大ヒット。安定した収益貢献を続けている金融事業も、ソニー生命が増収を果たしている。

為替の好影響という側面もあるが、数年前のソニーと比べれば、まさに追い風が吹いていると言えるだろう。今年1月には、イヌ型ロボット「aibo」を12年ぶりに販売。まさに、aiboはソニー復活の象徴とも言える存在だ。

  • 好調な業績も背景に、新規開発された新生aibo

そんな死角なしに見えるソニーでも、唯一冴えないのがモバイル・コミュニケーション事業だ。

売上高を下方修正、販売台数見込みも減少

モバイル事業は昨年10月時点で通期7800億円の売上げ予想であったものが、2月時点で7400億円、実に400億円もの下方修正を余儀なくされている。

主な理由は、スマートフォン販売台数の減少。昨年10月には年間1550万台の販売を見込んでいたが、2月時点では1400万台に下方修正している。年間で黒字を見込むが、それも50億円程度しかなく、他の事業に比べれば、ソニーにとってモバイルは「お荷物」のようにも見えてくる。

実際のところ、ソニー「Xperia」が強いはずの日本国内市場でも、大きな異変が昨年あった。BCNが発表した2017年第3四半期(7〜10月)のAndoridスマホのメーカー別販売台数シェアにおいて、それまでトップシェアであったXperiaがついに陥落。シャープがトップシェアに躍り出たのだった。

昨年、シャープは3キャリア向けにそれぞれ別の名前で納入していたAQUOSシリーズを「AQUOS R」というメーカーブランドに統一。この戦略が功を奏したのは明らかだ。さらにシャープは、キャリア向けのみならず、MVNOなどのSIMフリースマホも積極的に展開。11月からは「AQUOS sense」を販売している。

AQUOS senseを各キャリアへ、そしてSIMフリー版も用意したシャープ

NTTドコモの「docomo with」は通信料から毎月1500円が割り引かれる施策だが、AQUOS senseはこれに向けた製品としてかなり売れそうだ。また、auでも端末割引しない代わりに、通信料金が安くなる「ピタットプラン」が好調。安価な端末がユーザーに好まれる傾向が強まるなか、相性のいい端末として期待されている。

さらに、AQUOS senseはキャリアに加えて数多くのMVNOへ納入している。シャープが上手いのは、AQUOS RやAQUOS R compactといったハイエンドやコンパクトモデルを投入しつつ、格安スマホ市場向けにも安価なモデルも揃えてきたという点だ。

一方、ソニーは4Kディスプレイを積んだ「Xperia XZ Premium」やハイエンドモデルの「Xperia XZ1」、ハイエンドコンパクトの「Xperia XZ1 Compact」といったプレミアム製品しか存在しない。

これは、ソニー全体として「安売りで販売台数を稼ぐ」といった考えから距離を置き、「高付加価値なプレミアムモデル」で勝負する路線を貫いた結果から来ているのだ。今後、日本で格安スマホ市場が拡大していけば行くほど、プレミアム路線のソニーの販売台数シェアは下降の一途をたどっていくことだろう。