本連載では、企業のマーケティング担当者向けにソーシャルメディアのビジネス活用法についてお伝えしていきます。運用を始める前に確認しておきたいポイントの解説や、既に取り組んでいる担当者の方は、やり方を見直すきっかけとしても利用できる内容を取り上げていく予定です。

第1回目の今回は、ソーシャルメディアをビジネスに使うべき理由と、FacebookやTwitter、Google+、LINEといった代表的なソーシャルメディアのユーザー属性やその違い、使い分け方などを紹介します。ソーシャルメディアでユーザーに受け入れられる発信の仕方もおさえておきましょう。

今、ソーシャルメディアを使うべき理由

ソーシャルメディアはぜひマーケティングに活用したいツールです。それはなぜなのでしょうか。

総務省が6月に公開した「平成24年通信利用動向調査の結果」によると、20代の28.2%などを筆頭に、全体の15%がソーシャルメディアを利用しており、利用者が多くもはやインフラと化しています。無料・低予算で始められ、拡散効果も期待できることから、企業での活用も進み、ビジネスにおいても15.9%がソーシャルメディアを活用しています。

ソーシャルメディア上で交流することで、企業にとってはユーザーに親近感を抱いてもらったり共感してもらったりといった効果が期待できます。また、普段からソーシャルメディアを運用することで、ユーザーの不満などに対して素早く対応して炎上を未然に防ぐこともできるなど、利用するメリットは多くなっています。

ソーシャルメディアの利用動向(出典 : 総務省)。ソーシャルメディアの利用率は、個人・企業ともに年々伸びている

ユーザー数トップのFacebook

ここからは、代表的なソーシャルメディアの特徴と使い分け方について紹介します。

まずはFacebookです。Facebookは世界一のSNSであり、2013年3月末時点で世界でのアクティブユーザー数は11.1億人に達しています。世界中の多くの国や地域において、もっとも利用されているSNSといってよいでしょう。

日本人のアクティブユーザー数は、2013年6月末時点で2100万人です。Socialbakersによると、利用者の内訳は、25~34歳が34%、18~24歳が23%、35~44歳が22%、45~54歳が11%と若年齢層を中心に広く利用されていることがわかります。

企業マーケティングに役立つ機能としては、無料で利用できるFacebookページやアクセス解析機能「インサイト」、また低予算から始められるFacebook広告も用意されています。おまけに、「いいね!」やコメントといった行動がユーザーの友達に表示される仕組みとなっているため、ユーザーの周囲にも知ってもらえる拡散効果も期待できるでしょう。

掲載するコンテンツには、写真が大きく表示され、動画などのリッチコンテンツも利用できます。長い文章の掲載も可能で、従来のホームページのように利用することもできます。自社ブランドや商品・サービスなどに興味がある層や実際の商品利用者が集まるため、顧客層の把握や、Facebookページを通じた顧客との日常的コミュニケーションに役立つでしょう。

Facebook上でキャンペーンをしたり、ユーザーの意見を聞いたり、アンケートを行ったり、顧客サポートに活用したり、イベントを行うこともお勧めできる活用方法です。投稿が他のソーシャルメディアよりも比較的長くユーザーの目に留まるため、重要なことはFacebookページで伝えるとよいかもしれません。世界に向けて発信したい場合にも効果的です。

Facebookの画面例、アカウントはFacebookの公式アカウント画面

日本のTwitter利用者は、世界で2位!

上場を控えたTwitter社自身が公開したところによると、Twitterのアクティブユーザー数は月間2億1800万人を突破しています。日本はTwitterの利用者が世界で2番目に多いなどTwitterの人気が高く、推定2000万人程度が利用。「ソーシャルメディア白書2012 (翔泳社 刊)」によると、10代女性は59.2%、男性は45.2%など、男女とも若い世代ほど利用率が高くなっています。

利用料は無料で、140文字以内での「文字」でのやりとりが中心となるため、それゆえに、コミュニケーションの敷居が低いといった特徴が挙げられます。また、リアルタイム性が高く、臨場感のあるレポートなどに向いています。

Twitterは興味があれば相手の許可がなくてもフォローでき、興味関心でつながるいわゆる「インタレストグラフ」を持つため、販売などにつなげられる可能性も高いといえるでしょう。情報の取得や拡散、ユーザー反応などマーケティング活動にも利用でき、炎上を未然に防止するために自社や自社商品・サービスなどで検索する「エゴサーチ」をしておくこともお勧めです。

Twitterの画面例、アカウントはオバマ大統領のアカウント画面

検索に強いGoogle+、ローカルビジネスに期待のLINE

Google+はその名の通りGoogleが提供する世界第2位のSNSです。FacebookとTwitterの中間的な特徴を持っており、Google検索など他のサービスと連携しているため、検索結果で優位に表示される傾向にあります。利用料は無料で、利用率はFacebookやTwitterに比べればまだそれほど高くはありませんが、根強いユーザーも多く、SEO対策としては絶対に使っておきたいサービスです。

Google+については「Google+」はTwitter・Facebookと何が違う? の記事も分かりやすいので一読を。

Google+、アカウントはGoogle Japanの公式アカウント

一方のLINEは2013年8月の時点で、世界中で2億3千万人が利用しており、日本人ユーザー数は4700万人で世界1位。企業向けの公式アカウントは初期費用が200万円、月額150万円から、オリジナルのスタンプ配信に1000万円と非常に費用がかかりますが、これとは別に月額わずか5250円で利用できる「LINE@」といったサービスも用意されています。個別にプッシュ通知ができるため、特に店舗にとっては集客効果が期待できます。飲食・小売・アパレル・美容・ホテル・旅館など実店舗ビジネスでは使っておきたいソーシャルメディアです。また、雑誌やテレビなどのメディア、地方自治体などの公共サービスもLINE@を利用できます。

LINE、スマートフォンでのLINE画面

ソーシャルメディアは、モノは売らずに関係性を築く

さて、ソーシャルメディアをビジネスで活用する上で忘れてはならないことがあります。それは、ソーシャルメディアは基本的にユーザーが友達と交流する場であり、企業はそこに入れてもらっている立場ということです。いきなりモノを売ろうとすると拒絶される可能性が高くなります。

ユーザーは、企業のアカウントやページを有益な情報を求めてフォローや「いいね!」をする傾向があります。つまり、ユーザーにとって有益な情報を発信することで、ユーザーに受け入れられるだけでなく、シェアや拡散してもらえる可能性が高くなるのです。最新情報やお得情報、専門分野の情報、美しい写真、楽しい投稿など、ユーザーに有益となる情報を意識的に発信していくことがポイントです。

たとえば、ソーシャルメディア運営の上手さで知られる無印良品(良品計画)は、発信する内容の9割がユーザーへの返信で、商品の紹介はわずか1割に抑えています。同じく東急ハンズは、ユーザーへの返信が5、ビジネスとは関係ないお喋りが3、商品紹介などはわずかというバランスを心がけています。

いきなりモノを売るのではなく、この「関係性を重視する姿勢」は、ぜひ参考にしてください。