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8 自動車業界 ニュースの見方

自力再建は可能? 日産の2025年度1Q決算を読む

AUG. 06, 2025 08:00
Text : 佃義夫
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トランプ関税の打撃で揺れる日本の自動車産業。7月30日には、経営再建の行方が注目されている日産自動車が2025年度第1四半期(4~6月)連結決算を発表した。大きな痛みを伴うリストラを進める日産だが、自力再建は可能なのだろうか。

  • 日産の連結決算発表会見

    日産が2025年第1四半期の連結決算を発表した

主力の米国市場で販売減少

日産は2024年度連結決算で最終損益6,708億円の大幅赤字に転落。2025年4月にイバン・エスピノーサ社長兼CEOが就任し、5月に経営再建策「Re:Nissan」を発表して世界7工場削減、人員削減2万人、コスト削減5,000億円を打ち出した。目指すは2026年度の黒字転換だ。

「大きな痛みを決断した」エスピノーサ日産新体制だが、仏ルノーとカルロス・ゴーン氏によるかつてのV字再建を彷彿させる大リストラ策により、早期の収益回復が達成できるかどうかが焦点となっている。

エスピノーサ新社長にとって初となる今回の連結決算だったが、最終損益は1,157億円の赤字(前年同期は285億円の黒字)となった。これで日産の赤字は4四半期連続となった。工場の稼働低下に伴う減損損失に加え、米国の関税も打撃となった。販売は国内外で低迷が続き、好転の兆しが見えていない。

  • 日産のイバン・エスピノーサ社長兼CEO

    連結決算発表会見に臨む日産のイバン・エスピノーサ社長兼CEO

エスピノーサ社長はジェレミー・パパンCFOと共に決算発表会見に出席し、決算内容発表の前に「Re:Nissanの進捗状況」を説明。コスト構造の改革、市場商品戦略の再定義、パートナーシップの強化を重点にスピード感をもって集中的な取り組みを進めていることを強調した。世界7工場の削減も国内の追浜工場・湘南工場(日産車体)の生産停止のほか、メキシコ・シバック工場の生産停止を公表して方向性を定めたとした。今後の新車投入計画を積極的に進めることも示唆した。

だが、第1四半期の世界販売は70万7,000台と前年同期に比べて10%減となり、中国や日本国内で2桁減となったほか、各地域で台数を減らした。主力の北米も2.4%減の31万5,000台にとどまった。

4~6月の自動車事業のフリーキャッシュフローは3,905億円のマイナスとなり、前年同期の3,028億円からマイナス幅が広がった。

トランプ関税の影響についてエスピノーサ社長は、「今通期で4,500億円程度の営業損益への影響を見ていたが、3,000億円へと見直した。それでも、今期業績のマイナス要因となる」とした。加えて、この2025年度上半期(4~9月)の業績が厳しいものとなる見通しも示唆した。

ゴーンのV字回復は再現可能?

日産の今期の当面の業績は、上期(4~9月)で1,800億円の赤字を見込み、通期予想は未定としているが、トランプ関税の逆風も受けて、かなり厳しいものとなる。格付投資情報センター(R&I)は、日産の第1四半期業績発表から日産の発行体格付を「シングルAマイナス」から「トリプルBプラス」に引き下げたと発表している。ブランド力を含む商品力やコスト構造に課題を抱えており、収益基盤の強さを取り戻すには時間を要する可能性が高いとの判断だ。

かつて日産が仏ルノーに救済を求めた1999年から「日産リバイバルプラン」を実行したカルロス・ゴーン体制は、村山工場など5工場の閉鎖、人員削減2.1万人、コスト削減1兆円を掲げた。「聖域なき改革」を進めたゴーンは「コストカッター」の異名を取り、2001年3月期(2000年度)に過去最高益を達成してV字回復を果たした。

エスピノーサ日産の「Re:Nissan」は四半世紀前の日産再生劇を彷彿させるとの見方もあるが、筆者はゴーン再建を目の当たりに取材してきただけに、今回はそう簡単なものでなく、少なくとも来期黒字化はかなり困難と見ている。25年前に日産改革を成し遂げたゴーンは剛腕でしがらみがなく、何よりもバックに仏ルノーがついていた。

今回は、ルノーに三菱自動車工業が加わった「日仏国際連合」の枠組みが大きく変化している。

日産に43%を出資していた筆頭株主のルノーは、バックにフランス政府が付いている(ルノーはもともとフランスの国営企業で、現在はフランス政府が筆頭株主)。それが15%の総合出資に変化し、さらには出資比率を10%にまで下げることで合意済みだ。

つまり、ルノーの子会社が日産で、日産の子会社が三菱自という枠組みを結成してゴーンが君臨した3社連合だったのだが、「日仏3社国際アライアンス連合」の今後がどうなるかは不透明な状況だ。

そのルノーは、7月31日付けで新CEO(最高経営責任者)にフランソワ・プロボ氏が就任した。7月中旬に退任したルカ・デメオ氏の後任である。プロボ新CEOはフランスの経済・財務省出身で、ルノーでは海外事業を担当していた。日産との調整役も経験しており、購買・パートナーシップ担当幹部からの昇格である。

ルノーの2025年1~6月期連結決算は111億ユーロ(約1兆9,000億円)の赤字となった。これは会計処理を変更して日産を持ち分法適用から外し、日産株の株価下落による損失93億ユーロを計上したことによる。

フランスの官僚出身で日産との関係も熟知しているプロボ新CEOがルノーの社長に就任したことで、エスピノーサ日産とのアライアンスは今後、どうなるのか。再構築の成否が日産の今後を占うことになりそうだ。

一方で日産は、ホンダとの協業も模索している。トランプ関税を受けて、日産の米国工場でホンダブランドの大型SUVを生産する計画が浮上していたり、SDV(ソフト・デファインド・ヴィークル)のソフト基盤での協業が噂されていたりと、ホンダと日産の連携の行方は大きな関心事となっている。ホンダも四輪事業の収益性は低い。“弱者連合”と言われようとも、日産との協業は欠かせないのではないだろうか。

ともあれ、今年上半期の国内新車車名別販売でも日産車はベスト10圏外となるなど、主力車の販売不振が続いており、内外での新型車による増収策が未だ明確に見えない。今期も赤字幅が広がり、来季2026年度の黒字転換を目指す自力再建の道は、かなり険しいものとなりそうだ。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。