iPhoneを成立させる3つのキーワード

2007年1月にサンフランシスコでiPhoneを発表した当時、共同創業者でCEOだったスティーブ·ジョブズ氏は、「2年間、このときを心待ちにしていた」と、これから企業そのものを大きく変化させる製品に費やしてきた時間を振り返っていた。そして、「電話を再発明する」という言葉とともに、iPhoneを発表した。

ジョブズ氏はiPhone発表のプレゼンテーションは、非常にロジカルなものだった。それは、ソフトウェアとハードウェアが密接に連携するアップル製品ならではの手法の強みを強調することに他ならない。

ジョブズ氏は、「革新的なデバイスには、革新的なユーザーインターフェイスが必要だ」と説いた。Macintoshには画面内を操作できるマウス、iPodには選曲や音楽コントロールを指先だけで行えるクリックホイール、そしてiPhoneにはマルチタッチディスプレイが、それぞれ備わると説明する。

加えて、ソフトウェアについては、アラン·ケイ氏の言葉を引用し、「ソフトウェアにこだわるなら、そのためのハードウェアを作るべきだ」と指摘した。こちらも、現在に至るまで、アップルが実直に取り組んでおり、iPhoneの機能や速度を高めるため、A10 Fusionなどの半導体まで設計するようになった。

そしてもう1つのキーワードは、「デスクトップクラス」だ。iPhoneを紹介する際、スマートフォンのソフトウェアは本物ではなく、当時のインターネット接続も本当の体験やアプリではない、と説明した。パソコンと同じレベルのことを、スマートフォンで実現する、そんなアップルの取り組み方が、当時の日本を含む世界のモバイル市場の中で、異質なものだった。

iPhoneによる成長も、ハードとソフトで

アップルは2007年に米国でiPhoneを発売し、最初の四半期となる2007年は27万台を販売した。第3四半期翌年2008年には、日本を含む先進国で、第3世代通信をサポートするiPhone 3Gの販売をスタートし、2008年第4四半期は680万台へとその販売台数を大きく伸ばした。

iPhone 3G。初代iPhoneは日本では未発売

2010年の第4四半期に1410万台を販売し、四半期で1000万代の大台を突破すると、その後、画面サイズを4インチに拡大したiPhone 5、さらに拡大し4.7インチと5.5インチとしたiPhone 6と、画面拡大ごとに販売台数を倍増させ、2017年第1四半期は7829万台のiPhoneを販売した。

iPhone 6発売以降、アップルの売上に占めるiPhoneの割合は65%~70%へと急拡大しており、平均販売価格も高まっていることから、アップルの収益がiPhoneによって急拡大し、その後、堅調に成長するサイクルに入ったことがわかる。

また、iPhoneユーザー向けのApp StoreやApple Musicといったサービス部門の成長は特にここ数年著しく、四半期に70億ドル以上と、すでにMacやiPadの売上を追い越す、アップル第2のビジネスとなった。今後iPhoneの販売台数が頭打ちするとしても、サービス部門の成長は続いていくことになり、季節変動の少ない安定的な収益をもたらすことになる。