1年以上勤務の社員を対象に、会社の承認を得て1日5時間以上で時短勤務とすることができるというもの。男女問わず、子どもの年齢に関係なく、介護のためであっても、話し合いの上、適用される制度だ。

社員の働き方にあわせて制度を作る

「この会社は上司との個人面談を週1でやっています」。そういった機会を増やすことで、働き方についての相談もしやすいのだという。小回りが利くベンチャーならでは発想といえよう。

企業の女性登用の実情に詳しい松蔭大学の田中聖華准教授は、「ワークライフバランス達成への取り組みがうまくいっているところは、実は新しい会社に多いのです。優秀な人材確保のために働く人に合わせて制度を作っているから。既存の会社にはそれがしにくい。今までの制度があり、その多くのものが基盤である人事制度の修正や変更にまで関わるため、スピード感をもって対応しにくい」と指摘する。

彼女の正社員登用によって、企業が従業員の実態に気づき、変化をもたらした同社だが、若い人が多いベンチャーにおいて、このようにキャリアを積んだ女性の視点への期待は高まっているのだという。

「時短エグゼ」のHP

「時短エグゼ」を運営するビースタイルの広報担当者によると、社員にとっておかあさんのような存在であり、キャリアがあるためトップとも対等に話せる、そしてそういった女性自身の働き方への相談などが企業内の潤滑油になるのだという。それがまさに田中さんのような例だ。

事実、田中さんが利用したビースタイルの「時短エグゼ」は中小ベンチャー企業の利用が増加しており、2014年6月からの1年間と、2015年6月からの1年間を比較したところ、約30%もベンチャーの顧客数が増加しているという。さらに「時短エグゼ」自体の業績についても右肩上がりになっている。

ベンチャーで働くメリットは、「融通が利くこと」。自分には合っているという田中さん。しかしどんなタイプの女性でも合うものではない。「デメリットは代わりがいないことですね。時には持ち帰り仕事をすることもある。ここまでやろうとか、これ以上は難しいとか自分でコントロールして、周りに伝えることが大事」。さらに、「権利主張だけでなく、まずは企業の利益に貢献することに全力を尽くすことが大切」と語った。