AIが回答することが満足度の向上につながる?

人工知能を使い自然言語で応対するサービスは現在急速に立ち上がりつつあるが、その大半はサポートセンターのチャットbot(自動返信プログラム)など、比較的短いセンテンスのやり取りで対話し、ひとつの質問に対して明確な正解が存在するものが中心だ。

これに対し、ユーザーのQ&Aコーナーというのは、一度に投稿される文章が長く、必ずしも起承転結や目的がはっきりしないことも多い。ひとつの質問に対して多くの答えが寄せられるように、問題に対する正解が1つだけ求められるという性格のものでもない。むしろ、質問者は多くの回答から自分が納得できるものを求めている感もあり、サービスに求められるのは「素早く、できるだけ多いレスポンス」ということになる。

恋愛相談という「重い」質問に対して人工知能が回答することに対する倫理的な面での疑問もあったのだが、前述したような観点からは、AIによる自動返信であっても、それはユーザーにとってはサービスの拡充としか映らないのではないだろうか。相手が人であるかAIであるかよりも、自分が納得できる回答が得られるほうが満足度は高くなるだろう。また、回答が「共感」からスタートして相手に受け入れやすくしているというストーリー仕立てになっているのも、受け取る側のユーザーとしては心理的な障壁を下げる効果になっているように思う。

こうしたQ&Aサービスはポータルサイトでも人気コンテンツの一つだが、一方で素人同士の回答になるため、回答の質の低下という問題が常に付きまとう。その点、ディープラーニングで良質な回答を学習し、その中から近い回答を抜き出して応えてくれる「オシエル」のAIは、常時一定水準の回答を素早く提供できるという点で、ユーザーの満足度を高めてくれることになる。gooでは今後、恋愛相談以外の分野のQ&AにもAI回答の対象を拡張するという。具体的には旅行や子育て、介護といった分野が挙げられていた。

将来的には回答傾向そのものをパーソナライズし、性別や年齢層などに合わせた回答もできるようになる見込み

goo以外のポータルサービスでも、今後はQ&AコーナーでのAI活用が、ユーザー満足度を効率良く高める上で必須となっていくだろう。また逆に、AIが浸透することで、人間による生の意見に対する価値が高まることも予想される。全体としてはコミュニティの質向上に対してプラスに働くことが期待できるだろう。