「ジェラルド・チャールズ」は、かつて「時計界のピカソ」と称されたデザイナーであるジェラルド・チャールズ・ジェンタ氏が立ち上げたスイスの時計会社です。日本市場では2024年から本格展開を始めていますが、いったいどんなブランドなのでしょうか。
多くの名作を残した伝説的デザイナー
「ジェラルド・チャールズ」はウォッチデザイナーとして名を馳せ、“時計界のピカソ”と称されたジェラルド・ジェンタ氏が、2000年(2001年という文献もあります)に2つのファーストネームを冠したブランドとして立ち上げた時計会社です。ジェンタ氏は1931年にスイス・ジュネーブで生まれました。23歳頃から時計のデザインを始め、多くの名作を生み出したことで知られています。
そんなジェンタ氏の最大の功績といえるのが、42歳(1972年)のときに手がけた高級時計メーカー「オーデマ ピゲ」のラグジュアリー・スポーツウォッチ「ロイヤルオーク」です。今となってはオーデマ ピゲを象徴するアイコニックピースとなりましたが、当時はあまり受け入れられなかったといいます。
高級時計には金やプラチナなどの貴金属を使う(ベルトは革製)ことが一般的だった時代に、あえてステンレススチールを採用。ケース本体を延長したかのようにつながったブレスレット(ケース一体型ブレスレット)は当時としてはかなり奇抜で、オーデマ ピゲの経営陣はロイヤルオークを見て呆れ返ったといいます。結局は製品化されましたが、富裕層からは見向きもされない時代が長く続きました。
しかし、ドレスウォッチのようなラグジュアリーな雰囲気とスポーツウォッチのような使い勝手の良さ(ラグジュアリー+スポーツ=ラグスポというジャンルを確立)が徐々に評価され、今では定価を上回るプレ値で取り引きされるほどの人気モデルとなっています。ちなみに筆者が調べた限りでは、定価400万円前後のロイヤルオークは現在、2次流通市場(並行店や中古店)で700万円前後で売買されています。
日本の時計メーカー「セイコー」もジェンタ氏に時計の製作を依頼しており、蒸気機関車をモチーフにしたセイコーの最高傑作といわれる「ロコモティブ」(現在はセイコーから独立したブランド「クレドール」で販売されています)は、今でも唯一無二の存在感を放つ1本として人気です。
1970年代にはあまり人気がなかったモデルも晩年になって評価されるようになり、結果として数多くの名作を残したといわれるようになったジェンタ氏。ウォッチデザイナーが有名になるケースはあまり多くありませんが、“伝説的デザイナー”と語られる稀有な存在ともいえます。2000年には自身の名を冠したブランド「ジェラルド・チャールズ」を立ち上げましたが、2011年、80歳でこの世を去りました。
腕時計ケースは顔の輪郭?
そんなジェラルド・チャールズの腕時計はバロック建築から着想を得ていて、教会(サンカルロアッレクワトロフォンターネ聖堂)の内壁にみられる六角形、八角形、十字形をケースに反映しています。特に6時位置の丸みを帯びた造形は、ジェンタ氏自身のスマイルライン、つまり顔の輪郭を遺した部分といわれています。
現在のラインアップはジェンタ氏のオリジナルデザインをベースにしていて、彼の愛称だった「マエストロ」という名前が付けられています。
2025年に発表された「マエストロGCスポーツ テニス」は、アスリートのためにデザインされ、文字盤は鮮やかなイエローで、まるでテニスボールのようなテクスチャーが特徴です。
一般的に、ゴルフやテニスをプレーするときは、過度な衝撃による故障を防止するため、機械式腕時計は付けないほうがいいといわれています。ところがマエストロGCスポーツ テニスは、プロテニスプレーヤーによるテストと認証を受けていて、高耐久性を立証済み。テニスでも使える珍しい機械式腕時計として存在感を放っています。価格は400万8,950円。
究極の伝統手工芸品
昨年には、イタリアのオートバイメーカー「ドゥカティ」とコラボした「マエストロ 4.0 ドゥカティ 30° アニバーサリー 916」を発表しました。
ドゥカティの「916」というオートバイが30周年を迎えたことで誕生したこのモデルは、ケースにフォージドカーボン、ベゼルにセラミック、リューズにグレード5チタンを採用するなど、オートバイ業界で軽量かつ耐久性に優れていると実証済みの素材を使用することで、腕時計とオートバイを見事に融合させた1本です。
針を使わず、文字盤のデジタル数字が毎正時にジャンプするように切り替わる複雑機構「ジャンピングアワー」を採用している点にも注目です。
前出のマエストロGCスポーツ テニス同様、耐衝撃性にも優れていて幅広いシーンで使用可能です。価格は860万8,050円。
そのほかにも、60個のバゲットカットのサファイヤまたはツァボライトがセットされ、ホワイトゴールドのベゼルが採用された「マスターリンク ジェムセット リミテッドエディション」や、姿勢差による精度誤差を補正する複雑機構「トゥールビヨン」を搭載した「マエストロ9.0 ローマン トゥールビヨン」などもラインアップしています。
ジェンタ氏らしい、唯一無二の腕時計を次々と発表しているのが、ジェラルド・チャールズというブランドの特徴なのです。いずれも高額ですが、ほとんどのモデルは製作本数が限られている限定品で、生産数もかなり少ない、究極の伝統手工芸の域に達しているといっても過言ではありません。
日本国内でジェラルド・チャールズを取り扱っているのは5カ所(東京、大阪、京都、香川、岡山)のみ。各店舗でも入荷本数がかなり少ないようです。在庫状況を事前にチェックし、正規販売店に足を運んでみてはいかがでしょうか。












