スズキが9月25日に「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」を開催した。クルマがますます複雑になり、重くなり、高価になりつつある今、スズキは何を目指すのか。現場で聞いてきた。

  • スズキの技術、今後の方向性は?A@スズキ「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」

    スズキの技術、今後の方向性は?A@スズキ「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」

クルマの開発期間を半分に

スズキは2024年から、年に1度の「技術戦略説明会」を開催している。今回が3回目の開催だ。鈴木俊宏社長は「環境変化のスピードに対応して開発と生産の変革を進め、スズキの特徴である『丁度いい』価値を世界に届けていく」と強調した。

  • スズキ「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」

    「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」に登壇した鈴木俊宏社長

スズキといえば、カリスマだった故・鈴木修氏が長年にわたり経営を担ってきたことで有名だが、同氏の長男である俊宏社長・CEO体制に移行してすでに10年が経つ。「カリスマ修流」から「俊宏流チームスズキ」へと経営が移行し、同体制が円熟してきたのだ。

鈴木俊宏体制のもと、スズキは2024年、地球環境や資源課題の解決に向けた技術哲学として「エネルギー極小化」を掲げ、地域ごとに最適な技術を提供するマルチパスウェイの考え方を示した。2025年にはエネルギー極少化に「本質価値極大化」を加え、これを実現する技術群を「Right×Light Mobile Tech」として位置づけた。

2026年の技術説明会では、その方向性をさらに強化。環境変化のスピードに対応するため、開発と生産の変革を進めてより多くの商品をより多くの地域へ、より速く届けることを目指す。エネルギー極小化と本質価値極大化を加速し、「丁度いい」価値を世界に供給していくことが目標だ。

  • スズキ「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」

    今後の電動化技術

具体的な目標としては、2030年に向けて新型車の開発期間を従来の48カ月から24カ月に半減するとともに、開発効率を30%、生産効率を50%向上させることを打ち出した。これは環境変化がスピードアップしていることに加え、中国車などとの競合激化などが背景となっている。

  • スズキ「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」

自動車メーカーを取り巻く環境や条件は急速に変化し、複雑化している。原材料価格やエネルギーコストの上昇、環境・安全規制の強化、地政学リスクに各国政府の動向などだ。その結果、クルマの機能も多様化し、複雑化している。

だからこそスズキは、「お客さまにとって本当に必要な機能とは何か、ちょうどいいとは何か」(鈴木俊宏社長)を問い直している。

今回の「10年先を見据えた技術戦略2026」の主な取り組みとしては、①マルチパスウェイで地域最適を実現、②開発・生産変革により製品投入を加速、③日本・インドを中核としたグローバル事業基盤を強化、④バイオガス事業で地域資源循環を推進、⑤チームスズキで「丁度いい」商品をお届けする、⑥Right×Light Mobile Techを具体的な商品へ展開の6つを掲げた。

当初想定から航続距離を80km伸ばしたeスカイ

技術は世界共通、商品は地域最適というスズキの開発思想を象徴する存在として紹介されたのが、近く発表・発売される新型軽EVの「e SKY」(eスカイ)だ。

スズキ「e SKY」の写真を一気に見る

この軽EV、開発初期は一充電走行距離230km程度と試算されていた。だが、「ICE(内燃機関搭載車)の軽自動車から乗り換えるユーザーに、本当に230kmで安心してもらえるのか」と問い直し、開発チームが掲げたのが「1アイテムで1km延ばす×100個」の目標だった。タイヤの転がり抵抗、サスペンション、LEDの消費電力、モーターとギア比など、ひとつひとつ小さな改善を設計・生産・品質・調達の部門を越えて積み上げた結果、一充電走行距離はプロトタイプ参考値で310kmまで伸びたという。

  • スズキ「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」

スズキは、この開発プロセスそのものを「チームスズキ」の強みと位置付けている。

今回の技術戦略説明会では、質疑応答セッションで壇上に15名が顔をそろえた。鈴木俊宏社長と加藤勝弘技術統括副社長のほか、日本の開発・生産関連本部長クラス11名に加えて、インドのマルチ・スズキからはインド人2名が参加した。

  • スズキ「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」

鈴木俊宏社長が質問ごとに解答者を指名する形で進めた質疑応答を含め、会見は約2時間に及び、ここでも見事に「チームスズキ」のグローバル展開を披露するものとなった。