RPAツールは、単純作業を自動化することで業務効率化を推進するためのツールです。この記事では、人気のRPAツールを比較しつつその特徴を説明するとともに、RPAの基本機能や選定のポイントについても解説します。
RPAツールとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、ロボットによる自動化を意味しますがITの世界では「ロボット」とはソフトウェアロボットを指します。誰でもできるような単純作業をソフトウェアによって自動的に処理し、業務効率化を図るツールがRPAツールです。
RPAツールは、処理内容を記載した「シナリオ」を、設定されたトリガー(きっかけ)やスケジュールに従って処理を開始します。RPAツール導入によるメリットは、主に業務の効率化・人件費の削減・ヒューマンエラー防止の3点です。
RPAツールのメリット
RPAツールを導入することで得られるメリットは以下の3点です。
1、定型業務の効率化による売上向上
RPAツールは、人が手作業で繰り返し行っていた業務を、非常に速いスピードで実行する点が大きな特徴です。RPAツールは定型業務を効率化し、さまざまな面で売上向上に貢献します。
例えば、通販サイトで人気商品が販売開始になったと想定しましょう。サイト運営者が集中する注文を手入力で処理していると、注文スピードに処理が追いつかず、販売機会を失ってしまいます。 RPAツールで自動化すればスムーズに注文処理が進み、販売機会の損失も防止できます。
また、定型業務を効率化することで、その業務に追われていた従業員の手があき、本来集中するべき業務に注力できるように。結果として売上向上に貢献できるでしょう。
さらに、RPAで自動化できる業務の範囲は、定型業務の自動化を行うclass1から、近年は高度な業務を自動化できるclass2・class3も出てきました。ビックデータの解析による業務改善策の策定・実行や、高度な意思決定により、RPAが直接売上向上に貢献する場面も増えてくると予想されます。
2、人件費や外注費のコスト削減
定型業務の効率化が進むと、その作業を行っていた人件費や外注費は必要なくなり、コスト削減も可能です。RPAツールは、初期費用やソフトウェアロボットの開発費用がかかります。しかし削減できる人件費や外注費を考えると、トータルではコスト削減効果が見込めます。
3、人的ミスの削減
定型業務を人間が行うと、どうしてもミスが入り込みます。ミスを作りこんでしまうと、どこをミスしたかの調査と修正に時間がかかり仕事の効率が落ちてしまいます。RPAなら自動的に処理を進めるため、人的ミスを削減でき、仕事の効率を落とすこともありません。
RPAツールの基本機能一覧
RPAツールの基本機能を機能分類ごとにまとめると以下の通りです。
機能分類 | 詳細機能 |
---|---|
RPAの処理設計 | フロー図によるシナリオ作成 レコード機能 プログラミング言語によるルール設計 文字と図形や色の判別 |
自動処理の設定 | スケジューリング トリガー設定 ワークフロー エラー処理 AI・機械学習の搭載 |
ロボット管理 | ダッシュボード 複数ロボットの制御 ログ管理 |
RPAに含まれる機能について、分類ごとに解説します。
1、RPAの処理設計
RPAの処理を設計する機能群です。どのように動かすかの処理の流れをフロー形式でシナリオとして作成し、細かい制御はルール設計を行います。人のマウス操作などを覚えさせ(レコード機能)、処理設計に取り込めるとより便利です。
2、自動処理の設定
設計したシナリオを自動的に動かすトリガーや処理順番、エラー発生時の処理などを設定する機能群です。自動処理にAIや機械学習機能を加えて、より適切な処理を見つける機能を持つ製品もあります。
3、ロボット管理
実行しているロボット処理を管理する機能群です。成功・失敗を確認する画面や複数ロボットの制御機能、ロボットの実行ログ取得機能などで構成されます。
RPAツールの種類
RPAツールは、提供形態によってクラウドサービスとして提供されるクラウド型、社内マシンにインストールするオンプレミス型に分類できます。さらに、オンプレミス型は、インストールするマシンの種類によりデスクトップ型とサーバ型に分かれます。3つのタイプはそれぞれ特徴があり、メリット・デメリットも違います。製品選択の際、提供形態の違いにも注目して、どのタイプが自社に向いているかを確認しましょう。
1、クラウド型
サービス提供者が管理するクラウドサーバ上のRPAツールを使用するタイプです。現在業務でクラウドサービスを多く利用している場合、それらの操作を自動化できます。クラウド型は、自社内にRPAツールの環境を構築する必要がなく、常に最新版を利用できる点が強みです。セキュリティ上の問題や、パソコン内にインストールしているソフトウェアの操作ができない点はデメリットと言えます。
2、オンプレミス・デスクトップ型
