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33 自動車業界 ニュースの見方

トヨタの社長交代は「禅譲」への布石? なぜ今なのか、なぜ今CFOの起用なのか

FEB. 11, 2026 08:00
Text : 佃義夫
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先週2月6日金曜日の午後1時過ぎ、トヨタ自動車広報から緊急記者会見の案内メールが入った。15時30分からトヨタ東京本社にて、登壇者は佐藤恒治社長他とあり、内容はご説明・質疑応答とだけ記されていた。

この日は、トヨタの2025年度(2026年3月期)第3四半期連結決算の発表日だったが、会見の予定はなしとされていたので、メールを見て筆者は「決算とは別の大きな案件だな」と感じ、急遽、水道橋のトヨタ東京本社に向かった。

この間にトヨタは、2026年3月期第3四半期連結決算を発表するとともに、「4月1日役員人事について」のニュースリリースを流し、4月1日付けで新社長に今健太執行役員CFO(最高財務責任者)、新副会長に佐藤恒治社長が就任することを発表した。社長交代の緊急会見だったのだ。記者会見には佐藤社長と今執行役員が並んで登壇。トヨタのオウンドメディアである「トヨタイムズ」で中継する形での会見となった。

  • トヨタの社長交代会見

    左は現トヨタ社長で4月1日にトヨタ副会長およびChief Industry Officer(CIO、新設のポスト)に就任する佐藤恒治氏。右は現トヨタ執行役員 Chief Financial Officer(CFO)で次期社長の近健太氏

日本の産業界で重みを増すトヨタの役割

佐藤氏の社長就任からは、まだ3年しか経っていない。今回の社長交代が早すぎることに違和感を持ったのは筆者だけではなかったはずだ。14年も続いた豊田章男社長体制から、技術畑出身の佐藤恒治氏に社長が代わったのが2023年4月のことだった。

今回、新社長に経理畑の“金庫番”である今健太執行役員を登板させるのはなぜなのか。

会見並びにトヨタからの役員人事発表では、「これからトヨタが向き合う経営課題に取り組むためのフォーメーションチェンジ」としている。

佐藤社長は2025年5月に経団連の副会長、さらに今年2026年1月には日本自動車工業会(自工会)会長に就任し、経済界や業界で背負う役割が大きくなっている。つまり、佐藤社長の副会長就任は、経団連副会長と自工会会長の役割りに専任するためだと考えられる。それだけ、日本の自動車業界全体の方向性や経済界に与えるトヨタの影響力が増しているのだ。

こうした事情はあるものの、今回の社長交代には大きな含みがあるのだ。9日の社長交代会見で佐藤・今両氏から出たキーワードから考えると、ズバリ、トヨタ創業家の豊田章男会長が、嫡男の豊田大輔氏にトヨタおよびトヨタグループ総帥としての座を「禅譲」する動きが、いよいよ秒読みに入ったと筆者は見る。

  • 豊田章男氏

    今回の社長交代は豊田章男氏による「禅譲」の布石?(写真は東京オートサロン2026に登場した豊田章男氏)

そのキーワードとは、「産業報国」と「石田退三」だ。

キーワードから読み解く社長交代劇

「産業報国」はトヨタグループの創業者、豊田佐吉の理念を成文化した『豊田綱領』の第1条「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし」を想起させる。産業を通じて国や社会に貢献するという意味だ。自動車業界の“一強トヨタ”には今、産業報国の実を挙げることが求められている。

「石田退三」とは、戦後の混乱期に倒産寸前のトヨタ自動車工業を救った人物。豊田自動織機製作所社長と兼務してトヨタを再建させ、豊田喜一郎氏の社長復帰を願った『トヨタの大番頭』だ。今氏は豊田章男会長に呼ばれ、「石田退三さんのような役割りを期待している」と言われたそうだ。

石田退三語録で有名なのが「自分の城は自分で守れ」。今氏は会見で、「石田さんはお金にこだわるが、必要な投資は惜しまず、喜一郎さんの夢には使った。未来のため、誰かのため、自動車業界全体、日本のためにしっかり収益を上げていく」と決意を示した。

実は、新社長になる今健太氏は、豊田章男氏の社長後継の“本命”とされていた。経理畑だが、2016年まで8年間も豊田章男社長の秘書を務めており、章男氏が最も信頼する部下の1人だ。秘書の後に古巣の経理部長から総務・人事副本部長、CFOを経て、2022年6月には取締役・執行役員副社長と順当に昇格した。だが、2023年4月に1期後輩の佐藤恒治氏が社長に就任すると、子会社のウーブン・バイ・トヨタで代表取締役CFOに就いた。その後はウーブン取締役CFOのまま、2025年1月にトヨタ執行役員に復職。7月からはトヨタCFOを務めている。異例の経歴だ。

  • 豊田章男氏

    近氏のトヨタ自動車入社年次は1991年4月で、佐藤社長の1992年入社より1年早い。年齢は佐藤氏が56歳、近氏は57歳だ。今回の社長交代は「若返り」を図るのが目的ではない

あえて近氏をトヨタに復活させ、今回の社長就任に至らしめたのは、役員人事案策定会議の指名というが、やはり、豊田章男会長の意向によるものだろう。

今氏はウーブンの役員であるとともに、豊田家とトヨタグループの「要」であるトヨタ不動産(旧東和不動産)の取締役も兼務しており、グループの豊田自動織機の株式非公開化も指揮している。

ウーブン・バイ・トヨタは実験都市「ウーブン・シティ」が2025年秋にオープンしたが、陣頭で指揮を執るのが豊田章男トヨタ会長の長男、豊田大輔シニア・バイス・プレジデントだ。1988年生まれ、37歳の豊田大輔氏は、2016年にトヨタに入社し、ウーブンで修行を積んできた。今健太トヨタ新社長は、ウーブンで大輔氏の後見役を務めてきた。今氏がトヨタのトップとなることで、豊田大輔氏のトヨタ本体での要職復帰も近くなるだろう。

豊田章男トヨタ会長も今年5月3日に70歳、古希を迎える。今回の社長交代会見には姿を見せなかったが、佐藤社長は「章男会長は今年で70歳、会長としてやることを3つ上げていて、そのひとつを人材育成としている」と微妙なニュアンスの発言を紹介していた。


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