これが姫路城修理見学施設、愛称「天空の白鷺」(※名称は一般公募により決定)プロジェクトの始まりである。5社による競合コンペが行われた結果、空間創造事業と空間活性化事業を展開する乃村工藝社が内装や展示を担当することに。同社は年間7000件以上プロジェクトを遂行しているディスプレイデザイン会社である。

姫路城修理見学施設「天空の白鷺」

修理見学施設のアートディレクションを手がけた乃村工藝社のデザイナー・奥田龍一氏が提案したコンセプトは「職人の技を伝え、継承すること」。

修理見学施設のアートディレクションを手がけたデザイナーの奥田龍一氏

まず奥田がこだわったのが、修理中の外観だ。城郭を覆う高さ53mのメッシュシートに、実物大の姫路城の線画が描かれた。

「素屋根に描かれた実物大の城の線画は、50年前の大修理の設計図をもとに、工事用メッシュシート約800枚にインクジェット出力したもの。改修中、シートにすっぽり覆われてしまった姫路城を少しでも感じてもらう演出をしました」

春井氏も「乃村工藝社さんのプレゼンは、我々が最も重視していた“外観を楽しむ”というコンセプトに合致したのです」と選定理由を述懐する。

しかし、こだわりは外観だけに留まらない。