これは「キャンピングオフィス」という、スノーピークビジネスソリューションが提供する取り組み。スノーピークといえば、キャンプ用品の老舗で、アウトドア愛好家から絶大な支持を得ているメーカーだ。そのスノーピークが、ビジネスとアウトドアを掛け合わせた取り組みが、このキャンピングオフィスというわけだ。

当日、テント内やタープ下でミーティングをしていた企業は、NEC、富士通、三菱総合研究所など。お話しをうかがったところ、アウトドアでのミーティングは、なかなか面白いものだなと感じた。

ある企業の担当者は、「開放感があるので、普段は思い浮かばないようなアイデアが思いつく」と話した。また、ほかの企業の担当者は「いつもは発言しないスタッフが、かなり饒舌になっていた」と笑みをこぼした。あきらかに、普段のミーティングルームや会議室とは違う効果が生まれたようだ。

多摩川流域にいかに価値を創造するか

左から東急電鉄 太田雅文氏、スノーピークビジネスソリューション 村瀬亮氏、川崎市長 三浦淳氏

今回のイベントの主催企業のひとつ、東急電鉄 都市創造本部 開発事業部 副事業部長 太田雅文氏は、「企業が都市部に集中しているが、この多摩川のような少し郊外で働く人を増やす必要がある」と、山手線内に集中している企業の立地に対して提言している。二子玉川を本社の拠点にしている楽天を例に、そのメリットを語った。また、「鉄道会社にとって、輸送での売り上げは18%ほど。輸送だけではなく、地域の価値をいかに事業に結びつけるかが大切」と語る。ちなみに、JRは約80%が鉄道の売り上げだそうだ。首都圏の私鉄が鉄道以外の売り上げを模索する理由が、この数字からもみえてくる。

また、流域の川崎市 副市長 三浦淳氏は、「多摩川流域にはキヤノン本社や富士通、NECの事業所がある。クリエイティブ・イノベーションを生み出しやすい人材が集まるところなので、これをいかに生かすかが大事」と、流域の重要性を強調した。

スノーピークビジネスソリューション 代表取締役 村瀬亮氏は、「公民館やオフィスではない自然の中でのワークは、通常味わえないワクワク感が得られる。働き方改革という意味でも、この取り組みを推進していきたい」と、キャンピングオフィスの意義を語る。

確かにそうだろう。冒頭で述べたとおり、当日は小春日和といえる絶好の天気。トンビの甲高い声や群れで飛ぶ野鳥を視野に入れながら、打ち合わせができるのだ。こうした光景はオフィスビルの中では絶対に味わえない。普段は出てこないアイデアや意見も出やすくなるというものだ。

群れで飛ぶ野鳥。橋の向こうには二子玉川ライズと楽天本社がみえた

通信に関しても多摩川周辺であれば、問題なくつながる。年に数回、こうした自然環境の中で仕事をするのも悪くないなと、素直に思った。ただ、これからの季節は寒風が吹きすさぶ時期。もし、筆者が勤める会社でこの取り組みを行うなら、来年のゴールデンウィーク前後がいいなというのが、正直な要望だ。