「点」から「面」へは実現できるか

「上野公園周辺の各機関・団体が相互に連携・協力することによって、それぞれが保有する文化芸術資源の潜在価値をより顕在化させ、その資源を有効活用するとともに相乗効果を増大させるべく、上野公園を中心とした区域を国際的な文化の中心・シンボルとしていく」といった内容が「上野『文化の杜』新構想」の最終版には書かれている。要するに「点」から「面」へ。それまで個々で取り組んできたイベントやサービスを連携して行い、相乗効果を高め、国際的な文化の中心にしましょう、ということだ。具体的な構想については、上野公園周辺の文化機関や、行政、JRなどが名を連ねる民間団体「上野『文化の杜』新構想実行委員会」が実現に向けて動き始めている。

バスにも世界遺産登録の文字が。

実行委員会は昨年9月に立ち上がった。構想実現に向けた取り組みは始まったばかりだが、「手がつけられそうなところから始めています」と関係者は口をそろえる。そして実行委員会立ち上げからおよそ半年後、今年3月には、各施設が連携して「上野『文化の杜』アーツフェスタ・2016春」を初めて開催。フタを開けてみると各文化施設、地域の学校などとの連携については「横断の企画などはまだまだ時間がなかった」(実行委員会関係者)と課題が見えたそうだが、解決策も見えてきたという。秋に第二弾を行うが、連携強化に向けて改善を図るという。

そのほかには2000円の「共通入場券」を発行。これまでに5000人が購入しているが、国立西洋美術館が世界遺産に登録されたあかつきには、この券の表紙やスタンプラリーのグッズを国立西洋美術館仕様にして、盛り上げていきたいという。また、5月18日には「東京国立博物館」「国立科学博物館」「国立西洋美術館」「東京都美術館」「台東区立下町風俗資料館」の各施設で、常設展などを無料開放した。夏に向けては、今まで金曜日のみ午後8時くらいまで延長して展示を開催していたのを、曜日をさらに増やすことを検討しているという。

将来的に実現できたら利便性が高まる検討課題

博物館・美術館については、休館日を原則月曜日としているが、休館日をローテーションにすることや、展覧会の開催時間の夜間延長のさらなる拡充を検討している。さらに、広い園内の移動については、無料貸出自転車、カート、人力車サービスの利用といったことが検討課題として挙げられている。これらはまだまだ先の話になりそうだが、ますます利用しやすく魅力的な公園になりそうだ。

国際的な認知度アップへの寄与が期待される世界遺産登録

こういった様々な課題の中で国立西洋美術館の世界遺産登録については、登録によって上野の国際的認知度が高まり、さらなる集客効果が期待されている。そのために地元の協議会ともども登録に向けて協力体制ができており、イコモスの勧告においてもその点は高評価されている。

目標は2020年末に来訪者数3000万人

2014年度台東区観光統計・マーケティング調査によると、2014年の上野公園の平常時の観光客数は1253万人であり、イベントでの来訪者数を足すと1503万人になる。さらに、アメ横、谷中地区の観光客を含めれば2000万人を超えることが推測されている。その上で、周辺との連携や外国人観光客によって年間来訪者数3000万人という数字は実現できると政府はみている。走り始めたばかりのこの構想だが、マネジメント体制の構築などが急がれる。