海外勢はPMとロボットの融合に本腰

日本勢がPMの公道走行解禁を待っている間に、米国のセグウェイ(SEGWAY, INC.)はPMとロボットの融合に本腰を入れ始めた。この動きを後押しするのは、中国の小米科技(シャオミ)と米国のインテルだ。

2001年のセグウェイ発表以来、米セグウェイは何度か買収されている。現在の親会社は、自身も立ち乗りタイプのPMを手掛ける中国のナインボットという企業だ。ナインボットはセグウェイのようにハンドルを握って乗る二輪PMのほか、ハンドルが乗り手の膝あたりにくる小型PM「ナインボット・ミニ」を展開している。ナインボットによるセグウェイ買収劇には、資金を提供する形でシャオミが絡んでいる。ナインボットは買収当初、自社製品とセグウェイを別ブランドで展開するとしていたが、今年に入り両社のブランド統合を発表した。セグウェイブランドに自社製品群を組み込むことで、PM市場の席巻を狙う意図が見てとれる。

乗り物モード(写真左)からロボットモード(中央)に変形!

ナインボットは今年1月、米国のネバダ州ラスベガスで開催されたCES 2016の会場においてロボット事業への参入を大々的に表明した。セグウェイブランドの実績と信頼性を前面に押し出し、「セグウェイ・ロボティクス」と名付けた新事業には、シャオミとインテルが参画を表明している。インテルCEOのブライアン・クルザニッチ氏は、CES 2016の基調講演にナインボット・ミニのような乗り物に乗って登場。その乗り物は講演の後半に再び姿を現すと、壇上で「ロボット・モード」に変形して見せた。ロボット・モードの乗り物は壇上を動き回り、目の部分に搭載したカメラで映像を写すなどのデモを行った。

PMとロボットの融合というイノベーションは一見すると単純だが、シャオミとインテルが絡んでいる以上、海外勢が同事業に商機を見出しているのは明らかだ。インテルはロボット事業への取り組みを後押しすべく、ナインボットに対して融資も行っている模様。日本のPM市場が早い時期に成熟していれば、このようなイノベーションを日本企業が世に問うていた可能性もあったかもしれない。

イノベーションが日本で起こる可能性は?

セグウェイの販売台数をみると、世界累計の約10万台に対し、日本での実績は3,000台程度にとどまる。規制のある日本で販売台数が伸びないのは仕方がないにしても、乗り物を売るだけのビジネスと捉えた場合、世界で10万台という数字も決して多くはない。しかし、セグウェイが市場に出回っている地域では、セグウェイを用いたサービスが市民権を得つつあり、セグウェイを核とするイノベーションが起こりつつあるのが現状。公道走行が可能になったとしても、日本でPMが流行るかどうかは未知数だが、PMを用いた新規事業や、PM関連のイノベーションが日本で起こるとすれば、その前提条件となるのが公道走行に関する法整備だといえるだろう。

公道走行に関する規制緩和を見据えて、日本の自動車メーカーもPMの開発を進めている。後編では、トヨタとホンダによるPM事業への取り組みを見ていく。両社に共通するキーワードは、「PMと人間の調和」。PMとロボットの融合に商機を見出し、PMの新たな可能性に本気で取り組み始める海外勢も出現するなか、日本勢も遅れをとってはいられない状況だ。