オンプレミス・デスクトップ型は、社内のクライアントパソコンにインストールして使うタイプのRPAツールです。パソコン単独で定型業務の自動化を行えて比較的低コストなので、小規模企業やスモールスタートをしたい場合に向いています。ただし、管理が属人的になりやすく、何のロボットが動いているかが管理者に把握しづらくなる点には要注意です。ソフトウェアロボットを全社で管理したい場合は、サーバ型のほうが向いています。
3、オンプレミス・サーバ型
オンプレミス・サーバ型は、社内にRPA用のサーバを構築して利用するタイプです。サーバ上でロボットの作成・操作を行うとともに、ユーザーにロボットを配布して使えるようにします。サーバ型の特徴は、サーバ上で動くロボットにより業務を横断した作業の管理と自動化が可能な点です。ロボットの一括管理ができ、運用ルールも統一しやすい点もメリットですが、その一方で導入コストが非常に高い点はデメリットです。
RPAツール選定のポイント3つ
RPAツール選定のポイントを3つの観点から解説します。
1、どこまでの自動化が可能か
RPAは、製品によって自動化できる業務の範囲が異なります。クラウド型のサービスは、ローカルパソコンのソフトウェアの操作は自動化できないので要注意です。また、業務特化型の製品もあるため、どの業務を自動化するかを明確にしてから、製品選定を行いましょう。
2、ターゲット規模は自社に合っているか
RPAツールは、小規模企業向けデスクトップ型、大企業におすすめのサーバー型、小規模から大規模企業までをカバーするクラウド型に分類されます。一般的に大規模企業向けの場合、高価で機能も多い傾向があります。自社の規模と製品のターゲット規模が合っているかどうかも確認しましょう。
3、導入サポートが必要か
RPAツールの中には、導入サポートや運用支援などを手厚く行っているものがあります。自動化したい業務自体のシナリオ化はできても、どの業務を自動化するかの選定は意外と時間がかかる作業です。導入サポートや運用支援をソリューションとして提供している製品を選ぶことで、これらの作業を効率良く済ませられます。
RPAツール12選を比較
ノーコードですぐに自動化できるRPAツール「batton」
株式会社batton
- 参考価格:初期費用0円、その他は別途問い合わせ
- 提供形態:SaaS / オンプレミス / クラウド / パッケージソフト
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「batton」は、ノーコードで使えるRPAツールです。初期導入費用は無料で、シナリオ作成はアイコンを選んで処理順番を決めていく形式。運営会社が用意しているRPAコマンドもあるので、似た業務があれば開発不要ですぐ導入可能です。
他社が開発したRPAコマンドを購入して利用することもできます。逆に、自社が開発したRPAコマンドを販売することも可能です。
本製品の大きな特徴は、アカウントやロボットのシェアが可能な点です。勤務先で使っていたアカウントやロボットを、自宅に帰ってから使えるので、勤務先と自宅でアカウントを2つ用意する必要はなく、ロボットもコピー不要で共有できます。
手軽にRPAを導入したい、自社でシナリオを開発する余裕がないためできる限り利用できるRPAコマンドが欲しい、という場合に適した製品です。
フローチャートでシナリオ作成「コボットPlatform」
ディップ株式会社
- 参考価格:コボットAgent(ロボット実行・1台あたり)月額50,000円、コボットCenter(ロボット管理・1台あたり)月額50,000円、コボットStudio(シナリオ作成ツール)無償提供
- 提供形態:その他
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「コボットPlatform」は、処理のフローチャートをデザインしてノーコードで処理のシナリオを作成できるRPAツールです。ロボット管理ツールやロボット実行ツールはそれぞれ別で販売されていて、すべてを利用すると1台あたり月額100,000円となります。
シナリオ開発ツールのコボットStudioは、シナリオを作成した後デバッグもできて便利です。また、サポート体制は充実していて、専用のサポートサイトやe-ラーニングサイトも準備されています。
導入の手間を軽減したい場合は、RPA導入支援サービスの利用を検討するのもいいでしょう。
パソコン1台で稼働可能!導入・運用サポートが手厚い「WinActor」
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
- 参考価格:フル機能版75,500円(Salesforce管理者 1ID・Salesforceユーザー 1ID・VPN接続権を含む)、実行版20,500円(Salesforceユーザー 1ID・VPN接続権を含む)など、その他は別途問い合わせ
- 提供形態:パッケージソフト / サービス
