「信賞必罰」の人事制度の中身

そして、もうひとつ、鴻海流として見逃せないのが、戴社長が掲げる「信賞必罰」の人事制度だ。

戴社長が、「普遍な経営ポリシー」とするこの制度は、「成果をあげた人にしっかりと報いる」のが基本方針。さらに、「優秀な人材や若手人材の活躍を後押しする仕組みへと改革し、年齢構成を是正する」という考えを打ち出す。

新たに発表した信賞必罰をベースにした賞与改革では、2017年度の賞与として、年間4カ月分を原資に設定。業績貢献に応じて、最大8カ月から最低1カ月で分配。8倍の格差をつけたメリハリがある賞与を支給する。まさに、「成果をあげた人にしっかりと報いる」制度だ。

さらに、特別な貢献が認められる社員には、社長特別賞を支給。「1、2万円程度のレベルのものではない。もらってびっくりする額」(戴社長)とする。

3月24日には、2回目となる社長特別賞を支給する予定であり、「約500人が対象になる」という。つまり、500人の社員にびっくりするほどの金額が支払われることになる。

そして、「入社まもない新入社員にも、やりがいがある仕事に挑戦する機会を提供し、優秀者には入社半年後でも大幅な給与引き上げを行う」とし、能力と責任、貢献次第では、5万円も昇給する場合があるという。

成果をあげていない人、そして年齢を重ねた社員には、厳しい人事制度であるが、戴社長は、意に介さない。

「去っていく人はかまわない。いまの経営陣と一緒にやりたいと思う人が残ればいい。シャープには白髪まじりの人が多かったが、シャープの平均年齢を45~46歳程度に是正したい」と述べた。

さらに採用戦略として、通年採用や第2新卒の採用を拡大。2018年4月の採用者は、2017年4月に比べて倍増を計画しているという。加えて、「シャープは3年間に渡って、研修を行ってこなかった。これからは細かくやっていきたい」と述べた。

IoTの企業を目指す

一方で、シャープそのものの変革にも言及する。

「これまでのシャープは家電メーカー。私は、シャープをIoTの企業にしたいと考えている」とし、「目指しているのは、『人に寄り添うIoT企業』。この実現は私の使命である」とコメントする。

「日本のすべての電機メーカーが、家電メーカーと呼ばれることが似合わなくなっている。シャープも、これからは、IoTの企業に転換しなくてはならない」とし、「人に寄り添うというのは、我々が市場に送り出す製品が、人がすぐに使え、より緊密な関係を持ちたいという意味がある」と位置づけ、「IoTのビジネスは、中核になるのは家電だが、それだけでビジネスをするのではなく、エコシステムとしてビジネスを捉えたい。ソフトウェア、コンテンツ、AI、ビッグデータなどを組み合わせたエコシステムによって、新たなビジネスモデルを作り上げたい」と語る。

しかし、その推進役を果たす拠点は中国に置く。

「日本の市場は、IoTでは遅れている。日本はITの活用においては先進国ではないということを認識しなくてはいけない」とし、中国・深センに商品開発センターを新設。この拠点を核にした取り組みを進める考えだ。

「IoTを原動力とし、スマートホーム、スマートオフィス、スマートファクトリー、スマートシティを対象にビジネスを成長させる。ここでは、鴻海との連携が重要になる」とし、「商品開発ばかりのビジネスモデルから転換し、事業という観点から全体のビジネスを考え、会社の将来、事業の将来までを考えるビジネスモデルにしていく」というのが、今後のシャープの姿と位置づける。