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14 自動車業界 ニュースの見方

トヨタにとってレクサスとは? 日本上陸20周年で考える

SEP. 17, 2025 08:00
Text : 佃義夫
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トヨタ自動車が日本に高級ブランド「レクサス」(LEXUS)を新設し、「レクサス販売店」チャネルをセットアップして開業したのが2005年8月30日だった。

それから20年を経た今年、トヨタは全国レクサス販売店従業員5,000人を一堂に集めて「レクサス20周年記念イベント」を開催(9月9日)した。トヨタの佐藤恒治社長は「レクサス20周年ありがとう。これからも一緒に頑張りましょう」と祝辞を述べたという。

トヨタにとって高級ブランド「レクサス」は何をもたらしたのか。今後、「レクサス」ブランドはトヨタにとってどんな位置づけとなるのか。考えてみた。

  • レクサス「LM」

    高級車ブランド「レクサス」がトヨタにもたらしたものとは

アメリカでレクサスが必要だった理由

レクサスはもともと、1989年に米国で誕生したブランドだ。米国進出後のトヨタは苦闘に耐え抜きながら「トヨタブランド」を確立してきたが、「トヨタは大衆車」というイメージが浸透し過ぎていた。そこで、新たな高級ブランド「レクサス」の展開を図ったのだ。

当時の米国トヨタ社長で、その後にトヨタの海外統括副社長となった石坂芳男氏は、北米でのレクサス創設の中心人物だった。その石坂氏とは、筆者は取材を通して懇意にしてもらった。

石坂氏からそのレクサスブランドの創設と米国市場での展開を詳しく取材したことをまとめると、1980年代の米国の市場環境を踏まえて、トヨタの品質へのこだわり、市場分析、顧客ニーズの理解を踏まえたブランド展開により、レクサスは単なる高級車ではなく、販売後のアフターサービスを含め、顧客に最高の価値を提供する哲学を体現させたことを強調していた。

加えて、米国でレクサスを展開するにあたって、トヨタのラインアップとは独立した戦略を取り、ブランドの確立を図った。確かに、1990年代に筆者が米国を現地取材した際には、「レクサスって、トヨタなんですか?」と聞かれたことがある。それだけ、北米ではトヨタとは別の高級ブランドと受けとめられていたのだ。

日本におけるレクサスの立ち位置は?

米国で誕生したレクサスは、その後、グローバルなブランドとして成長を続けた。日本市場ではトヨタの既存の高級車とは一線を画すプレミアムブランドとしての展開を目指し、2005年に事業を開始。日本市場の高級車市場はメルセデス・ベンツやBMWなどの欧州車が強かったが、トヨタとしてはレクサスを欧州高級車に対抗するブランドとして位置付けたいという狙いもあった。ちなみにホンダは「アキュラ」、日産自動車は「インフィニティ」という高級ブランドの日本導入を計画したが、断念した経緯がある。

開設時には、トヨタブランドで「セルシオ」として販売していたクルマをレクサス「LS」に統合して投入。レクサス販売店では「日本流おもてなし」を前面に打ち出す顧客対応で好調な滑り出しを示した。それから20年を経て、レクサスは今や、日本の高級車市場で欧州車を抜いて圧倒的なトップの座を確保している。昨年2024年のレクサスの国内販売は約8万6,000台で、輸入車トップのメルセデス・ベンツの約5万3,000台を大きく引き離している。

  • トヨタ「セルシオ」

    もともとは米国でレクサス「LS」として誕生したクルマがその後、日本ではトヨタ「セルシオ」の名で発売となった

  • レクサス「LS」

    日本でのレクサスブランド発足時には、「セルシオ」が「LS」に統合となった

日本におけるレクサスの課題は?

この実績からもレクサスは日本で成功したと言えるだろうが、課題も内在している。やはり高級車市場は大都市部に集中しており、地方によってはレクサス店の維持に苦労しているとの声も聞く。

トヨタにとってレクサスブランドは、トヨタブランドと一線を画すプレミアムブランドとして、グローバル戦略でも位置づけが定着してきている。事実、トヨタは豊田章男社長時代の社内分社化で、2016年に「レクサスインターナショナル」を設置し、トヨタグローバル1,000万台の一翼を担うブランドとして期待をかけている。

また、2019年には、これも豊田章男社長時代にレクサスの電動化ビジョン「Lexus Electrified」を掲げ、2035年までにグローバルで全車EV(電気自動車)化する目標を宣言した。つまり、この時点では、トヨタのマルチパスウェイ戦略にあってもレクサスをBEV化の先行部隊とすることにしていたのだ。

だが、ここへきてEVへの逆風が強まる中で、この計画を見直し、従来のHV(ハイブリッド車)ラインアップを基盤としつつ、段階的に柔軟な戦略でEVへの移行を進める方針に転換した。次世代EVは2026年に投入する予定となっている。

実は筆者は、この原稿を執筆することもあって、レクサスのBEV「RZ450e」に試乗し、敬老の日連休を使って北陸・金沢方面への長距離ドライブを敢行してきた。走りは快適だったが、やはり長距離となると、30分充電で200km程度の実走行では、充電ステーションを探すのに一苦労したというのが実感だ。

  • レクサス
  • レクサス

    レクサス「RZ450e」

ともあれ、レクサスがトヨタにとって大きな意味を持つブランドとして定着したことは確かであり、今後もトヨタが「モビリティ企業」に脱皮するための先行指標ブランドとして、重要な役割を担うことになるだろう。

特に、2023年1月に豊田章男氏が後継社長に選んだ佐藤恒治トヨタ社長は、レクサスのチーフエンジニアからレクサスインターナショナルのプレジデントを経てトヨタ社長に就任したという経歴を持つことから、レクサスについては知り尽くしている。「もっといいクルマをつくろうよ」の豊田章男会長とのコンビネーションからも、レクサス日本上陸20年を機に更なるレクサスブランドの飛躍に賭ける意欲は十分と見える。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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