RPAの導入費用はいくらかかる?費用を決める6つの要素と抑えるコツを解説

RPAツール

RPAは、定型業務を自動化することで生産性を向上するためのツールです。労働力不足の切り札として注目を集めていますが、導入費用の見積もりは、業務をどこまで自動化するのかなどの検討要素が多く複雑です。この記事では、RPAの機能を整理した後、導入費用を決める要素や導入費用を抑えるコツなどについて解説します。

RPAとは

RPA(Robotic Process Automation)とは、主にホワイトカラーの定型作業・デスクワークを自動化・代行するツールです。実際に自動化・代行処理を行うプログラムのことを「ソフトウェアロボット」「デジタルワーカー」「デジタルレイバー」とも呼びます。

1、RPAの種類

RPAの種類は、class1からclass3までの3段階あります。段階別にどのような業務に対応するのかを確認しましょう。

段階 名称 対応業務
class1 RPA 定型業務の自動化
複数システムの連携を必要とする単純作業
class2 EPA Enhanced Process Automationの略
データの収集・分析
class3 CA Cognitive Automationの略
プロセスの分析、改善や意思決定を自動化

一般的にRPAと言えば、class1の段階を指します。定型業務の自動化を行い、他システムとの連携も含みます。例えば、売上データを販売管理システムに連携しやすい形に加工して渡し、返ってきたデータを、また加工してBIツールに渡す、という業務は、class1向きです。

class2は、データの収集と分析までを自動化します。売上データを収集・分析しての売上予測や、適正在庫量の算出などは、class2のEPAで自動化するのに向いている業務です。

class3は、自律的な判断力を搭載している点が大きな特徴で、もっとも複雑な業務を自動化できます。業務プロセスの分析や収集データからシミュレーションを行い、プロセスの改善や意思決定を自動で行います。

ビッグデータの整理を行ってからのデータ分析、分析結果から改善案を導き出して実行、といった高度な処理の自動化も可能です。

2、RPAの提供形態

RPAの提供形態は、クラウド型とオンプレミス型の2種類に分かれます。クラウド型は、クラウド上に構築されたサービスを利用するタイプです。オンプレミス型は、社内ネットワーク上のマシンにインストールするタイプです。

オンプレミス型はさらに、サーバーマシンにインストールしてクライアント端末から利用するサーバー型と、パソコンにインストールしてそのまま使うデスクトップ型があります。

RPAを活用するメリット5つ

RPAの基本について整理しましたが、RPAを活用するメリットには何があるでしょうか。メリットを以下の5点にまとめました。

1、業務スピードの向上

RPAで単純作業を自動化すると、業務スピードの向上につながります。例えば、データベースから特定のデータを自動で抜き出して特定のフォーマットに加工して集計する、という業務が手作業で2日かかっていたとしましょう。

この作業をRPAで自動化することで、ほんの10分で終わってしまう場合もあります。この集計業務が毎月2回発生する場合、1年間で2日×2回×12ヶ月=48日間分の作業が4時間、たった半日分の作業に効率化できる計算です。

RPAの自動化プログラムを作成するのに工数はかかりますが、ひんぱんに発生する業務なら、その恩恵は非常に大きくなります。

2、人的ミスの削減

RPAで単純作業を自動化することで、人の手を介する作業がなくなり、結果として人的ミスを削減できます。簡単な作業だと、ついつい自動化するよりそのまま手作業に頼る人もいますが、手作業があるとミスはゼロにできません。

作業量が多く単純だと、集中力が続かず、ミスが発生しやすくなることもあるでしょう。ミスが紛れ込んだまま誤った結果を利用して大きなトラブルに発展すると、リカバリーの工数はかなり大きくなります。

このようにRPAによる業務自動化は、人的ミスの削減とともに不具合を修正する工数の削減効果もあるのです。

3、売上の最大化

RPAの導入によって生産性が向上すると、その分の時間を本業に振り向けることができ、結果として売上の最大化を目指せます。例えば前述の例のように、1年に48日間もかけていた作業が4時間で終わるようになれば、残り47日分の時間の余裕が生まれ、自社リソースを本業に使うことが可能です。

4、人材不足の解消

RPAは、人材不足の解消にも期待されています。多くの業務を自動化することで生産性が向上し、より少ない人数で業務が遂行できるためです。

また、従業員の労働時間短縮による労働環境の改善によって、採用活動面でプラスの効果が期待できる点も見逃せない効果です。有給の取得率が高く、残業時間が少ない職場に魅力を感じる求職者は少なくありません。労働環境の良さは、求人時のアピールポイントになります。

5、労働環境の改善

少子高齢化でなかなか思った通りに人材が確保できなくなりつつあります。この状況では、現在働いている従業員の離職率低下を図ることも人材不足解消の重要な施策です。

RPAの導入は、単に生産性の向上に留まらず、残業時間の短縮や有給取得のしやすさにつながり、結果として労働環境の改善になります。労働環境が改善されることで、離職率の低下も期待できます。

