ヤナセがBYDオートジャパン(BAJ)と正規ディーラー契約を締結し、新会社「ヤナセEVスクエア」を設立する。2026年年夏には横浜市に店舗を開設して、中国BYDのクルマの販売を開始する予定だ。輸入車の老舗・ヤナセがBYD車の取り扱いを始めることの意味とは?

  • BYD「ラッコ」

    ヤナセがBYDの取り扱いを開始へ

高級車販売の実力者が軽EVを販売

ヤナセといえば輸入車販売の最大手であり、老舗中の老舗だ。その歴史は「梁瀬商会」が米国のGM車の取り扱いを開始した1915年にさかのぼる。現在は全国に新車販売店174店舗、中古車販売店31店舗の販売網を有し、メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、フェラーリ、キャデラック、シボレーの輸入車を販売している。

そのヤナセが、中国の新興自動車メーカーであるBYDの日本市場における販売戦略に乗る形で、100%子会社「ヤナセEVスクエア」を新設してまでBYD車の取り扱いを始めるのはなぜなのか。

ヤナセはBYD車を新たに取り扱う背景と狙いを以下のように説明している。

「日本国内の2024年の乗用車市場に占めるEV(バッテリーEVおよびプラグインハイブリッド車)のシェアは3%を下回っている。今後、海外・国内メーカーから順次、新型EVの導入が予定されているものの、充電インフラ整備の遅れや中古車市場における査定価格の低迷など、多くの課題が残されている。一方でBAJは、こうした市場環境にもかかわらず、新たにPHEVや軽BEVの導入で日本の市場開拓に果敢に挑戦している。ヤナセもこの機に、ヤナセEVスクエアにおけるBYDの取り扱いを通じ、新車販売のみならず、中古車販売、アフターセールスまで含めたEVの安定的かつ持続可能なビジネスサイクルの定着・拡大を日本市場で本格的に実現すべく、小売業界ならではの目線で『EVをお買い求めのお客様の真のニーズや理想のカーライフ』にしっかり寄り添い、その未来を見定めていくため」

ヤナセの森田考則社長は、「世界で高く評価されているEVブランドであるBYDをヤナセが扱う機会をいただき、感謝している。EVビジネスサイクルのさまざまな課題・障壁をブレイクスルーする手がかりと解決方法を見出すことで、ヤナセの多様な輸入車ブランドのEV普及にもメリットが生まれる相乗効果を期待している」とする。ヤナセがBYD車を新たに扱うことで、自動車小売業サイドから日本のEV普及へ結びつけていきたい意向だ。

BYDサイドも日本市場における導入車種の拡大と販売網の強化を積極的に進めている。すでに日本市場に導入しているBEVの「アット3」(ATTO 3)、「ドルフィン」(DOLPHIN)、「シール」(SEAL)、「シーライオン7」(SEALION 7)に加え、12月1日にはBYD初のPHEV「シーライオン6」(SEALION 6)を日本で発売した。

  • BYD「シーライオン7」

    「シーライオン7」(写真)は「2026年次 RJCインポート・カーオブザイヤー」 の栄冠に輝いた

先の「ジャパンモビリティショー2025」で披露した軽EV「ラッコ」(RACCO)も大いに話題を呼んだ。BYDが日本市場向けに開発し、2026年夏に発売する予定の新型車だ。日本の軽自動車規格に準拠し、軽乗用車市場で最大の“売れ筋”であるスライドドア付きのスーパーハイトワゴンを、わざわざ日本市場向けに開発してきたところからは、BYDの本気度がうかがえる。ラッコには同社が強みとする「ブレードバッテリー」技術を搭載。バッテリー容量(航続距離の長さ)の違う2つのグレードを用意するという。

  • BYD「ラッコ」

    BYDが2026年夏に日本で発売する「ラッコ」

BYDは2022年、日本市場攻略に向け、BYDジャパンの傘下にBAJを設立した。BAJ社長には三菱自動車工業やフォルクスワーゲンジャパンで営業経験が豊富な東福寺厚樹氏が就任し、独自の販売網拡大策を推進。2025年中の全国100店舗展開策や「BYD楽天市場店」でのECモール展開などを進めてきた。来夏の軽EV「ラッコ」発売に合わせた「ヤナセ」の販売参画は、今後の大きな注目点となる。

ヤナセを長きにわたって率いていたのは、かつて日本自動車輸入組合(JAIA)理事長として輸入車業界のトップに君臨した故・梁瀬次郎氏だ。同氏がトップを務めたヤナセは、インポーターも兼ねて全国に販売網を築き上げた。ヤナセの高級車販売力は折り紙付きで、トヨタ自動車が日本に「レクサス」販売網をセットアップする中で、ヤナセの販売網を活用できないか水面下で動いたこともあったほどだ。日本の輸入車販売でメルセデス・ベンツがトップを走り続けているのは、ヤナセの販売貢献度によるところが大きい。

現在は伊藤忠商事の傘下に入り、メルセデス・ベンツなど輸入車の販売小売業を営むヤナセだが、新たに販売を開始する中国・BYDのEV、特に軽EVの普及に勢いが付くかどうかに注目だ。

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