鹿島は24日、ソレキアおよび東京特殊電線(TOTOKU)と共同で、ICタグによる重機への作業員接近警告システム「SADIC(System to Alert worker Detection with IC tag)」を開発したと発表した。

同システムは、作業員のヘルメットに装着したICタグが発信する信号をブルドーザーやバックホウなどの建設重機に取り付けたレシーバが検知し、重機周りの危険区域への作業員侵入をオペレータに知らせ、接触事故を未然に防止するもの。

SADICのイメージ

2007年5月から開始した、岩手県における国土交通省東北地方整備局 胆沢ダム堤体盛立工事現場での試験運用を通じて有効性を確認できたため、今年4月から同現場で新たに12台の重機に展開し、本格運用を開始したという。今後は各現場にSADICを導入し、作業員と重機の接触事故ゼロを目指していく方針だ。

全国の土木工事現場における死亡災害の中で建設機械が原因となる事故は墜落と並んで多く、2006年度の統計では全体の約2割を占めるという。鹿島は同種の事故を未然に防止するために安全教育等を実施しているが、ヒューマンエラーを完全に無くすことは困難という事情が、SADICの開発/実用化の背景にある。

SADICは、TOTOKUが開発したアクティブ型無線ICタグシステム「MEGRAS(メグラス)」を使用する。ICタグを作業員のヘルメットに装着し、アンテナ/レシーバ/警報機等を重機に設置する。作業員が重機に接近するとICタグが発信する信号をレシーバが検知し警報機を作動させ、重機オペレータに作業員接近を知らせる。検知距離は10m程度で、状況に応じて調節可能。重機の特性に応じたアンテナ機器の開発により重機全周の死角を減じた。

原則としてヘルメットに装着するICタグは小型軽量のため、作業の邪魔にならないという。必要な保守管理はICタグの電池交換(ボタン型の汎用電池を使用)だけであり、10カ月程度は交換不要。重機に設置するアンテナは多少泥が付いてもシステムに影響しないとしている。作業員を個別認識できるICタグの特長を活かし、入退出管理等のシステムとの併用も可能だ。

SADICの適用例

超音波等を利用する同様のシステムは従来から存在したが、鹿島によるとICタグを使用するシステムの実用化は日本初という。

今後はシステムの導入現場を順次増やし、さまざまな重機に展開することで、低コスト化および検知精度の向上を目指していくという。SADICの製品化により鹿島の現場に加え全国の工事現場に普及・展開し、作業員と重機の接触事故低減に貢献したいとしている。