RPAの導入費用は0円~数千万円と差が大きい

RPAの導入費用は、デスクトップ型やクラウド型で数十万円~数百万円、サーバー型で数百万円~数千万円が相場です。中には、初期費用は0円で月額料金だけという製品もあります。

RPAツールの導入費用は、RPAツールを購入する際の初期費用(購入代金+初期設定費用)だけでなく他にも費用を左右する要素があります。導入費用をより正確に見積もるためにも、その要素を確認しましょう。

RPAの導入費用を決める6つの要素

RPAの導入費用を決める要素には、提供形態の違い・ライセンス体系の違いによるRPAツールの初期費用の差・ソフトウェアロボットの開発費用などがありますので、順番に解説します。製品を選ぶ際に何を確認するべきかの参考にしてください。

1、提供形態の違い

提供形態の違いにより、RPAツールの初期費用は大きく異なります。RPAツールの初期費用は、導入費用の価格帯を決める重要な要素なので、どれを選ぶかしっかり検討しましょう。

1 デスクトップ型の初期費用

デスクトップ型は、従業員が少ない会社がRPAをスモールスタートさせるのに適した提供形態です。オフィスのパソコンにインストールしてそのまま使います。デスクトップ型の初期費用の相場は、数十万円~数百万円です。

2 クラウド型の初期費用

クラウド型は、クラウドサービスとしてインターネット上で提供されているサービスを契約して使用する提供形態です。Webブラウザ上で使うため、専用のソフトウェアをインストールする必要はありません。クラウド型の初期費用も、デスクトップ型と同程度で数十万円~数百万円です。

3 サーバー型の初期費用

サーバー型は、社内の環境にサーバー環境を構築してRPAをインストールして使用する提供形態です。サーバー型は100体以上のソフトウェアロボットを稼働させることができ、セキュリティ性も高いという特徴があります。サーバー型の初期費用は他の提供形態に比べて高く、数百万円~数千万円程度です。

2、ライセンス体系

RPAのライセンス体系は、ロボットの開発が行える「開発版」、ロボットの実行だけができる「実行版」がベースです。その他、開発+実行ができる「フル機能版」フル機能+管理統制まで可能なライセンスもあります。

低コストでRPAを利用したい企業向けには、RPAツールとすでに完成しているソフトウェアロボットを割安でレンタルするライセンスも見られます。また、ライセンスは月額料金・年間使用料・買い切りのいずれかも要確認です。

3、ソフトウェアロボットの開発費用

ソフトウェアロボットの開発費用も、導入費用の中に含めて検討しなければなりません。RPAツールは、多くが画面を使いノンプログラミングでソフトウェアロボットを作れる仕組みを提供しています。しかし、細かな部分の調整など、プログラミング技術が必要になる場面も多々あります。

ソフトウェアロボットの開発が必要な場合、外注するか自社で作る内製にするかで費用も変わってきます。

1 外注する場合の費用

ソフトウェアロボットの開発を外注する場合、外部のエンジニアに常駐してもらうか開発を委託するかで費用が異なります。常駐の場合は、1ヶ月当たり70万~150万円かかりますが、開発を共同で進められる点がメリットです。開発を委託する場合、開発費用はロボット1体につき30万円~となります。

2 内製する場合の費用

自社でプログラミング技術を持つ社員を確保できる場合は、「社員の作業時間×社員の時間当たりの人件費」が内製にかかる費用です。

自社内でスキルのある人材を確保できない場合は、上記の人件費に加えて、別途担当社員へのトレーニング・研修費用を見積もらなくてはなりません。1回8時間のトレーニングを受けるとして、費用は10万円程度を見込んでおくといいでしょう。

4、導入支援サポートサービスなどの利用有無

RPAは、他の業務システムと比べて各種コンサルティング・サポートメニューを必要とする割合が高いツールです。導入支援サポートやロボット作成の研修・トレーニングなど、自社で必要とするサポートメニューを見積もり、その分の費用も導入費用として計算してください。

5、RPAロボット開発・利用者の教育費用

ノンプログラミングでロボット開発を行う場合にも、開発者向けの教育は必要です。また、完成したロボットの利用者向けの教育もしないことには、業務のロボット化は進みません。ロボット開発者・利用者向けの教育費用も、導入費用の一部として見積もりましょう。

6、RPAのワークフロー定義費用

ここまで述べた費用の他にも、業務自動化のために必要な作業は数多くあります。

  • 現状業務を洗い出してどの部分を自動化するかの検討
  • ソフトウェアロボットの外部仕様策定
  • 完成したソフトウェアロボットの検収作業(動作確認などのテスト工程)

これらの作業はいずれも時間がかかるため、RPA推進チームを作って取り組む必要があります。RPA推進チームの人件費も、導入費用の一部として忘れず見積もりましょう。

ここまで解説してきた通り、RPAの導入費用は、RPAツールの初期費用以外にも多くの費用が関係します。これらの費用も漏れなく見積もらないと、簡単に予算オーバーになってしまいます。以降では、RPAの導入費用を抑えるコツについて紹介しますのでぜひご活用ください。