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「WinActor」は、Windowsパソコンで動作するデスクトップ型のRPAツールです。シナリオ作成はノーコードで、画面上でデザインできます。自動化対象ソフトはWindows上で操作できるソフトウェア全て。あらゆるソフトの自動化が可能です。ロボットの実行もWinActor上で実行します。
本製品は、無料導入コンサルティングやシナリオ作成コンサルなど、サポート体制が充実している点も大きな特徴です。特に導入コンサルは重要で、RPAツールをどの業務に適用するかなど、導入時の悩みを解消できます。
RPAを導入してみたいけれどスムーズに活用できるかどうか不安という場合には、導入時のサポートが充実している本製品を検討しましょう。
SaaS型RPAプラットフォーム「Robotic Crowd」
株式会社チュートリアル
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド / SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
クラウド型のRPAツール「Robotic Crowd」。クラウドサービスなので、操作するマシンの制限はなく、Webブラウザさえ使えればすぐにでもシナリオの作成が可能です。
操作のレコーディングはGoogle Chromeの拡張機能を利用すれば簡単。作成した業務フローはエディターの切り替えでテキストとして共有でき、チームでの共有もしやすい仕組みです。
ただし、クライアント端末のソフトウェア操作の自動化はできないため、Webから利用できるシステムやサービスの自動化におすすめです。
初心者向けかつ現場部門でシナリオ作成しやすい「RoboTANGO」
スターティアレイズ株式会社
- 参考価格:初期費用100,000円、1ライセンスあたり月額50,000円
- 提供形態:オンプレミス
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
1ライセンスで5台まで利用可能なフローティングライセンスを採用している「RoboTANGO(ロボタンゴ)」。自動化したい業務を録画してシナリオを作成するため、現場部門の担当者がITの知識を持たなくても簡単に単純作業を自動化できます。
オンプレミス型の製品なので、クライアントPCのソフトウェアの操作もOK。クラウド型RPAサービスでは対応できない範囲も対応可能です。
価格設定は、初期費用・月額料金ともにRPAツールの中でも手頃です。RPAツールにかけられる予算に限りのある会社は導入を検討してみてください。
操作のレコーディングが簡単にできる「Robo-Pat」
スターティアレイズ株式会社
- 参考価格:フル機能版1ライセンスあたり月額120,000円、実行版1ライセンスあたり月額40,000円
- 提供形態:パッケージソフト
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「Robo-Pat」は、デスクトップ型のRPAツールです。インターネット回線不要で、パソコン単独で単純作業を自動処理できます。自動化したい操作の記録は画面で順番に覚えさせるだけ。難しいプログラミングやフローチャートに関する知識は必要ありません。
また、契約は月額のみで、初期費用や年額契約は不要です。忙しくて自動処理を多くこなす必要がある月だけ多めにライセンスを契約する、といった運用もできます。社内にIT技術に詳しい人材がいなくても自動化したい業務がある、という場合に適した製品です。
自社にマッチした提供形態が選べる「OCEVISTAS」
株式会社大崎コンピュータエンヂニアリング
- 参考価格:OCEVISTAS mini(デスクトップ型)1アカウントあたり年額900,000円、OCEVISTAS BasicRobo(オンプレミス・サーバ型RPA)1ライセンスあたり年額7,200,000円、その他は別途問い合わせ
- 提供形態:オンプレミス / パッケージソフト
- 対象従業員規模:100名以上
- 対象売上規模:全ての規模に対応
中堅企業から大企業向けの「OCEVISTAS(OCE Virtual staff Trust and service)」は、バリエーションの多い提供形態が特徴のRPAツールです。
提供形態は2パターン。デスクトップ型のOCEVISTAS mini、サーバー型のOCEVISTAS BasicRoboです。これらの中から、自社の規模や利用シーンにあった提供形態を選べます。
単純作業の自動化から、災害などの影響で出社できない場合のオフィス業務自動化など、様々な利用シーンで活躍する「バーチャルスタッフ」として利用可能です。
OCR機能に特化したRPAツール「DAiKO OCR with AI inside」
大興電子通信株式会社
- 参考価格:プラン1(小型・月6,000項目まで)管理者ID単位で月額30,000円、プラン2(中型・月60,000項目まで)管理者ID単位で月額100,000円、プラン3(大型・月200,000項目まで)管理者ID単位で月額200,000円、その他は別途問い合わせ
- 提供形態:サービス
