自動車メーカーの2025年度(2026年3月期)決算が5月15日までに出そろった。巨額の赤字を計上した日産自動車とホンダは今後、どんな道をたどって再建を目指すのか。再建は可能なのか。

日産再建はシンプルに「売れるクルマ」がカギ

日産は最終損益(純損失)が5,331億円の赤字となり、2024年度の6,709億円の純損失に続く2年連続の赤字となった。一方のホンダはEV(電気自動車)関連の損失1兆5,778億円を計上し、最終損益が4,239億円の赤字に転落した。ホンダは上場以来初の赤字となる。

日本車メーカーの中で、トップのトヨタ自動車を追う位置づけにあった両社には奇しくも、経営統合を検討しながら早期に破談となった因縁もある。両社が巨額赤字を計上した原因はどこにあるのか。

日産の業績不振は今に始まったことではなく、ポストゴーンのガバナンス不全と「売れるクルマ」の不足が凋落の主因である。

2025年4月には、日産構造改革の旗手としてイヴァン・エスピノーサ社長が就任。今回の決算会見では、「関税を除くと、自動車事業の営業利益は予定を上回るペースで改善している」と社長就任からの1年間を評価した。

  • 日産のイヴァン・エスピノーサ社長

    2025年度決算会見に臨む日産のイヴァン・エスピノーサ社長

日産が掲げる構造改革計画「Re:Nissan」の骨子は大リストラだ。世界で2万人の人員削減を実施し、完成車工場を17から10に減らす。固定費・変動費の大幅削減によるコスト削減は順調に進んでいるようだ。

だが、販売計画は依然として目標未達が続いている。2025年度の世界販売は、325万台の計画に対して315万台にとどまった。相次ぐ販売未達の背景にあるのは「商品力」にある。世界販売の4割を占める北米では、販売奨励金(インセンティブ)が競合に比べて高い水準にある。

日産は商品力の強化に向け、2026年中に独自のハイブリッド車(HV)技術の次世代e-POWERを搭載するSUV「ローグ」を北米に投入する。このほかに2026年度に投入予定の車種としては、「ナバラ/フロンティア」「ヴァーサ」「QX65(インフィニティ)」に、インド市場向け2列シートSUV、インド市場向けMPVなどを計画。米国ではホンダとの協業にも意欲を見せている。

  • 日産の次期「ローグ」

    次期「ローグ」

エスピノーサ日産は、この2026年度で「Re:Nissan」の構造改革計画を終了させ、2028年3月期には連結最終損益が200億円の黒字に転換する見通しであると発表した。大リストラによるコスト削減が進み、3期ぶりの黒字を見込むことになるが、世界販売の計画を達成することができるかが焦点だ。特に、主力の北米で販売を伸ばせなければ、単なる「縮小均衡」になりかねない。今やメーカー別で5位の座に安住しているホームマーケットの日本市場でも、巻き返しの行方が注目される

ホンダは「クルマで稼げる」体質構築が急務

ホンダが上場以来初の赤字に転落したのは、三部敏宏社長が2021年4月の社長就任直後に宣言した「脱エンジン」が裏目に出た結果だ。2040年までに新車販売の100%をBEV(バッテリーEV)とFCEV(燃料電池自動車)に切り替えるという目標は、やはり達成するのが難しかった。

世界販売の4割を占める米国では、トランプ大統領がEV購入に伴う税額控除や環境規制を撤廃。ホンダはEV関連の投資を大きく見直さざるを得なくなった。三部社長は決算発表と共に行ったビジネスアップデートで、この脱エンジン目標を「実現が困難なため、取り下げる判断をした」と撤回を表明した。

  • ホンダの三部敏宏社長

    2025年度決算会見に臨むホンダの三部敏宏社長

2026年3月期には北米のEV関連で1兆5,778億円の損失を計上し、2027年3月期にも5,000億円の関連損失を計上することになる。カナダのオンタリオ州で計画していたEV電池工場の建設は無期限で凍結。2030年までにEV販売比率を2割に伸ばす目標も取り下げた。また、2029年3月までのEV投資を大きく減らして8,000億円とし、その分をHV・ICE(内燃機関車)に回して4.4兆円を投資する。

ホンダの成長戦略の中心は、当面はHVとなる。2030年にHV販売を2025年比で2.7倍の250万台まで増やす計画だ。2029年度までに、北米を中心に次世代HVシステム搭載車15車種を投入する。5月14日のビジネスアップデート発表では、会場でセダンとSUVの2車種のHVを世界初公開した。この新HV戦略を推進し、2029年3月期には過去最高となる営業利益1兆4,000億円以上を実現するとの青写真を描く。

  • ホンダの新型HVプロトタイプ2車種

    世界初公開となった新型HVのプロトタイプ2車種

四輪事業再構築に向けては、世界で急伸長する中国勢に対抗するため、開発期間・開発費用・開発工数を半減する「トリプルハーフ」を打ち上げた。2028年から導入する。

「脱エンジン」撤回によるEV損失は一時的なものだが、四輪事業の収益低下からの脱皮は相当に厳しいものがある。ホンダは三部社長に代わる「企業変革責任者」に四竈(しかま)真人 本田技術研究所常務執行役員を抜擢。同氏は2025年6月の株主総会でホンダの取締役にも就任する。次のホンダで本格的に四輪事業を立て直すポスト三部の最有力候補となった。