日本経済団体連合会(経団連)のスケジュール方針が見直された新卒採用業務ですが、混乱しないように、あらためて業務の基本的な流れとポイントを確認していきましょう。

新卒採用4つのステップ

昨年、経団連が新卒採用のスケジュールを見直し、2016年3月卒業・修了予定者の選考活動を2015年8月開始にするガイドラインを発表しました。就活の早期化・長期化による学業への悪影響などを理由に、面接の時期を4カ月遅らせたことになります。この方針をふまえて、採用計画をどのように進めていくのか、企業側・学生側ともに混乱が生じているようです。例えば、8月は夏真っ盛りですので、採用試験時にクールビズを認めるなど学生の健康にも新たに配慮する必要があるでしょう。

今回はそういった新卒採用(大学・大学院卒の採用活動)に関する人事業務の流れとポイントについて、あらためて整理していきたいと思います。新卒採用業務には、大きく分けて下記の4つのステップがあります。

(1)採用計画の立案
採用市場の分析、求める人材の明確化、採用人数の決定など

(2)募集
求人サイトの開設、会社説明会の開催、エントリーの受付など

(3)選考
書類選考、適性検査、面接選考など

(4)内定者フォロー
内定通知書の発行、内定式の開催など

本当に必要な人材は誰?

採用活動の時期は、どの企業も精力的に活動しています。優秀な人材を確保するためには、きちんと狙いを定め、年間を通じて採用を着実に進める計画と準備が必要です。採用計画の立案では、まず求める人材像と採用人数を決めた上で、行動と時期を具体化していくわけですが、一歩目である「求める人材像」を明確にする作業は、採用の方向性そのものに関わりますので、重要です。

あなたの会社に本当に必要な人材は、どんな人物なのでしょうか? 特に新卒採用においては、単純に一つひとつの部署の不足分を補えば良いというわけではありません。「人のプロ」である人事の仕事は、現場では認識しづらい採用ニーズを形にすることです。そのためには「将来にわたって自社の事業戦略を実現・強化していくにはどのような人物が必要か?」という視点が必要とされます。

採用人材像と人数を固めたら、それに適した採用手法を決めていくことになります。

募集のポイント

新卒募集では、あなたの会社が大事にしていること、実現したいものを中心に、扱っている商品・サービスや社風、業務内容、入社後のキャリアなどを、学生にとって魅力的に伝える必要があります。あなたの会社に共感してくれる"仲間"を募ることが目的だと考えましょう。なお、「男性だけを募集する」「男女で異なる条件を付けて募集する」「年齢制限を付けて募集する」といったことは法律で原則禁止されています。

具体的な募集方法としては、新卒採用求人サイトへの掲載や採用ホームページの開設、会社説明会や大学内セミナーといった採用イベントの開催、インターンシップ(学生の就業体験)の実施などがあります。近年では、出身大学の就活生にアプローチをして、早い時期から学生と密なコミュニケーションを交わす「リクルーター」による採用活動が注目を集めています。人事担当者以外が、本来の業務に加えてリクルーターを担う場合もあります。

選考は誠実に

採用活動を進めていくと、学生のエントリーに対する反応や選考の準備、合格者への連絡など、事務作業が大いに増えていきます。当然のことですが、応募者の個人情報は、採用の可否を決定するために必要なことに限って収集、保管、使用しなくてはなりません。「この会社からこんな対応をされた」という情報はすぐに広まりますので、ミスの無いよう慎重かつ誠実に実務に当たりましょう。

選考のなかでも特に重要なプロセスが"面接"です。それだけに、面接担当者の選定は熟考するべきです。面接官は自社の「求める人材像」を正しく理解し、短い時間の中で「この人なら将来、輝かしい業績を上げてくれる」と判断できる人間でなくてはなりません。

内定者は社会人の第一歩

そもそも内定とは「始期付・解約権留保付・労働契約」のことです。新卒採用の場合は、「来年4月1日」というように契約の開始時期を定め、大学を卒業できなかった場合など決められた取り消し理由にあてはまれば解約することができる契約です。

内定者に対して、人事担当者は入社に向けたさまざまな準備を行います。内定者を集めた親睦会の開催や、業務理解のための研修会の実施などがこれに当たります。内定者をフォローする目的は、入社する意識を固めるとともに、ゲストではなく主体者であるという"当事者意識"を持たせることです。