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「DAiKO OCR with AI inside」は、手書き文字の読み取りを実行してデータ化することに特化したRPAツールです。これまで手作業で行っていた手書き文字書類の処理を一気に電子化でき、様々な作業を効率化できます。
手書き文字の読み取りにはAI技術を活用。ディープラーニングと補整用データベースを利用するため高い識字率を誇ります。
訂正印や黒丸などのあるデータの読み飛ばし、スマートフォンで撮影した画像の歪み補正、2行に渡る住所の読み取りなども可能です。読み取り部分の指定や読み取り結果の確認、確認データの修正は画面上から行えます。
Boxを使ったExcel集計に特化したRPAソリューション「コピロボ」
株式会社NSD
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「コピロボ」は、オンラインストレージ「Box」を利用したExcel集計特化型のRPAソリューションです。Excelをメールに添付すると自動的にBoxのフォルダに添付ファイルを保存。リアルタイム監視されているBoxのフォルダに添付ファイルが保存されると集計が始まる仕組みです。
自動化できる業務はExcelデータの集計に限られます。しかしこれまでマクロを組み、大量ファイルの場合は分割するなど、Excelデータの集計に悩まされている業務がある場合は、導入することで大幅な業務効率化が期待できます。
1契約でアカウントもロボット数も無制限に作れる「BizteX cobit」
BizteX株式会社
- 参考価格:エントリープラン(ロボット稼働ステップ数10万ステップまで)月額100,000円、スタンダードプラン(30万ステップまで)月額200,000円、プロフェッショナルプラン(50万ステップまで)月額300,000円
- 提供形態:クラウド / SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「BizteX cobit」は、洗練された画面操作で自動化したいシナリオの作成が可能なクラウド型のRPAサービスです。1契約でアカウント数も作成ロボット数も無制限。プランの違いは、ロボット稼働ステップ数の違いとなります。
本製品は、データ入力やデータ加工など、Web上で共有されているドキュメントに関する定型業務の自動化が可能です。クラウド型のため、ローカルのパソコンに入っているソフトウェアや、Web上で動いていない基幹システムの操作は自動化できない点には注意しましょう。
シナリオ作成から運用までワンストップ型ソリューション「RPAロボアシスタントサービス」
ニスコム株式会社
- 参考価格:ロボット利用費用月額80,000円、ワークフロー追加費用月額30,000円
- 提供形態:サービス
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「RPAロボアシスタントサービス」は、高機能なロボットプロセス自動化プラットフォーム「UiPath」を利用したサブスクリプション型サービスです。サービスは月額単位での契約になるため、好きなタイミングで解約できます。
本サービスの特徴は、シナリオ作成から運用まで、導入サービスが受けられる点です。手厚い導入サービスによって、大きな負担がかかりがちなRPA導入をスムーズに進められます。
RPAを導入したいが導入時のシナリオ作成などに割り当てられる自社リソースがない場合は、導入サービスのメリットを享受できます。
中堅・中小企業向けのデスクトップ型RPA「Owlgarden RPA」
株式会社エクス
- 参考価格:フル機能版 月額80,000円 年額880,000 円、実行版 月額30,000円 年額330,000円、最低利用期間1ヶ月、その他価格別途問い合わせ
- 提供形態:パッケージソフト
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対象売上規模:全ての規模に対応
「Owlgarden RPA(オウルガーデン アールピーエー)」は、デスクトップ型のRPAツールです。個人の定型業務を自動化して業務効率化を図るのに適した機能を多く提供。特にシナリオ作成画面は視認性のよいデザインで、簡単にシナリオを作成できます。
データ連携および社内の他システムとの連携がしやすい点も、本ツール導入のメリットです。データベースやExcel・CSVのデータを操作できます。他システム連携では、明細形式の入力画面構造を理解してデータ入力できる点が、他製品にはない強みです。
RPAツールを選ぶ際は何の業務を自動化するか明確にしよう
RPAツールの選定には、どの業務を自動化するかを明確にしてから検討を進めるようにしましょう。自動化したい業務の種類によっては、対象外となる製品があるため注意してください。自社に向いているRPAツールをお探しの場合は、製品の資料を入手して、製品選定にお役立てください。