スズキが軽自動車の商用車の電気自動車(軽商用BEV)「eエブリイ」を発売した。これでトヨタ自動車、ダイハツ工業、スズキが共同開発した軽商用BEVが市場に出そろったことになる。そもそもなぜ、ある面ではライバル関係にある3社が共同開発に踏み切ったのだろうか。
三つ子の軽商用BEVが誕生した理由
スズキは3月9日、軽商用車の電気自動車(BEV)「eエブリイ」を発売した。スズキとしては、軽自動車初のBEV投入となる。1月にはコンパクトSUVのBEV「eビターラ」を国内で発売しており、今回がBEV日本市場投入の第2弾となるが、eビターラがインド工場で生産する“逆輸入車”であるのに対して、eエブリイはダイハツ、トヨタと共同開発したBEV商用軽バンだ。
このクルマ、1カ月前にダイハツが「e-ハイゼットカーゴ」「e-アトレー」として、トヨタが「ピクシスバンEV」として発売している。今回のeエブリイ発売で3社の“三つ子”軽商用BEVが出そろった。
ではなぜ、軽市場のライバルであるスズキとダイハツにトヨタが加わって軽BEVを共同開発したのか。
トヨタ主導で動き始めた軽商用BEV開発
今回の共同開発では、スズキとダイハツが有する小さなクルマづくりのノウハウにトヨタの電動化技術を融合した。
そもそもの始まりは2021年だ。トヨタ、日野自動車、いすゞ自動車、ダイハツ、スズキの「トヨタグループ」(トヨタと資本提携している企業の集まり)は、商用車領域における電動化に向けて、コスト重視の大きな部分を連動して開発する目的で「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」(CJPT)を設立、第1弾として軽商用EVを企画し、2023年のG7サミット(広島県で開催)で共同開発プロジェクトを披露していた。
効率的なラストマイル輸送に最適な仕様を追求したスズキ、ダイハツ、トヨタの3社は、配送業などの顧客ニーズに対応する軽商用バンタイプのBEVを供給することとなった。当初は2023年発売の予定で開発を進めていたが、ダイハツの認証不正問題で遅れ、ようやく今回の発売に至ったのである。
生産を担うのはダイハツだ。「ハイゼット」をベースとし、子会社ダイハツ九州大分第1工場でクルマを作る。車台はガソリン車とラインを共通化しながら、バッテリーなどの部品を組み付ける作業のみ特装車のラインを活用することでコストダウンを図っている。
搭載する中国BYD製のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーは容量36.6kWh、航続距離は257km(WLTCモード)で、AC100Vの外部給電機能やV2Hも活用できる急速充電機能を全車に標準装備する。
ベース車両の2シーターの価格は3社とも314.6万円で統一。補助金を活用すると実質250万円ほどで購入可能となる。
CJPTはトヨタ主導の「仲間づくり」であり、特に社会公共性が強い商用車において協力関係と競争領域とを明確化することで、「日本車の競争力向上」を目指した動きだ。日本独自の規格である軽自動車には海外からの注目も高まっている。
加えて、EVの損切りで衝撃の赤字転落となったホンダのように、EV戦略の見直しが内外自動車OEMの間で問われている中で、日本の軽EVがどうなっていくのかも気になるところだ。





