経済産業省は先ごろ、トヨタ自動車が米国で生産して“逆輸入”した大型SUV「ハイランダー」を公用車として導入した。同省の赤沢亮正大臣はハイランダーに乗車し、「車内は広く快適な乗り心地」だったと感想を述べた。経産省があえて、米国生産のトヨタ車を公用車として導入したことをアピールした理由とは?
ハイランダーってどんなクルマ?
経産省が逆輸入のトヨタ車を導入した理由は、トランプ関税と、トランプ大統領が主張する「日本自動車市場の閉鎖性」に対応するためだろう。
米国産ハイランダーは、トヨタがインディアナ工場で生産しているクルマ。3列シートの大型SUVで、現行型は通算4代目のモデルだ。2000年に登場した初代モデルは日本でも「クルーガー」の名称で販売されたが、2007年の2代目ハイランダーからは海外専売車種となり、北米市場を中心に絶大な支持を集めてきた。
4代目ハイランダーは全長4.95~5.05m、全幅1.93~1.99mの大型サイズに2.5L直列4気筒エンジンを搭載するハイブリッド車。経産省の公用車は右ハンドル(豪州向けなどと同様)車となっている。
日米政府は、米国の安全基準に沿った米国生産車について、追加試験を実施することなく日本国内に受け入れることで合意済み。この取り組みを、まずは経産省から具体化させたのが今回の動きだ。赤沢経産大臣は昨年、経済再生担当大臣としてトランプ大統領のもとを何度も訪れ、関税についての対応を進めた経緯がある。今回のハイランダー導入には、米国側にアピールする“外交カード”としての側面もある。
経産省がハイランダーを公用車として導入したのが2026年2月16日。同じ日に国土交通省は、米国製乗用車の輸入手続きを簡素化する認定制度を創設したと発表した。経産省と国交省が足並みをそろえているところからも、今回の動きに外交カードとしての意味合いがあることがわかる。
日本で“アメ車”が増える可能性は?
米国では連邦最高裁がトランプ関税を違憲と判断したものの、トランプ大統領は意に介せず、代替手段で関税を続けることを表明したばかりだが、自動車・部品についての関税に関しては判決の対象外であり、関税対応として日本が「米国製品の輸入拡大」に取り組まなければならない状況に変わりはない。
すでにトヨタは、2026年に国内市場に投入する米国生産車として、ハイランダーのほかにセダンの「カムリ」、大型ピックアップトラック「タンドラ」の導入を決めている。カムリは洗練されたデザインと快適性を兼ね備え、優れた燃費性能を誇るハイブリッドのセダンとして、米国では長くトップセラーとなっているトヨタのグローバルモデルで。日本市場でも年間1万台の販売を計画している。
トヨタ以外では、日産自動車が大型SUV「パトロール」の日本導入を計画中。4ドアセダン「アルティマ」やSUVの「パスファインダー」「ムラーノ」についても、日本導入に期待する声が高まっている。ホンダは2026年1月の「東京オートサロン」に米国生産SUV「パスポート」とアキュラブランドのスポーツハッチバック「アキュラ インテグラ タイプS」を参考出品した。
輸入手続きの簡素化などにより、米国生産車の“逆輸入”がしやすくなったのは確かだ。あとは自動車メーカー各社の戦略次第であり、日本のユーザーがどう反応するかが焦点となるが、米国の自動車メーカーが日本市場にどれだけ関心を持っているかも気になる。
すでにフォードは日本市場から撤退しているし、クライスラーも欧州のステランティスに吸収されて主体性が薄れている。ゼネラルモーターズ(GM)だけは日本市場に残っているが販売は振るわないし、本体がEV転換の構造変化で業績悪化に苦しんでおり、懐事情は厳しい。
トランプ政権が日本市場における米国生産車のシェア拡大を望んでいるのは確実だが、企業側が日本のユーザーを取り込む戦略に本腰を入れることができるかどうかが問題となる。





