福徳神社の鳥居からオフィスビルを見上げる。日本橋には“伝統”と“新興”が同居している

東京・日本橋。諸説あるが、徳川家康による江戸開闢(かいびゃく)の際、“日本中”の大名が集められ、その労力により街道を整備し橋を架けたことから「日本橋」と名付けられたといわれている。東海道五十三次の起点として知られ、小判を鋳造した「金座」(現・日本銀行)があった場所としても有名。現在も三越デパートのお膝元であり、江戸時代から続く商店が並び、賑わいをみせている。そんな古くから東京の流通・経済の中心地として栄えてきたこの地区が、新たなビジネスを生む場ともなっている。三井不動産がベンチャー支援に加えて、企業同士のオープンイノベーション空間として運営する「Clipニホンバシ」がその現場だ。

ベンチャー育成に乗り出す三井不動産

Clipニホンバシは、日本橋地区に設けられた“コワーキングスペース”の名称。三井不動産が新産業創業に向け推進している「31VENTURES」の一施策だ。この31VENTURESには東京・霞が関や千葉県・柏市などにもベンチャー向け専有オフィスやコワーキングスペースが用意されているが、これらには数名~十数名規模のベンチャー企業が入居できるオフィスも併設されている。一方、Clipニホンバシは、個人起業家を対象にした施設がメイン。Clipニホンバシを訪れてみると、その個人の起業家たちの熱気であふれている。

三井不動産 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事 光村圭一郎氏

日本橋というと「日本橋三井タワー」や「コレド日本橋」といった最新のオフィスタワー、ショッピングセンターが並ぶ地域。個人起業家が事業の拠点にするには少々ハードルが高いのではないかと思ってしまう。だが、Clipニホンバシの立ち上げに携わった三井不動産 ベンチャー共創事業部 光村圭一郎氏は、そんな筆者の感想に対し「日本橋だからこそ独特のアイデアが生まれ、活発な事業になるのだと思います」と話す。

日本橋は最新オフィスやショッピングセンターが連なる一方、江戸時代からの老舗店舗も数多く残っている。多種多様な業態の企業・店舗が集まる街だからこそ、新たなアイデアが生まれやすいというワケだ。