低価格帯を巡るキャリア同士の“代理戦争”が熾烈に

従来であれば、キャリアもそうしたユーザーを繋ぎ止めるための施策に積極的に動いていたかもしれない。だが現在、キャリアは客単価を上げることを重視しているため、シンプルに低価格を求める人達が増えることは逆に減収要因へとつながることから、無理にキャリア内にとどめようとしなくなってきている。ドコモが2年縛りの緩和に関連して、新たに「フリープラン」を提供することで、2年経過後は自由に解約できる仕組みを用意したのも、そうしたキャリア側の考えを象徴しているだろう。

その代わりの受け皿として、キャリアが活用しようとしているのがMVNOである。低価格を求めるユーザーを自社にとどめることはリスク要因となるが、自社回線を用いたMVNOに流出させれば、接続料などで無理なく収益を得ることができる。加えて、ドコモのように自社サービスをMVNO経由で提供すれば、他キャリアにユーザーを流出させることなく、自社の回線とサービス利用を維持させることにもつながる。

それだけに今後は、キャリアから流出した低価格を求めるユーザーを、どのキャリアの回線を用いたMVNOが獲得するかという競争が加速すると考えられる。ドコモは多くのMVNOが同社の回線を用いているため、それらを活用した施策を打ってくるだろうし、KDDIであればUQコミュニケーションズが、KDDIのMVNOとして展開している「UQ mobile」を積極活用するものと見られる。

「LINEモバイル」などドコモの回線を用いたMVNOは現在も増えている。ドコモはこうしたMVNOを、低価格を求めるユーザーの受け皿として考えているようだ

またソフトバンクは、純粋なMVNOではないが、サブブランドとして展開している「ワイモバイル」で低価格の料金プランを提供している。最近では「iPhone 5s」を販売するなど、端末のバリエーションを増やして攻めの姿勢をとり、低価格を求めるユーザーに積極的な訴求を進めているようだ。

ソフトバンクは高付加価値を求めるユーザーをソフトバンクブランドで、低価格を求めるユーザーをワイモバイルブランドで獲得する方針を示している

今後、高付加価値を提供する大手キャリア同士の直接競争は、見た目上停滞すると見られている。だが一方で、各キャリアがMVNOやサブブランドに力を入れることでよって、低価格層を巡るキャリアの"代理戦争"が激化すると考えられる。それだけに今年は、低価格層向け戦略がキャリアの勢いを大きく左右することとなりそうだ。