「フォーミュラワン」(F1)の日本グランプリ(GP)決勝は弱冠19歳のアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)の優勝で幕を閉じた。5度目のF1復帰を果たしたホンダのパワーユニット(PU)を搭載するアストンマーティンは、フェルナンド・アロンソがシーズン初の完走を達成して22台中18位でフィニッシュしたものの、一方のランス・ストロールはマシントラブルでリタイア。本業も含め試練が続くホンダだが、今後はどうなるのか。

  • アストン・ホンダのF1マシン

    アストンマーティン・ホンダのF1マシン

ホンダとF1の関係

ホンダのF1挑戦は今回が5度目。アストンマーティンに動力部のPUを供給している。

アストン・ホンダでは走行時にマシンが揺れて、電池システムにダメージを与えるなどの問題が発生しており、初戦、2戦目ともに2台がリタイアし、完走すらできない状況だった。鈴鹿での3戦目はホンダにとって日本でのホーム開催となったが、決勝では1台がリタイア、もう1台は周回遅れながら18位で初の完走を遂げた。

ホンダとF1といえば、かつては日本のF1の聖地でありホンダの子会社でもある鈴鹿サーキットでの「勝者ホンダ」がクローズアップされた。F1で勝つことは、モータースポーツの世界最高峰に挑んだ創業者・本田宗一郎氏の夢であり、ホンダのDNAでもあった。筆者もかつて、アイルトン・セナとアラン・プロストの鈴鹿サーキットでの激突を現場で間近に見られたし、ホンダの勝利を見届けた後に、鈴鹿サーキットの最寄り駅である近鉄の白子駅まで長蛇の列の中で歩いた経験もしている。

  • マクラーレン・ホンダ「MP4/5B」

    アイルトン・セナが2度目のドライバーズチャンピオンを獲得した際に乗っていたマクラーレン・ホンダ「MP4/5B」(鈴鹿サーキットの「Honda RACING Gallery」で撮影)

かつての栄光の歴史を踏まえて考えると、5度目の復帰で完走がやっとの状態では、「金食い虫」とも言われるF1への投資について、ホンダ経営陣がどう判断するのかが気になる。巨額赤字に転落し、ソニーとの合弁会社で進めていたEV(電気自動車)の開発も中止となるなかで、F1での勝利を追求していくことは可能なのだろうか。

F1復帰の狙いと現状

そもそも、ホンダが2026年シーズンからのF1復帰を決断したのは、3年前の2023年5月だった。その前にホンダは、2020年10月にF1への「参戦終了」を発表し、F1から4度目の撤退をしていた。

この時点でF1撤退を決めたのは、カーボンニュートラル(CN)に注力するためと説明されていた。ホンダが掲げる2040年のCN化のためと説明したのは、三部敏宏社長だった。

それが一転して、2026年シーズンからの復帰を決めたポイントは、F1の電動化(モーター出力の向上)とCN燃料(CNF)の利用拡大だ。ホンダはF1を、将来の電動車技術へのフィードバックを目的とした「走る実験室」と捉えたのだ。

「社内の若いエンジニアたちから、世界一のレースに再びチャレンジしたい。新しいF1レギュレーションならば、きっと自分たちの培ってきた技術を正面からぶつけられるという声が多く聞かれるようになった。やりたいから、勝ちたいからこそ、何を言われようととにかくやる。今回のF1復帰は、最終的には、そうした若いエンジニアたちの、そして、それに応えた経営陣たちの、あるいはエールを送り続けたファンの熱い想いが実現させたもの」。これが、2023年5月のF1参戦発表会見の内容だった。

  • F1復帰を発表する三部社長

    F1復帰を発表する三部社長

しかし、あれから3年が経過し、ホンダ本体が2025年度の連結業績においてEV損失による巨額赤字に転落、エンタメ要素を取り入れたソニーとのEV開発・販売は中止となってしまった。日本凱旋となった鈴鹿サーキットでの結果を見ても、下位争いから完走がやっとでは、「参戦するからには勝つ」(本田宗一郎氏)というホンダのDNAに反する状況にあると思える。ホンダがF1からすぐに手を引くことはないだろうが、再起を目指す今のホンダにとってF1は重荷となりかねない。今後の動向は予断を許さない状況だ。