自動車大手のステランティスN.Vは5月19日、「E-carプロジェクト」なる計画を実行すると宣言した。プジョーやフィアットなどを傘下に持つステランティスが、電気自動車の「欧州版軽自動車」を製造することになる。一時は「ガラパゴス」と言われた日本の軽自動車が今、世界で注目を集めている。
欧州メーカーが作る軽サイズのEVとは
「E-car」が属するのは、欧州連合(EU)が日本の軽自動車を範として新設したカテゴリーだ。ステランティスは2028年、イタリア・ポシリアーノ工場の生産ラインから複数ブランドでE-carを出荷する予定だという。
ステランティスのアントニオ・フィローサCEOは、「E-carはステランティスの、またヨーロッパのDNAに深く結びついたコンパクトカーとの暮らしを復活させるプロジェクトだ」とし、「ステランティスは単一ブランドではなく、複数のブランド向けに魅力的な新型モデルを提供することでユーザーの期待に応える」と宣言。欧州版軽EVにかける期待を強調した。
そもそも、欧州において自動車は「Aセグメント」から「Fセグメント」までの6段階で分類されてきた。Aセグメントよりもさらに小さい「M1E」の新カテゴリーが設立されたのは2025年末のことだ。これが軽自動車規格の電気自動車「E-car」として新たな方向に進むことになったのだ。
E-carの「E」はヨーロッパ(European)、感情(Emotion)、電気自動車(Electric)、そして、環境への配慮(Environmental friendly)を表している。EUの欧州委員会が新カテゴリー設立に際して着目したのが、日本の軽自動車だ。軽自動車はサイズやエンジン排気量に制限がある分、税金や保険料などが安く抑えられているため、日本国内市場において高い市場占拠率を誇っている。EUはその点を高く評価した。
E-carの導入が欧州の自動車産業を下支えするだけでなく、こうしたクルマこそが移動ニーズを高め、現状で低迷している欧州におけるゼロエミッションモビリティのムーブメントを加速させることになると期待したのだ。
低価格なエントリーモデルとしての役割に期待
近年の自動車メーカーは、車体の堅牢さを高めて衝突安全を向上させたり、電動化を進めて環境負荷を低減したりといった目標を果たしつつも、車体サイズの拡大という手法により快適性を確保し、より高い利益率を求めた結果、低価格のエントリーモデルを軽視してきた。このあたりについてもEUは指摘している。
それだけに、日本市場で軽自動車がエントリーカーとして定着してきたことは、世界でも着目される流れとなっている。かつて軽自動車は、日本独自の規格だけに「ガラパゴス」と言われ、グローバル化の中で置いていかれる存在だとされたほどだ。それが今や、欧州では「E-car」構想が立ち上がり、アメリカではトランプ大統領が「軽自動車に注目」していると発言。2026年夏には中国のBYDが日本で軽EV「ラッコ」を発売する。「日本の軽自動車」を見る目が変わってきたと言えよう。
BYD「ラッコ」の写真を一気に見る
ちなみに、E-carプロジェクトの実行をいち早く宣言したステランティスは、2021年にフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とグループPSA(プジョー・シトロエン)が経営統合し、オランダに本拠を置いた多国籍自動車メーカーだ。傘下にはイタリアのフィアット、フランスのプジョー、シトロエン、ドイツのオペル、アメリカのジープなど、計14のブランドを抱えている。
2028年に同社がE-carとして市場導入するのは、フィアット「パンダ」やシトロエン「2CV」をベースとした欧州版の軽EVになると予想される。



