「パジェロ」は1990年代のRV(レクリエーショナル・ヴィークル)ブームを牽引した三菱自動車の名車だ。同社はパジェロを復活させ、市場投入することを表明。「パジェロ」に加えて軽スモールSUVの「パジェロミニ」、さらにはコンパクトSUVの「パジェロイオ」とシリーズ展開する意向だ。三菱自動車がパジェロを復活させる狙いとは?
歴代パジェロの写真を一気に見る
「尖った商品」でブランド強化へ
三菱自動車では2026年4月に加藤隆雄会長CEO・岸浦恵介社長COOの新体制が始動。5月に「三菱自動車2030年代に向けた新中長期ビジョン」を発表した。その際に成長ドライバーとして掲げた「尖った商品とブランドの強化」が、パジェロ復活につながっている。成長のカギは「アセアンとオフロード」だと断言し、尖った商品としてクロスカントリーSUV「パジェロ」を7年ぶりに復活させることを明確に表明したのである。
パジェロ単体ではなく、コンパクトカーのパジェロイオ、ミニカー(軽)のパジェロミニのフォーメーションで順次、市場投入していくことになる。
三菱自は主力市場のアセアンと共に、マザーマーケットの日本国内市場の立て直しも新中長期ビジョンに盛り込んでいる。2030年度の日本国内販売規模を2024年度実績の1.5倍となる約18万台に引き上げる方針で、新型車投入とブランド復活と連動した都市型店舗展開を図る。
三菱にとってパジェロとは
1990年代までの三菱自動車は、軽自動車から小型、中型、大型乗用車を取りそろえ、「ふそう」では小~大型トラックまで展開する、世界にも類を見ない「総合自動車メーカー」だった。そのころに三菱自を取材すると、トップから「ウチは乗用車系でも軽から小型車のランサー、ギャランやディアマンテ、さらには大型車のデボネアと商品が多過ぎて、販売の照準が絞れないんだ」とよく聞かされたものだ。
そんな三菱の乗用車系が総じて売れ行きを落とした時に、「ウチの隠し玉で、この分野を牽引して売れている商品だ」と胸を張っていたのが、時のRVブームを牽引したパジェロだった。
パジェロは1982年に初代モデルが登場。過酷なラリーとして知られる「ダカールラリー」に1983年から参戦し、7連覇を含む通算12勝を挙げている。
日本国内では1990年代のRVブームを牽引。アウトドアレジャーが盛んになる中で、三菱パジェロの評価は高まっていった。
同社は1994年にミニSUVの軽自動車規格「パジェロミニ」を発売し、1995年にはミニをベースに1.1Lエンジンを搭載した「パジェロジュニア」を投入する。パジェロでは大きく、ミニでは物足りないという人の声に応えて、パジェロをシリーズ化したのだ。
さらに1998年には、専用ボディの「パジェロイオ」を投入。このクルマでは、ピニンファリーナと共同でデザインしたグレードも話題を呼んだ。
パジェロは三菱自動車の子会社で岐阜県坂祝町の「パジェロ製造株式会社」が生産して国内外に供給していたが、2010年代以降は売れ行きが落ち、かつ三菱自の経営問題もあって、2019年で国内向けを生産終了し、2021年8月には海外向けも終了して工場閉鎖となった。
復活のパジェロシリーズ、どう作る?
復活するパジェロは、三菱らしい尖った商品の象徴として、「三菱ブランド強化」の大役を担うクルマだ。2026年秋に公開し、冬にもデビューさせる意向。ベースとなるのはタイで生産するピックアップトラックの「トライトン」だ。高剛性ラダーフレーム、直列4気筒の2.4Lディーゼルターボエンジン、スーパーセレクト4WDなど、評価の高いトライトンの技術を熟成、進化させて搭載する。
コンパクトサイズの「パジェロイオ」は、三菱がアセアン市場で販売している「エクスフォース」がベースとなる。直4の1.6Lエンジンを積むハイブリッド車だ。後輪をモーターで駆動する4WDを新開発して搭載するものと見られる。エクスフォースのサイズ全長4,390mm×全幅1,860mm×全高1,660mm、ホイールベース2,650mmで、パジェロイオは同等のサイズとなる。
2013年以来の復活となるパジェロミニは、デリカミニがベースとなりそう。パジェロは2026年冬、パジェロイオは2027年の発売で、共にタイ工場で生産・供給する。パジェロミニは水島工場生産・供給で2028年の市場投入を予定する。
三菱自は「パジェロブランド」を前面に押し出して、大・中・小の新たなSUV戦略を構築することになる。











