マイナビニュースマイナビ マイナビニュースマイナビ
Index square
( Car )
18 自動車業界 ニュースの見方

商用車メーカー再編の理由は? 日野と三菱ふそうが新会社「アーチオン」設立

OCT. 15, 2025 08:00
Text : 佃義夫
Share

日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが経営統合して設立する新会社の社名が「ARCHION」(アーチオン)に決まった。経営統合は2026年4月1日の予定だ。新会社にはトヨタ自動車(日野自の親会社)と独ダイムラートラック(三菱ふそうの親会社)が各25%ずつを出資(東証プライム市場に上場予定)。そこに日野と三菱ふそうがぶら下がる(100%子会社となる)ことで、両方のブランド名が残る形となる。

これまでライバルだった商用車メーカー2社が今、経営統合する理由とは?

  • 「アーチオン」のロゴ

    新会社「アーチオン」のロゴ。「ARCHION」は英語で弓型の構造物を意味する「ARCH」と遠い過去から未来まで続く様子を意味する英語の「EON(ION)」を融合させた言葉

日本の商用車メーカー、現状は?

経営統合は「大変革期を乗り越えるため」というのが日野と三菱ふそうの説明だ。直面する課題としては「カーボンニュートラル」「ドライバー不足」「安全技術の導入」「競合企業の台頭」「地政学的変化」などを挙げている。乗用車メーカー以上に「CASE技術の強化」を求められる中で、商用車メーカーが単独で生き残るのは難しい情勢となってきている。

つまり、物流経済を担うトラックは社会・公共性が高く、環境対応に加えて慢性的なドライバー不足に対応した電動化、コネクテッド化、自動運転など次世代技術の実用化が世界的に求められ、中国勢の台頭などで競争が激化しているのだ。

商用車を取り巻く世界情勢が変化する中、日本でも、いわゆる「大型4社」と言われた長年の構図が揺らいできた。

従来、日本の商用車メーカーをリードしてきたのは日野自動車といすゞ自動車であった。特に、日本国内では「普通トラック」(大型車・中型車)と「小型トラック」に分けられる中で、日野自といすゞが普通トラックのトップシェア争いを繰り広げてきた。

一方、小型トラックはいすゞの「エルフ」と三菱ふそうの「キャンター」がリードする中で、近年はトヨタグループとして日野自とトヨタが追い上げる流れを見せてきた。

大きなうねりとして、日野自はトヨタが50.2%を出資して子会社化し、トヨタグループの商用車を担ってきたのに対して、いすゞは長く続いた米GMとの関係を解消し、トヨタと資本提携する一方で、スウェーデンのボルボグループと戦略提携を結び、ボルボ傘下となっていた旧・日産ディーゼルのUDトラックスを子会社化している。

三菱ふそうはもともと、三菱自動車工業の商用車部門だったが、独ダイムラーが三菱自との全面提携からふそうだけを分離して子会社化(ダイムラーが89.29%出資)した経緯がある。

つまり、日本メーカーの構図は、トヨタと資本提携しつつもボルボグループとの戦略的提携によりUDトラックスを傘下に収めたいすゞ自動車、トヨタグループの日野自動車、ダイムラー傘下の三菱ふそうという3つの陣営に分かれていた。

それが日野自と三菱ふそうの経営統合に至ったのは、日野自のエンジン不正問題が2000年初頭にまで遡って長期に内在化していたことで、国内外での不正対応に迫られると共に、信用が失墜して業績が悪化したからだ。そこで親会社のトヨタが、ダイムラートラックとの間で、一気に三菱ふそうとの経営統合を取りまとめた。

ダイムラートラックとしても、独ダイムラーの商用車部門から分離独立し、世界的な商用車の覇権争いに加わるには、三菱ふそうと日野自の経営統合により日本およびアジアでの地歩を固めたかったはずで、今回の話は好都合だったということだろう。

結果的にトヨタは、日野自を三菱ふそうと経営統合することで、ダイムラートラックに任せたということになる。2026年4月1日をもって日野自は、トヨタの連結子会社から離脱する。

アーチオンは誰が舵を取る?

統合持株会社のアーチオンへの出資こそ25%ずつとなったが、アーチオンのガバナンス体制はグループCEOがカール・デッペン三菱ふそう代表取締役社長、グループCFOもヘタル・ラリギ三菱ふそう代表取締役CFOで、ダイムラートラック出身の三菱ふそう側から就任することになる。日野自動車の小木曽聡代表取締役社長は、取締役最高技術責任者(CTO)に就任する予定。ダイムラー主導の経営体制に移行することは明らかだ。

  • 「アーチオン」の経営陣

    「アーチオン」の経営陣。左から小木曽聡取締役・最高技術責任者(CTO)、カール・デッペン代表取締役・最高経営責任者(CEO)、ヘタル・ラリギ代表取締役・最高財務責任者(CFO)

アーチオンのCEOに就くカール・デッペン氏は、10月9日の会見で「統合で商用車の未来を共につくっていく」とし、統合による相乗効果を早期に発揮させて「スケールメリットをいかし、多くの投資をCASEに振り向ける」との抱負を述べた。

統合により、三菱ふそうは中津工場(神奈川県愛川町)を閉鎖して川崎工場に移管し、日野自は羽村工場(東京都羽村市)をトヨタに譲渡して集約する。

アーチオンは今後、2つの強力なブランドをいかして、日本とアジアにおける新たな商用車リーダーを創出するとしている。日野自ブランドは普通トラックに強く、三菱ふそうブランドは小型トラックに強い。その特性をいかしていくことになろうが、ダイムラートラックが先行するCASE技術や水素技術も活用しつつ、トラックの次世代競争に勝ち抜く構えだ。

一方で、両社の統合で懸念されることは、バス事業をどうするかだ。今回の経営統合発表では全く説明されていないが、このバス事業は複雑な状況にある。

三菱ふそうは社名に「トラック・バス」とあるように、バス製造事業を単独で展開している。一方の日野自は、ライバルのいすゞと合弁バス製造会社「ジェイ・バス」を展開している。このジェイ・バスは日野自といすゞが50%ずつを出資して2002年に設立した会社で、公共性の高いバス製造ではライバル同士が協業しているのだ。

日野自と三菱ふそうの経営統合は、両方のブランドを残し、統合効果を発揮して勝ち残りを目指すことになるが、一方で、いすゞ・UDトラックス陣営との対抗競争と部分的な協業がどうなるかも注目されることになるだろう。


Share

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。