日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの統合により、日本の商用車業界は構図が変わる。ボルボと提携し、UDトラックスを傘下に収めたいすゞ自動車の陣営との、2グループによる覇権争いが始まるのだ。4月からの業界を読み解く。
商用車業界は技術的進化が急務
公正取引委員会(公取委)は、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの統合を条件付きで承認した。両社の経営統合については、それぞれの親会社であるトヨタ自動車と独ダイムラートラックによる出資構造の成り立ちに係る要素を検討してきたが、国内の各トラック・バス市場においての販売シェアから、トヨタの独立性やスカニア・ジャパンの販売支援を条件として独禁法をクリアーすることで承認した。
これにより、両社の統合新会社「ARCHON」(アーチオン)が4月1日に発足し、アーチオンの下に日野自動車と三菱ふそうトラック・バスがぶら下がる形態となり、日野・ふそう両ブランドは存続する。つまり、アーチオンは商用車(トラック・バス)事業の日野自と三菱ふそうの両ブランドを抱えることで、いすゞ自動車とその傘下のUDトラックスに対抗する構図だ。日本の商用車業界では、2グループ化による再編成が進むことになる。
物流・人流の構造変化への対応から、商用車は乗用車以上に電動化や自動運転などのCASE技術進化が求められる領域だ。トラック・バスは社会公共性の観点からもグローバルで生き残り競争が激化していく。日野自と三菱ふそうの経営統合は、こういった状況に対応した動きだ。
特筆すべきは、日野自がトヨタを離れて、アーチオンではダイムラー主導が明確になること。一方で、いすゞはスウェーデンのボルボグループと戦略提携したことで、旧・日産ディーゼルのUDトラックスを買収して傘下に収めている。
これにより、日本の商用車市場では2グループによる対決となるとともに、グローバルでのベンツ対ボルボの戦いが日本でも繰り広げられることになる。
ダイムラーとボルボが日本で対決?
日本の商用車メーカーは「大型車業界」と呼ばれて乗用車業界と一線を画してきたが、過去、日本の商用車市場をリードしてきたのは日野自といすゞであった。日本の物流を支えてきた2大商用車メーカーとされてきたのだ。面白いのが、日野自といすゞが同じルーツを持つこと。かつては乗用車も生産・販売していたことがあることでも共通している。日野自は仏ルノーとの提携から「コンテッサ」を生み出し、いすゞは「ベレット」「117クーペ」などを生産・販売していた。
2004年にはバス事業で両社合弁の「ジェイ・バス」を設立し、バス生産を一本化している。この体制は現在も継続しているが、トラック市場で競争しつつ国内バス事業では協業するという形が今後、アーチオン発足でどうなるのかも注目されている。
アーチオンへの出資はトヨタとダイムラートラックが25%ずつとなるが、実質的な親会社はダイムラートラックに移行し、日野自はトヨタ連結子会社(従来のトヨタ50.1%出資)から分離する。一方、トヨタは小型トラックの分野で独立して市場競合することになる。
東京証券取引所は3月2日、アーチオンの東証プライム市場への上場を承認した。これに伴い、東証上場企業の日野自動車は3月30日に上場廃止となる。ちなみに、三菱ふそうトラック・バスは非上場企業だ。
アーチオンにぶら下がる新日野自動車の社長にはサティヤカーム・アーリャ氏(52)、三菱ふそうの社長にはフランツィスカ・クスマノ氏(36)が4月1日に就任する。ともにダイムラートラック出身で、アーチオンの代表取締役CEOにはカール・デッペン三菱ふそう社長が就任する。小木曽聡日野自動車社長はアーチオン取締役CTO(最高技術責任者)に就く。
アーチオンの始動とともに、日野自は「レンジャー」をベースに開発した中型トラックを三菱ふそうにOEM供給(ふそうブランドはファイター)することになり、2026年内に供給を開始する。
こうして、4月1日には商用車再編で日野・ふそう連合のアーチオンが始動するが、いすゞ陣営もこれに呼応するかのように4月1日付けで社長交代に踏み切り、山口真宏専務が社長に昇格する。
いすゞの山口次期社長は「アーチオン始動に緊張感を持っている。いすゞもUDトラックスを子会社化して5年、販売会社統合やUD上尾工場に大型トラック生産を統合移行して体制を固めている。日本の2つのグループがグローバルで戦って、双方が成長していくためにも、日野自・ふそう統合は脅威であるがチャンスでもある」との考えを示している。