RPAの導入費用を抑えるコツ4点

RPAの導入費用を抑えるコツをまとめました。自社の導入目的を満たしつつ、どこまで工夫できるかを検討しましょう。

1、自社でどこまでの機能を求めるかを明確にする

RPAを使って、どのレベルまでの業務を自動化するかを明確にすることで、オーバースペックなRPAツールを選定対象から外せます。RPAの3段階も加味して検討しましょう。また、RPAでの自動化と相性のいい業務に絞り、導入するソフトウェアロボット数を絞り込むことでも予算は抑えられます。

2、予算をどこまで確保できるか検討

先に、自社で出せる予算を明確にすることも重要です。予算が明確になれば、自然と選択できる製品も絞られます。

3、複数業者に相見積もりを取る

RPA製品の導入を検討する際は、候補となる製品を複数選出した上で、相見積もりを取ることも重要です。各社の見積額によって、製品の強みや提供サービスの内容も分かります。金額面だけでなく、自社に必要なサービスを受けられるかどうかも確認して選定しましょう。

4、公的な助成金・補助金が利用できないか検討する

RPAツールの導入は高額になるため、公的な助成金・補助金が利用できればコストを抑えられます。RPAツール導入に利用できる可能性のある助成金・補助金は2021年4月時点で以下の通りです。

助成金・補助金 監督官庁 補助内容
サービス等生産性向上IT導入支援事業補助金 経済産業省 通常枠(A・B類型):費用の1/2、最大450万円を補助
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 中小企業庁 一般型:100万円〜1,000万円
グローバル展開型:1,000万円〜3,000万円
いずれも補助率は中小企業者1/2 小規模企業者・小規模事業者・低感染リスク型ビジネス枠特別枠2/3
小規模事業者持続化補助金 中小企業庁 一般型:費用の2/3、最大50万円を補助

特に補助額が大きい「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」ですが、応募できる企業に条件があるため、補助対象企業にあてはまるかどうかは要確認です。

補助金の申請はかなり時間がかかりますので、準備は早めに進める必要があります。また、応募にあたって「GビズIDプライムアカウント」が必要な補助金もあります。申請から取得までに時間がかかるため、早めに申請しておきましょう。

導入費用以外にも確認を!RPA導入時の注意点4つ

ここまで、導入費用の金額について解説しました。ただ、導入費用以外にも費用面で確認しておくべき注意点がありますので説明します。

1、業務プロセス・業務フローの整理が必要

RPAを導入する場合、現状の業務を整理して、どの部分を自動化するかを検討する必要があります。この工程を飛ばすと、同じような業務で同じようなソフトウェアロボットをいくつも作ってしまう無駄が発生するので注意しましょう。

現状の業務の洗い出しは、現場部門の従業員とRPA推進チームが協力して行う必要があるため、しっかりとしたスケジューリングも必要です。

2、総コストの計算も忘れず行う

RPAに必要となる総コストは、初期費用に加えて月額費用・バージョンアップ費用・サポート費用で構成されるのが一般的です。ただ、クラウド型の場合は月額費用にバージョンアップ費用も含まれるなど、提供形態によって構成は違います。利用期間を定めて、その期間内での総コスト計算も忘れず行いましょう。

3、PDCAサイクルを回せる仕組みを構築する

ソフトウェアロボットは、単に作って終わりではありません。導入効果を測定して、目標のパフォーマンスが上がるまで継続的な改善サイクルが必要です。継続的な改善サイクルの回し方としては、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Actionを継続的に回すこと)などがあります。

ロボット作成の数値目標を明確にして、計測と検証の仕組みを最初から組み入れるようにしましょう。

4、1部門で検証してから展開部門を拡大する

RPAは、導入した後もPDCAサイクルを使って改善サイクルを回します。特に導入初期は多くのコストがかかり、現場も混乱する可能性が考えられるので、全社一気に導入するのは大きなリスクが伴います。

まずはRPA導入による業務改善効果の大きい部門を1部門選出し、RPA導入から検証・改善までの1サイクルを回して運用ルールを固めましょう。その後、展開部門を拡大することで、無駄なコストを抑えられます。

RPAの導入費用は事前調査が重要

RPAの導入費用について解説しました。RPAの導入費用の大部分を占めるツールの初期費用は、デスクトップ型やクラウド型で数十万~数百万円、サーバー型で数百万~数千万円です。さらに、導入支援サービスやソフトウェアロボットの開発費用、社内研修費用なども、導入費用に含めて計算してください。

RPAの導入費用をある程度見積もるためには、自社の利用目的など事前調査をした上で、複数RPAベンダーに相見積もりを依頼する必要があります。製品情報の参考として、資料を取り寄せ、RPAの導入費用見積もりにお役立てください。

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